施設移譲へ県と協議 県立現代産業科学館(市川市)
[2022/10/6 千葉版]
市川市は、鬼高地区の県立現代産業科学館について、主な機能を継承した移譲に向け、県と具体的な協議を進める。村越祐民前市長の強い意向により、県から譲り受けたのち、近隣の教育機関や企業などと連携、文教都市を象徴する教育拠点を形成することを想定していたが、学校施設の検討は取り止める。施設移譲について、田中甲市長は、老朽化した施設の維持や資料保存に要する経費などクリアすべき課題が多くあるとしており、あらためて仕切り直し、今後の利活用について検討する方針だ。
県立現代産業科学館は、「産業に応用された科学技術を体験的に学ぶ」施設として1994年に設置。県の産業の発展を支えた産業遺産資料と、それを支えた産業革命に関する科学技術資料などを約2500点収集している。敷地面積は1万8182平方m。延床面積は8561平方m。施設の誘致にあたっては、ショッピングセンター「ニッケコルトンプラザ」から寄贈された土地を、市が県に寄付した経緯がある。
県は、県立博物館の在り方について見直し、2016年に「公の施設の見直し方針」を策定。同方針では、地域史と特定テーマを扱う博物館は、地元市町のまちづくりや活性化施策を踏まえ、地元市への移譲の可能性を検討する方針を定めている。
同方針を受け、市川市に県立現代産業科学館の利活用の可能性について打診したところ、市では、移譲を受けたい旨を回答していた。
鬼高地域には、ニッケコルトンプラザや中央図書館、生涯学習センターなど、商業や教育文化機能が集積しており、市では、教育機関や企業との連携につながる新たな教育施設を整備し、同館の展示資料などを有効に活用することを想定。昨年1月、県へ提出した要望書のなかで、「(県の意向である)中核的機能を継承し、引き続き一般利用に供することは難しい」との考えを示し、今後の協議にあたっては、市の意向を十分尊重するよう求めていた。
市担当課によると、今年4月に就任した田中市長は、「現時点で学校の整備は考えない」と表明。市では、あらたな方針を県の担当者に口頭で報告した。ただ、田中市長は、移譲にあたって懸念することとして、施設の老朽化や、県内企業から提供された資料の保存などを挙げているという。
一方、県では、産業界の協力を得て運営されてきた同館の機能や、果たしてきた役割の重要性を同市にあらためて説明、今後の方向性を判断したいとしている。