浸水被害の軽減へ 二級水系流域治水プロを公表(県と4市村)
[2022/6/8 茨城版]
県と北茨城市、高萩市、日立市、東海村はこのほど、県二級水系流域治水プロジェクトを公表した。プロジェクトでは、河川管理者が行う河川改修に加え、流域全体でハードとソフト対策を一体的に行い、流域の浸水被害の軽減を図っていく。その際には従来からの取り組みに加え、新たに田んぼダムやため池の治水利用、ダムの事前放流といったメニューを追加した。
流域治水プロジェクトは、近年の激甚化する水害を受けて、河川管理者が行う対策に加え、河川流域全体のあらゆる関係者が協働し、流域全体で水害を軽減させる治水対策「流域治水」を行うもの。20年度には、全国の各一級水系ごとに流域全体で緊急的に実施すべき流域治水の全体像を「流域治水プロジェクト」として策定・公表し、流域治水を計画的に進めている。
県内の一級水系についても21年3月に、国で流域治水プロジェクトを策定した。これを受けて県では、県管理河川である二級河川についても同様のプロジェクト策定に取り掛かることになった。本県の二級河川はすべて県北地域に集中しており、花貫川や十王川など27河川・16水系が存在する。そのため、協議会の構成員は県と日立市、高萩市、北茨城市、東海村、林野庁となる。
協議会は昨年7月に第1回の会合を実施。その後、プロジェクトの検討を行い、このほど計画が策定となった。
プロジェクトは、▽氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策▽被害対象を減少させるための対策▽被害の軽減、早期復旧・復興の対策──の3区分で構成する。
「氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策」では、▽堤防整備、河道掘削▽河川に堆積した土砂の撤去▽市街地浸水対策の強化(下水道における雨水貯留施設・排水施設などの整備▽砂防関係施設の整備・維持管理▽ダムの事前放流▽森林整備、治山対策▽流域の関係者による雨水貯留浸透対策の強化(開発行為の雨水貯留・浸透対策の指導)▽農業用ため池の治水利用促進に向けた検討▽水田貯留(田んぼダム)の取り組み促進に向けた検討▽雨水貯留施設の整備(住宅の各戸貯留)▽雨水貯留施設の整備(防災調整池、工程貯留)──を盛り込んだ。
新たな取り組みとして、田んぼダムや農業用ため池の治水利用促進に向けた検討を追加した。このうち、田んぼダムは、田んぼが従来から持っている貯水機能に加え、田んぼダム用の排水口を設置することで、さらなる雨水を一時的に貯留し、下流域の浸水軽減を図ることが目的となる。実施場所は下流域に住宅地がある地区や農地耕作者の協力が得られる地区を想定。なお、田んぼダムは本県ではこれまで実施例がないという。
このほかの対策としては、リスクが高い区域での立地抑制や移転誘導、まちづくりと一体となった土砂災害対策、水位計・河川監視カメラの設置・周知、洪水ハザードマップの作成・周知などを実施していく。
プロジェクトでは、これらのメニューについて、短期と中長期にわけて取り組みを行う。短期で行うものとしては、河川改修や田んぼダムの取り組み、ため池の治水利用のほか、立地適正化計画の策定、各種ハザードマップの作成などを挙げる。中長期については、雨水貯留施設の整備や継続的な河川の維持管理、森林の適正な整備のほか、ソフト施策のさらなる拡充を計画している。
今後は年に1度、関係者らで集まりプロジェクトのフォローアップを図っていく予定だという。