「建設業界とともに全力で」県一宮川改修事務所・丸山正樹所長インタビュー
県は、2019年10月の大雨により甚大な浸水被害を受けた一宮川流域で、浸水対策特別緊急事業を本格化している。現場で陣頭指揮を執る県一宮川改修事務所の丸山正樹所長に河川整備の課題や今後の取り組みなどについて聞いた。
──一宮川流域における治水の課題は。
「一宮川は河川勾配が緩やかになる中流域で、瑞沢、鶴枝、阿久、豊田、三途の5支川が合流するため、河川氾濫や内水氾濫が発生しやすい。また、中流域を中心に河川沿いの低平地に市街化・宅地化が進み、広域に地盤沈下が進行していることから、浸水被害が発生しやすくなっている」
「地域からは、河川整備の迅速・着実な事業実施が求められている。事業の進め方を工夫し、“目に見える形”で治水機能の早期発現を図っていきたい。建設業界の皆さんの協力をいただきながら、流域市町村と連携して、住民の安心・安全のため、計画期間内に確実に事業を完了させられるよう、全力で取り組んでいく」
──浸水対策事業をどう進めていく。
「特に被害が大きかった中流域では浸水対策事業の一部として、河川激甚災害対策特別緊急事業の採択を受け、瑞沢川合流点から豊田川合流点までの約7km区間について、24年度までの完了を目指し、河道拡幅や護岸法立てによる河道断面の拡大を進めている」
「豊田川合流点から上流域や支川については、新規に浸水対策重点地域緊急事業の採択を受け、河道改修や一宮川第三調節池の整備に向け、測量や地質調査、詳細設計に着手した」
──流域治水はどのように実現する。
「流域関係者の理解・協力のもと、これまで排水ポンプの整備や各家庭の雨水貯留施設への補助、田んぼダムの試験施工、浸水リスクの高い地域での建築に関する条例制定などに取り組んできた」
「今後はこれまでの取り組みをさらに進め、流域全体に展開するとともに、特定都市河川浸水被害対策法の活用や、今後の流域対策の目標と実施内容などを“見える化”し、流域関係者で共有するため、流域治水マスタープランの策定に向けて検討している」
──重点的に取り組みたいことは。
「上流域・支川の河道改修や一宮川第三調節池の整備を進めるため、一宮川改修事務所に復興第三課を新設した。また、官民が連携して事業マネジメントを行う事業促進PPPを導入し、業務の執行体制を強化している。さらなる事業促進を図っていくことに注力したい」
──建設業界に求めることは。
「県は、地震・風水害・その他の災害に対し、県民の安心・安全を確保するため、県建設業協会や県電業協会など建設産業団体と災害協定を締結している。19年の大雨災害でも一宮川の復旧について、県建設業協会長生支部の協力により、速やかな応急対応をとることができた」
「近年の台風や集中豪雨による風水害が頻発・激甚化するなかで、これまで以上に迅速な対応が求められている。長生地域の建設業の皆さんには、災害時の地域の守り手として、これからも引き続き協力してもらいたい」
■プロフィル
まるやま・まさき
1991年3月に千葉工業大学土木工学科卒業後、県庁に入庁し、企業土地管理局資産管理課事業推進室長や香取土木事務所次長、河川環境課土砂災害対策室長などを経て、4月1日から現職。趣味は週末のドライブ。関東近県の道の駅は概ね制覇したとのこと。好きな言葉は「場が人を育てる」。酒々井町在住。1968年5月生まれの54歳。
■一宮川水系の河川整備
県は2019年10月25日の大雨による一宮川流域の甚大な水害を含め、過去30年間で4度の浸水被害が生じたことを踏まえ、流域市町村が実施する内水対策や土地利用施策と連携した「一宮川流域浸水対策特別緊急事業」を推進。19年10月豪雨と同規模の降雨に対して、29年度末までに、家屋や主要施設の浸水被害ゼロを目指している。
併せて、気候変動による豪雨の激甚化・頻発化に備え、中小河川としては全国に先駆けて、流域のあらゆる関係者が協働して、流域全体で水害を軽減させる「一宮川水系流域治水プロジェクト」を進めている。