建設DXなど議論 北関東3県で合同会議を開催(栃建協など)
[2022/7/30 栃木版]
栃木県建設業協会(谷黒克守会長)と茨城県建設業協会(石津健光会長)、群馬県建設業協会(青柳剛会長)は28日、茨城県大洗町のホテルで3県合同会議を開催した。各県協会の役員のほか、来賓として佐藤信秋参院議員や国土交通省関東地方整備局企画部の小林賢太郎部長、茨城県土木部の田村央部長らが出席。建設DXによる生産性の向上や週休2日制導入に伴う人件費への対応、建設業のイメージアップなど、多岐に渡るテーマを議題に、忌憚のない意見を交わした。なお、今回の会議は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、懇親会の中止など規模を縮小して開催した。
意見交換に先立ち、各県協会の会長があいさつに立った。開催県の石津会長は、建設業を取り巻く課題への対応や地域の守り手としての役割など、地方の建設業の果たすべき役割を説明し、「こうした状況の中、年に1度、3県の建設業協会が顔をあわせ、互いの課題について意見を交換することは非常に有意義。本日の会議を通じて、課題解決の糸口が見つければ幸い」と話した。
群馬県の青柳会長は「他県からのテーマを参考にして、生産性向上と人材確保育成など、業界の差し迫った課題全般にわたった議論を展開していきたい」、本県の谷黒会長は「地域建設業はまだまだ厳しい経営環境にある。本日の意見交換を通じて、北関東3県のさらなる連携が図られ、有意義な会議になることを期待する」などと述べた。
来賓からは、佐藤議員が建設業の2024年問題や労務単価の改定などの話題について触れ、解決までの猶予が残り少ないことに危機感を示して「今年こそ議論を積み重ねて、現状を改善しなければならない。皆さまと協力しながら取り組んでいく」と話した。
小林部長は「地域の意見を踏まえ、現場にとって必要な制度を本省に提案することが整備局の役割だと考えている。本日は3県の意見を聞き、生産性向上と魅力ある建設現場の実現に向けて力を合わせていきたい」、田村部長は「本日のテーマはいずれも地域建設業の喫緊の課題だと認識している。県としては皆さまの声を真摯に受け止め、共に取り組みを進めていく」とあいさつした。
意見交換では、各県がそれぞれ持ちよったテーマを議論した。本県からは、「週休2日制導入に伴う人件費などの対応」と「新型コロナウイルス感染症およびロシア・ウクライナ情勢に伴う原材料等高騰への対応」を提案。週休2日制の人件費については、日給月給制に対応するための労務費引上げや、実情に即した補正率の引き上げ、民間工事への対応などの課題を提起して意見を求めた。
これに群馬県は、本年度から週休2日制が県発注工事で本格的に導入され、今後は市町村の発注にも波及する可能性を説明した。この週休2日に対応するには「企業努力だけでは難しく、適正な工期や労務費の引上げなどが必要」と指摘。民間工事については「施主の意向に大きく左右されることから、現状で週休2日制の実現は難しい」と述べ、まずは公共工事で完全に週休2日制が定着し、社会の認識が変化すれば導入の可能性があるとの考えを示した。
茨城県は週休2日制の実現に向けた協会の取り組みや、県発注工事の実施率などを説明。民間工事は「現段階では非常に厳しい状況にある」との認識を示した。そうした状況の中、7月に県や関連団体らで連絡会議を発足し、民間工事の適正な工期の確保に向けて意見交換を行ったことを報告。今後は「週2日休むのは当たり前という環境が実現できるよう、受発者とともに改革を進める」との考えを示した。
群馬県からは、「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」と「建設DXによる生産性の向上」の2件を提案した。建設DXではICT施工をはじめ、遠隔臨場や電子データを活用した工事書類のスリム化などが進んでいる状況を説明。今後はBIM/CIMの推進や工事の確認・検査の直接計測の省略、建設事務のDX、電子契約などに取り組む必要性を指摘して、各県の取り組み状況を質問した。
これに対し本県は、これまでにドローンやBIM/CIM、情報共有システムの操作の研修・講座を開催してきたことに加え、ウェブ会議やペーパーレス会議の導入、経営事項審査での電子化への対応などに取り組んでいることを報告。また、ICT施工は高額の設備投資となるため「中小企業でも取り組みやすい方策の検討や、発注機関へ3Dデータで納入可能になるよう要望することを検討している」と説明した。
茨城県はICT施工に加え、工事以外のICT活用が必要との考えから昨年度にアンケート調査を実施し、その結果、ICTを推進する人材の確保や会社の規模に応じた情報提供、建設事務のDXなどに取り組む必要性が示されたことを報告。今後は、建設DXと若年労働者の確保が一対のものという考えのもと、これらの施策を盛り込んだ協会運営を行っていく考えを示した。
最後に茨城県は、「建設キャリアアップシステム」と「建設業のイメージアップ」を提案。建設業のイメージアップでは、これまで実施してきた活動を紹介し、各県にイメージアップ活動事例や今後の戦略などについて意見を求めた。
これに対し、本県と群馬県はそれぞれ「建設業の魅力を伝え、次世代の入職促進するためにもイメージアップは重要な施策」との認識を示した。また、その際には地域を守る建設業の役割をしっかりと伝えることも重要だと指摘。具体的には、マスコットキャラクターの活用や、災害・復旧情報のSNSでの発信、インターンシップや合同企業説明、フォトコンテストの開催、リーフレットの作成など多岐に渡っている。