加工工場を新設 隈研吾設計で町内に7施設目(境町)
[2022/10/1 茨城版]
境町の橋本正裕町長と隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)を主宰する隈研吾氏はこのほど、境町にある同事務所の地方拠点事務所である新オフィス「境町ブランチ」で「境町地域産業研究開発拠点施設(仮称)整備」に係る共同記者発表を行った。会見には橋本町長が出席したほか、隈氏はオンラインで参加。今回新たに整備する施設は、ウナギの加工工場で、地方創生拠点整備交付金を活用していく。なお、隈氏が設計を手掛けた町内の施設としては、7カ所目となる。工事は中和建設(境町)が担当し、来年3月末の竣工を目指す。
橋本町長はあいさつで、「この施設は、隈先生にデザインしていただいた第7弾で、ブランド化した町の特産物の研究開発を行うとともに、生産拠点となる。コロナ後に多くの観光客が訪れて、楽しんでいただける施設づくりに努めていきたい。また、隈研吾建築都市設計事務所の6カ所の地方拠点事務所のうちの1つとなる境ブランチが開設したが、ここを拠点に隈先生には今後ともまちづくりにご協力いただければ」と期待を込めた。
続いて隈氏は、「工場は普通は無味乾燥なものとなってしまうが、境町らしい工場にできたらと思い、ウナギを連想させるデザインにした。庇の部分にカーブを使ってウナギの柔らかい曲線を表現するとともに、県産材を使い、今までの工場とは一味違うものになればと思っている。機能性を維持しながらも、温かみを感じられるデザインとしたい。これまでに町内で手掛けた6つの建物でも、県産材を使って地球環境に配慮した施設となっている」と話した。また、「これからの新しい時代は東京一極集中ではなく地方へネットワークを広げていき、地方の人とコラボすることが大事。境町には大きな可能性があると感じている。境町ブランチで、町の人と一緒に新しいまちをつくっていきたい」と意気込みを語った。
町では、地域産業研究開発拠点施設を整備することで、隈氏設計の建築物を活用した取り組みを加速させ、さらなる地域交流人口・観光人口の拡大や経済活性化を図ることを期待している。この施設は、ふるさと納税の返礼品としてラインアップするウナギをブランド化して商品化するための研究開発・加工施設で、工場機能のほか、物流施設・研究開発施設の機能を併せ持つ。隈氏が工場の設計を担当する初めての施設となる。
建設場所は上小橋地内で、敷地面積は約5500平方m。建物の規模はS造2階建て、延べ約1080平方m(1階約790平方m、2階約290平方m)。建物の外観は白を基調として木材を使用し、ウナギをイメージして波打った木庇を取り入れる。内装は衛生面に配慮した機能優先のシンプルなものとする。総事業費は約3億7250万円を投じる。
また、敷地内には「境町ブランド研究開発拠点施設(仮称)」の整備も予定しており、地域産業研究開発拠点施設と同時期に建設していく。この施設は町の新たな特産物として開発を進めている「さつまいも」の研究開発を行うもので、建物の構造・規模はS造平屋約630平方m。設計は柴建築設計事務所(水戸市)で策定、施工は中和建設が担当する。事業は地方創生拠点整備交付金を活用して整備され、総事業費には約3億1760万円を見込んでいる。
境町ブランチは、単なる設計事務所ではなく、地元でデザインに関心のある会社や若者が交流する場所とする考えで、住民の考えや意見をすくい取るための交流拠点とする。施設の規模は木造平屋約50平方mで、9月22日に開設となった。