吉田村ビレッジが建築賞 優良賞に3作品 表彰式を来月30日開催(栃木県マロニエ建築賞)
[2022/10/26 栃木版]
県は25日、県内の優れた建築物を顕彰する「第34回栃木県マロニエ建築賞」の受賞作品を決定した。マロニエ建築賞は「吉田村Village」(下野市)が受賞し、優良賞には「宇都宮市FS邸 4G-house」(宇都宮市)、「真岡市庁舎」(真岡市)、「山の麓、川の畔 At the foot of the hill along the river」(足利市)の3作品が選ばれた。表彰式は11月30日午後1時半から、県公館大会議室で開催する。
この賞は、都市景観の形成や歴史・文化の創造、建築水準の向上に寄与する建築物や建築物群を表彰し、県民の美しい景観に配慮したまちづくりに対する意識の高揚と建築活動の活性化を図ることを目的に、県と県建築士会、県建築士事務所協会、県建設業協会、日本建築家協会関東甲信越支部栃木地域会、とちぎ建設技術センター、日本建築学会関東支部栃木支所の7団体が共催して毎年度実施している。
表彰対象は▽意匠、形態などに優れ、文化性・芸術性を効果的に表現しており、将来のとちぎのまちづくりをリードしていくような建築物▽地域の特性を生かした景観への配慮や優れた修景が施されているなど、まちづくりへの貢献が期待できる建築物▽高齢者や障害者などをはじめ、誰もが利用しやすいように配慮されており、利用者にやさしい雰囲気を作りだしている建築物▽自然エネルギーの利用や省エネルギー化など、環境に配慮されている建築物-のいずれかに該当するもの。
今回は2019年4月1日から応募の日までに竣工(改修を含む)した県内の建築物や建築物群を対象に、7月1日から31日までの1カ月間を募集し、35作品の応募があった。これを審査会(委員長・梶原良成宇都宮大学教授)で、審査資料に基づく1次審査および現地調査に基づく2次審査を実施し、表彰作品を選考した。
表彰式では各受賞作品の表彰に加え、「受賞作品を語る会」として受賞者による受賞作品の発表や審査会委員との懇談を予定している。また表彰式にあわせ、11月19日から25日午後3時まで、県庁15階企画展示ギャラリーで応募作品のパネル展示会を行う。
受賞作品の概要は次の通り。(▽作品名(所在地)=[1]用途[2]建物概要[3]建築主[4]設計者[5]施工者[6]講評〔要約〕)
【マロニエ建築賞】
▽吉田村Village(下野市本吉田784)=[1]ホテル・飲食店(パン屋)・物品販売業を営む店舗[2]S造、一部W造、地上2階、延べ面積418.6平方m[3]一般社団法人シモツケクリエイティブ[4]有限会社アトリエ慶野正司一級建築士事務所[5]株式会社小林工業[6]地域の農協であった跡地に残る築80年の大規模な大谷石蔵を物販店舗や宿泊施設に改修するプロジェクト。県内に多数残り地域のアイデンティティになっている大谷石蔵の有効活用を考える上で優れた参考事例になり得ると同時に、スクラップアンドビルドを避け長く使われてきた建築物を大切に生かすことで、地域文化の継承、脱炭素社会やSDGsの実現に着実な貢献をしている。
【マロニエ建築優良賞】
▽宇都宮市FS邸 4G-house(宇都宮市峰)=[1]一戸建て住宅[2]W造、地上2階、延べ面積206.33平方m[3]藤田悦夫[4]下川彰建築設計事務所[5]株式会社イケダ工務店[6]宇都宮市内の住宅地で二代に渡り暮らした住宅から、4世代が一緒に暮らす住宅への建て替え計画。まちなかの良好とは言えない敷地条件のなかでも、設計上の工夫の仕方次第で多世代が心地よく暮らせる空間をつくることができることを示した好例であると評価できる。
▽真岡市庁舎(真岡市荒町5191)=[1]市庁舎[2]RC造、一部SRC造、S造、地上6階、延べ面積1万4457.62平方m[3]真岡市[4]株式会社松田平田設計[5]鴻池・剋真・松本特定建設工事共同企業体、光陽・栄真特定建設工事共同企業体、岩原・扶桑・ウエノ特定建設工事共同企業体[6]真岡市の中心を走る県道と五行川が交差する旧庁舎西側敷地に建つ新庁舎。屋上が「もおかテラス」と名付けられた広場になっており、地上とはスロープでつながり、祭りやイベントで一体的に利用できるよう計画されている。全体として、丁寧に配慮された市民本位の庁舎となっており評価できる。
▽山の麓、川の畔 At the foot of the hill along the river(足利市江川町)=[1]一戸建て住宅[2]RC造、地上2階、延べ面積127.60平方m[3]酒井稔、酒井敏子[4]フジイデザインステュディオ[5]有限会社大原工務所[6]足利市北部の住宅地の小高い山と川に挟まれた敷地に所在する戸建て住宅である。変形した五角形の平面をもち、全周が等価に扱われて表裏がない設計となっている。住宅の一般解というより特殊解ではあるが、個人住宅という建築ならではの達成として評価できる。