山田川合流点で堤防整備 田川の改良復旧 事業の実施内容固まる(宇都宮土木)
[2022/9/15 栃木版]
県宇都宮土木事務所は、令和元年東日本台風で宇都宮市街地に甚大な被害をもたらした一級河川田川の浸水対策重点地域緊急事業で、このほど整備の全体計画の概要をまとめた。事務所は今回、河道掘削や堤防整備を実施する箇所および内容などの計画を固め、調節池の中の市道などの施設についても付け替えの方針を示している。調整池は事業区域の上流端と下流端に2カ所整備し、これに伴い山田川との合流箇所は上流側に付け替える。河道掘削は、下流側の川田調節池から簗瀬橋までなどで計画し、堤防整備は山田川との合流点などで実施する。順調にいけば本年度から一部河道掘削工事に着手し、調整池の整備も含めて25年度の事業完了を目指す。
田川は日光市から宇都宮市、上三川町、下野市、小山市などを流下して鬼怒川に合流する、県管理延長約78kmの一級河川。東日本台風では、JR宇都宮駅西側周辺の約150haが浸水し、床上浸水1093戸、床下浸水1303戸の計2396戸が被災した。
このため県は、特に被害の大きかった山田川合流点(宇都宮市岩曽町)から給分堰(同市川田町)までの6.5km区間で、国の支援を受けて浸水対策重点地域緊急事業を実施する。2カ所の調整池整備や河道掘削、堤防整備などを緊急的・集中的に実施する計画で、21年度から25年度までの事業期間に約90億円を投じる。
調節池は、上流側の岩曽調節池が面積約18ha、調節容量約24万3000立方mで、宇都宮市中心市街地部の河川水位を低減する。下流側の川田調節池は同じく約16ha、約33万6000立方mで、河道掘削により増加させた流量を下流区間に流さないよう調節する。いずれも田川と同程度の深さで整備する計画で、各区域内にある市道や水路、サイクリングロードは付替えを行う。
河道掘削と堤防整備は、給分堰から山田川合流点までの区間で、東日本台風と同程度の洪水から床上浸水被害を解消する。河道掘削は、沿川の両脇に住宅が張り付いて拡幅が難しいため、掘り下げて河積断面を確保。堤防整備は一般部で嵩上げを、市街地では特殊提整備を計画する。
今回の整備計画では、河道掘削を実施する区間として下流側が川田調節池に設ける越流提から市道に架かる簗瀬橋までと、その上流の市道に架かる城東橋から洗橋までの区間、県道宇都宮向田線に架かる東橋から上流、および岩曽調節池の越流提から山田川の合流点付近を位置付けた。
また堤防整備は、城東橋から洗橋までの区間と、山田川との合流点付近で実施する。岩曽調節池の設置に伴う山田川の付け替えは検討の結果、上流側に移すことに伴い付け替える部分が堤防としてのランクが上がるため、その部分の築堤が必要になる。
なお、大錦橋から旭陵橋までの区間は20年の1月から5月まで、応急工事として河道の堆積土除去を行っている。同事務所によると、応急対策の後の測量の成果で今回の計画流量や掘削方法などを検討しており、河川掘削を実施しない箇所についても河川断面は足りているとしている。
これにより、事業区間の計画高水流量は山田川と合流して以降、釜川放水路や御用川からの合流もあわせて毎秒640立方mとし、岩曽調節池では50立方mをカットする。下流の川田調節池は40立方mをカットして、川田調節池以降は600立方mの流量とする。
事業スケジュールは、19年度から対策の検討や測量調査、施設概略設計を実施して、21年度に事業に着手し施設詳細設計や用地調査、用地買収などに着手した。本年度は調整池の設計や河道の護岸設計、排水樋管など河川構造物の設計を実施し、一部河道掘削工事にも着手したい考え。23年度からは、河道掘削工事のほか調整池整備工事にも着手して、25年度の事業完了を目指す。
田川流域の治水対策ではこのほか、宇都宮市や沿川住民と協力し、雨水流出抑制施設の整備や田んぼダムの整備・促進、河川監視カメラの設置、災害リスク情報の発信など、流域全体のあらゆる関係者が協働して取り組みを実施して総合的な対策に取り組んでいる。