専門部署なし4割 ICT活用の調査結果を公表(茨建協)

[2022/6/23 茨城版]
 県建設業協会(石津健光会長)はこのほど、「建設業のICT活用に関するアンケート調査報告書」を公表した。今回の調査はICT施工以外の分野に焦点を当て、その実態を把握する調査となった。その結果、社内でシステム導入・運用・セキュリティ対策を担う部署または担当者を置いていない企業が全体の4割を占めていることが判明。課題としては、人材の確保や各社の規模に応じた情報提供、投資資金の確保、発注者との協力などが挙げられるという。同会は今回の調査結果を基礎資料として活用し、生産性向上に向けて建設業界のデジタル化を推進していく考えだ。

 同会では、事業全体へのデジタル技術活用による生産性向上と経営力強化に向けた研究と啓蒙活動を行っている。その一環として昨年11月、会員企業に対してICT活用のアンケート調査を実施。その際には、ICT施工以外の分野を対象とした。

 これはICT施工で実施件数が把握されていることに対し、それ以外の施工管理や間接業務の実態は十分に把握されていない現状を受けて、実施するのもの。そこで今回は、ICT活用への取り組み状況や効果、課題などについて把握を行い、建設DX時代に向けた業界全体でのICT活用を推進するための方向性を検討する基礎資料とすることを目的としている。

 調査は同会の会員企業を対象に、昨年11月1日から30日までの1カ月間で実施。ウェブと調査票で回答を受けた。なお、有効回答数は145社となっている。

 調査結果をまとめた結果、ICT活用に向けた課題として、▽ICT活用を推進する人材の確保、社員全体のICTスキルの向上▽規模に適したICT活用な効果に関する情報提供▽ICTに必要な投資資金の確保▽ICT活用に対する公共発注機関の理解と協力の実現▽情報セキュリティ対策の強化▽ICT活用による働き方改革の実現──の6点を抽出した。

 このうち、ICT活用の人材確保では、アンケートの結果、社内でシステム導入・運用・セキュリティ対策などを担う部署または担当者を置いていない企業が全体の4割を占め、社内におけるICT活用を推進する体制づくりが進んでいないことが分かった。また、現状では経営者が直接ICT活用を主導している企業が多く、経営者自らが積極的に新しい情報の収集や知識の習得に努める必要性を指摘している。

 デジタル化の課題としては、「費用対効果が不明」が上位となった。自由回答では「業界全体の指向性についての情報が不足している」や「建設業の活性化につながるような魅力が分かりやすければ、ICT活用が進む」、「事例として大手ゼネコンではなく、同じような規模のモデルがあれば、目標にできる」などの声があった。

 投資資金の確保については、「コスト負担が大きい」が6割弱を占める。しかしその一方、ICT関係補助金などの活用状況をみると、「利用していない企業」が6割弱となっている。そこで、ICTに対する投資は経営の安定、企業の成長に不可欠なものであると経営者が認識し、中長期で計画的に実施していくことが必要だと示した。

 働き方改革については、ICTの活用によって時間外労働の削減や間接業務の省力化が上位となる一方、テレワークなどの働き方の多様化は低位となった。また、業務の効率化についてみると、例えば「労務安全書類電子化システム」の普及率は未だに低い現状にある。そのため、生産性向上の手段としてのICT活用による業務改善の余地は大きいと指摘している。

 こうした課題を踏まえ、今後のICT促進に向けた支援の方向性として、▽社内のICT推進人材の育成と社員全体のICTスキルの向上▽規模に適した効果的なICT活用事例の情報発信とICT実行支援▽ICT活用を促進するための補助制度の充実化と情報発信▽発注者双方におけるICT活用促進への取り組み──を掲げた。

 このうち、規模に応じた情報発信として、中小企業に適したICTの活用と効果を示した事例集を整理し、情報発信を行う。これにより、ICT施工以外の分野(施工管理や管理業務)へ活用領域の拡大を図っていく。

 その際には単にICTツールなどの導入に留まらず、業務改善につながる実効性のあるデジタル化を目指し、外部専門家を紹介するなどの実行支援を行う環境を整備する。さらに、SNS活用事例の共有や、業界団体による積極的なソーシャルメディア運用により、担い手確保や業界のイメージアップにつなげていくとした。

 補助の充実としては、既存の補助金や助成金に加えて、新たな補助制度の新設に向けて行政などに働きかけを行う。また、補助制度に関する説明会を開催し、補助制度の利用促進に向けて情報発信を行っていく。

 受発注者双方の取り組みとしては、意見交換会を通じて先進事例を共有していくことを明記。ICT施工に留まらない幅広いICT活用・デジタル化についての受発注者双方の理解と意識向上の機会をつくっていく。あわせて、そのような取り組みを後押しする評価制度の整備や、間接費用の工事への計上などを発注者へ働きかける方向性を示した。

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