年度内に概略計画を 下境地区の防災集団移転で(那須烏山市)
[2022/11/1 栃木版]
那須烏山市は、下境地区で計画している防災集団移転について、10月30日に旧境保育園で地元説明会を開催した。市は、宅地の測量調査を基に集団移転促進の対象となる災害危険区域を指定し、2023年3月に集団移転促進事業計画の概略計画を策定する方針。24年3月にも集団移転促進事業計画の策定を目指すとしており、今後は各種調整・協議・検討などを進めて移転先を決定し、住宅団地整備を行う。
那須烏山市では、2019年に発生した東日本台風で甚大な被害が発生したことから、下境地区や宮原地区で防災集団移転に向けた検討や地元との協議を進めている。下境地区では近年、おおむね10年に1回程度の頻度で住宅が浸水する被害が生じており、東日本台風では床上・床下浸水や道路冠水などが発生しているため、早急に防災・減災対策に取り組む必要がある。
市は、宅地の測量調査を実施して高さを計測し、測量結果を基に洪水に対して危険性が高い区域一帯を災害危険区域に指定する考え。測量調査は、URリンケージ(東京都江東区)が担当している。
災害危険区域に指定された場合、区域内の住居、病院、ホテルなどに建築制限や構造制限を設定する。市が条例で定めた基準水位より低い宅地では、新たに住居が建築できなくなるという(工場や店舗等の事業所は除く)。
市では、災害危険区域に指定された区域を対象に、防災集団移転促進事業を進めるとしている。この事業は、一定の安全を確保できない住居について全戸移転を行うもので、移転に対する合意がまとまった区域から段階的に防災集団移転促進事業計画を策定し、移転を行う方法を検討していく。下境地区は広域となっているため、ある程度まとまった区域から計画を策定し、移転を順次進めていく。
移転先には、住宅団地を整備する計画。移転対象者は、集団移転促進事業計画策定時の事業計画区域内の居住者で、宅地や住宅を所有していても居住していない者は対象外となる。移転にあたっては、新規の住宅団地の整備だけではなく、既存集落への差し込み型での移転も検討する。
住宅団地整備に向けては、安全性(ハザードエリア外など)、生活の維持(日常生活、自然環境など)、整備コスト(道路、水道)の観点から整備箇所を総合的に検討し、移転希望者や整備候補地の民地所有者などと協議を進め、整備候補地を決定する。住宅団地整備計画を検討のうえ策定し、住宅団地を整備して移転を行う。移転元地の住宅用途の宅地は、市が買い取りを行うとしており、防災集団移転促進事業計画策定時に補償調査を実施する。
住宅団地の整備は、移転住居戸数が5戸以上かつ移転希望住居の半数以上が移転することが条件となる。住宅敷地の面積は、平均で330平方mを見込んでいる。住宅団地整備にあたっては▽団地内道路や、幹線道路との接続道路▽宅地内の第1水弁までの水道施設▽集会施設▽公園(本件では、住宅団地が1haを超えた場合に整備)▽調整池、排水施設-の整備も想定している。