週休2日制など議論 北関東3県で合同会議を開催
[2022/8/2 茨城版]
茨城県建設業協会(石津健光会長)と栃木県建設業協会(谷黒克守会長)、群馬県建設業協会(青柳剛会長)は7月28日、大洗町の大洗パークホテルで3県合同会議を開催した。各県建設業協会の役員のほか、来賓として佐藤信秋参院議員や国土交通省関東地方整備局企画部の小林賢太郎部長、本県土木部の田村央部長らが出席し、建設DXによる生産性の向上や週休2日制導入に伴う人件費への対応、建設業のイメージアップなど、多岐に渡るテーマを議題として、忌憚のない意見を交わした。なお、今回の会議は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、懇親会の中止など、規模を縮小しての開催となった。
冒頭には3県建設業協会の各会長があいさつに立った。石津会長は建設業を取り巻く課題への対応や地域の守り手としての役割など、地方の建設業の果たすべき役割について説明し、「こうした状況の中、年に1度、3県の建設業協会が顔をあわせ、互いの課題について意見を交換することは非常に有意義だと考えている。本日の会を通じて課題解決の糸口が見つければ幸い」と話した。
続いて青柳会長は「他県からのテーマを参考にして生産性向上と人材確保育成など、業界の差し迫った課題全般にわたった議論を展開していきたい」、谷黒会長は「地域建設業は、まだまだ厳しい経営環境にある。本日の意見交換を通じて、北関東3県のさらなる連携が図られ、有意義な会議になることを期待する」などと述べた。
来賓からは佐藤参院議員が建設業の2024年問題や労務単価の改定などの話題について触れ、解決までの猶予が残り少ないことに危機感を示したうえで、「ことしこそ、議論を積み重ねて、現状を改善しなければならない。皆さまと協力しながら取り組んでいく」と話した。
小林部長は「地域の意見を踏まえ、現場にとって必要な制度を本省に提案することが整備局の役割だと考えている。本日は3県の意見を聞き、生産性向上と魅力ある建設現場の実現に向けて、力を合わせていきたい」、田村部長は「本日のテーマはいずれも地域建設業の喫緊の課題だと認識している。県としては、皆さまの声を真摯に受け止め、共に取り組みを進めていく」と語った。
意見交換会では、各県がそれぞれテーマを持ちより、議論を重ねた。群馬県からは「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」と「建設DXによる生産性の向上」の2件について提案した。
このうち、建設DXでは、ICT施工をはじめ、遠隔臨場や電子データを活用した工事書類のスリム化などが進んでいる状況を説明。今後は、BIM/CIMの推進や工事の確認・検査の直接計測の省略、建設事務のDX、電子契約などに取り組む必要性を指摘し、各県の取り組み状況を質問した。
これに対し、栃木県はこれまでにドローンやBIM/CIM、情報共有システムの操作の研修・講座を開催してきたことに加え、ウェブ会議やペーパーレス会議の導入、経営事項審査での電子化への対応などに取り組んでいることを報告。また、ICT施工は高額の設備投資となるため、中小企業でも取り組みやすい方策の検討や、発注機関へ3Dデータで納入可能になるよう要望を行うことを検討しているという。
本県からはICT施工に加え、工事以外のICT活用が必要との考えから、昨年度にアンケート調査を実施したことを説明した。その結果、ICTを推進する人材の確保や会社の規模に応じた情報提供、建設事務のDXなどに取り組む必要性があることを報告。今後は、建設DXと若年労働者の確保は一対のものという考えのもと、これらの施策を盛り込んだ協会運営を行っていく考えを示した。
続く栃木県からは、「週休2日制導入に伴う人件費などの対応」と「新型コロナウイルス感染症およびロシア・ウクライナ情勢に伴う原材料等高騰への対応」を提案。このうち、週休2日制の人件費については、日給月給制に対応するための労務費の引上げや、実情に即した補正率の引き上げ、民間工事への対応などの課題を提起し、意見を求めた。
これに対して群馬県は、本年度から週休2日制が県発注工事で本格的に導入され、今後は市町村の発注にも波及する可能性を説明した。この週休2日に対応するには、企業努力だけでは難しく、適正な工期や労務費の引上げなどが必要と指摘。また、民間工事については、施主の意向に大きく左右されることから、現状で週休2日制の実現は難しいと述べ、まずは公共工事で完全に週休2日制が定着し、社会の認識が変化すれば導入の可能性があるとの考えを示した。
茨城県は週休2日制の実現に向けた協会の取り組みや、県発注工事の実施率などを説明。民間工事については、現段階では非常に厳しい状況にあるとの認識を示した。そうした状況の中、7月に県や関連団体らで連絡会議を発足し、民間工事の適正な工期の確保に向けて意見交換を行ったことを報告。今後は「週2日休むのは当たり前」という環境が実現できるよう、受発者とともに改革を進める考えを示した。
最後に本県の議題として、「建設キャリアアップシステム」と「建設業のイメージアップ」を提案。このうち、建設業のイメージアップでは、これまで実施してきた活動を紹介したうえで、各県に対してイメージアップ活動事例や今後の戦力などについて意見を求めた。
これに対し、群馬県と栃木県は、それぞれ建設業の魅力を伝え、次世代の入職促進するためにもイメージアップは重要な施策との認識を示した。また、その際には地域を守る建設業の役割をしっかりと伝えることも重要だと指摘。具体的な取り組みでは、マスコットキャラクターの活用や、災害・復旧情報のSNSでの発信、インターンシップや合同企業説明、フォトコンテストの開催、リーフレットの作成など多岐に渡っている。
このあと、会議の総括として、常陸河川国道の日下部隆昭所長と田村部長が各テーマについて言及したうえで、今後は各県の意見を踏まえ、慎重に対応していく考えを示した。