非構造部材耐震化を 公立学校施設 耐震改修の調査結果公表(文科省)
[2022/8/24 栃木版]
文科省はこのほど、4月1日現在の公立学校施設の老朽化状況調査と耐震改修状況フォローアップ調査の結果を公表した。老朽化状況調査の結果、本県は安全面の不具合が21年度中に367件発生し、前回調査した16年度中から21件増加している。耐震改修状況フォローアップ調査では、体育館などの吊り天井の落下防止対策が完了している一方、吊り天井以外の非構造部材の耐震対策実施率は小中学校で69.8%、幼稚園で50.0%、高等学校3.4%、特別支援学校6.7%となっており、今後は吊り天井以外の非構造部材の耐震化の促進が急がれる。
老朽化状況調査は、公立小中学校施設の築後25年以上を経過した施設が保有面積の約8割を占めるなど老朽化が深刻になっていることを踏まえ、児童生徒の安全を脅かす不具合などの発生状況を調査するもの。調査対象は、都道府県や市区町村などが設置する公立小中学校施設(中等教育学校の前期課程を含む)および義務教育学校施設で、建物の老朽化が主因で発生した児童生徒の安全を脅かす不具合の発生件数を調査する。
また、公立学校施設の構造体の耐震化や体育館などの吊り天井の落下防止対策は15年度で概ね完了しているが、一部の学校設置者では対策が完了していないことから、その後の取り組み状況のフォローアップ調査を実施している。公立の幼稚園や小中学校、義務教育学校、高校、中等教育校、特別支援学校の建物を対象に、構造体の耐震化状況や体育館などの吊り天井の落下防止対策状況、およびそれ以外の非構造部材の耐震点検・耐震対策状況を調査する。
老朽化状況調査の結果によると、公立小中学校施設の老朽化面積(築45年以上の改修を要する面積)は、16年度の1834万平方mから21年度は3338万平方mに、1504万平方m増加している。一方、安全面の不具合の発生は全国で2万2029件で、前回調査から9648件減少した。
発生件数の多い不具合は、消防用設備の動作不良や故障、床材の浮きやはがれ、軒裏のモルタル片の落下、照明器具・コンセント・分電盤の漏電など。同省では、引き続き日常的な点検や修繕を行って適切なタイミングで改修を実施し、致命的な損傷を事前に防ぐ必要があるとしている。
また、耐震改修状況フォローアップ調査の結果では、非木造構造体の耐震化率が99.6%となり、前年度から0.1ポイント上昇した。内訳は小中学校が99.7%、幼稚園が97.7%、高等学校が99.4%、特別支援学校が99.9%。小中学校については、耐震化が未実施の建物が前年から156棟減少してて288棟となり、耐震化が未完了の設置者は23者減少して残り65者となった。
体育館などの吊り天井の落下防止対策実施率は99.4%で、対策未実施の体育館等は前年度から19棟減少し、145棟となった。対策未完了の設置者は15者減少し、残り75者となっている。吊り天井以外の非構造部材は、耐震点検実施率が96.3%、耐震対策実施率が65.3%となっている。
本県の状況を見ると、老朽化状況調査はひび割れや破損、剥離、腐朽などが発生したため仕上材や部品が落下したなどの発生件数が、16年度中に県内で346件発生していたが、21年度中には367件発生し21件増加している。
耐震化は公立小中学校1725棟、公立幼稚園3棟、公立高等学校664棟、公立特別支援学校105棟の全てで完了しており、耐震化率は100%、耐震化率順位は1位となっている。体育館などの吊り天井の落下防止対策状況は、公立小中学校で全棟数638棟のうち吊り天井を有する棟数が27棟で、全て対策を実施済み。公立高等学校は全棟数166棟、公立特別支援学校は全17棟のいずれも、吊り天井を有していない。
また、吊り天井以外の非構造部材は、公立小中学校497校全てで耐震点検を実施し(うち専門家による点検実施校386校)、点検実施率は100%。耐震対策は347校で実施しており、対策実施率は69.8%となる。対策が完了していないのは、佐野市が96.6%、鹿沼市が76.5%、日光市が16.7%、さくら市が50.0%で、県と足利市と真岡市、大田原市、矢板市、上三川町は0%となっている。
佐野市は23年度中に、さくら市は32年度中に実施率100%の目標を掲げており、鹿沼市は適正配置計画の見直しを行っているため、日光市は統廃合について地域との調整に時間を要していて遅れている。県や足利市などは、方針検討や事業平準化などを理由に完了時期を未定としている。
公立幼稚園は、4園中2園で耐震点検を実施し(うち専門家による点検実施1園)、点検実施率は50.0%となった。耐震対策も2園で実施し、対策実施率は50.0%となる。未実施はいずれも那珂川町の施設で、町は他の公共施設整備を優先しているため、対策完了は未定としている。
公立高等学校は、59校全てで耐震点検が完了し(うち専門家による点検実施校32校)、点検実施率は100%。耐震対策は2校のみで、対策実施率は3.4%となる。公立特別支援学校も15校全てで耐震点検が完了し(うち専門家による点検実施校9校)、点検実施率は100%。耐震対策は1校のみで、対策実施率は6.7%となる。
県はこれらの対策が遅れている理由について、まずは専門家による耐震点検を進めているほか、1校全ての不具合箇所を対策するのに相当の時間を要するとして、完了時期を未定とした。
文科省では、非構造部材を含めた耐震対策が未実施の設置者に対して早期の耐震化完了を要請したほか、老朽化した建物ではガラスの破損や内外装材の落下など非構造部材の被害が拡大する可能性が高いため、安全確保の観点から非構造部材の落下防止を含めた老朽化対策の取り組みを支援する。また、設置者の取組状況は継続的にフォローアップを実施していくとしている。