働き方改革を支援 国土強靭化の集中的な実施(田村県土木部長就任インタビュー)

[2022/5/27 茨城版]
 本年4月から県土木部長に就任した田村央氏に対し、抱負や意気込みを聞いた。田村部長は県総合計画の基本理念の柱である「災害・危機に強い県づくり」と「活力を生むインフラと住み続けたくなるまちづくり」にスピード感を持って取り組む考えを示した。また、目標の実現には地元建設業の維持・発展が重要との認識を示し、「県としては適正な予定価格の設定や完全週休2日制の導入促進、施工時期の平準化、ICT施工の普及拡大、就労環境の改善、生産性向上に向けた取り組みを通じて、業界の働き方改革の支援にも積極的に取り組んでいく」と語った。

―部長就任の抱負は

 令和元年東日本台風からの復旧・復興とあわせて、県総合計画の基本理念「活力があり、県民が日本一幸せな県の実現」の柱である「災害・危機に強い県づくり」と、「活力を生むインフラと住み続けたくなるまちづくり」にスピード感を持って取り組んでいきたい。

 また、近年ますます頻発化・激甚化する自然災害に対応するため、国と歩調を合わせながら、防災・減災国土強靭化のための対策を集中的に実施して、県民の安全・安心の確保に繋げていく。

―具体的な取り組み内容について

 「災害・危機に強い県づくり」では、令和元年東日本台風からの復旧・復興を最優先に、国などと連携しながら、那珂川・久慈川緊急治水対策プロジェクトを進める。あわせて、治山治水対策、公共施設の耐震化・長寿命化などのハード対策と、ソフト対策にも取り組む。

 「活力を生むインフラと住み続けたくなるまちづくり」では、圏央道の4車線化、東関道水戸線、さらにはスマートICの設置・促進、茨城港・鹿島港の港湾機能強化、カーボンニュートラルへの対応などの取り組みを進め、陸海空の広域交通ネットワークのさらなる充実を図っていく。

 このうち、圏央道や東関道水戸線は、那珂川・久慈川緊急治水対策プロジェクトとともに、これから事業の最盛期を迎える。県としては最大限、国などに協力しながら、事業を促進していきたい。また、通学路の整備や観光地の渋滞対策など、日常生活に密着する事業についてもしっかりと取り組みを進めていく。

 このほか、パークPFI制度についても、持続可能な公園の運営管理を図るとともに、さらなる魅力向上に取り組むために進める。21年度には笠間芸術の森公園と県西総合公園でサウンディング調査を実施しており、本年度は地元市と調整しながら次のステップに行けるよう調整を行う。

―担い手確保について

 担い手確保に向けて土木部では3本の柱として、「就労環境の改善」と「生産性の向上」、「若年層の入職促進」に取り組んでいる。

 「就労環境の改善」では、完全週休2日制工事や快適トイレ促進工事などを進めている。また、本県独自の取り組みとして、本年3月に現場代理人の育児や介護による途中交代や、研修参加による一時不在に対応するためのルールをまとめたQ&A集を作成した。作成の際には、現場代理人へのアンケートや意見交換などを踏まえて作成している。県ではQ&A集を発注者側の担当者に周知し、適切な運用が行えるようフォローアップしていく。さらに、全国的な取り組みであるCCUSについて、本県でも4月から試行を開始した。

 「生産性の向上」では、ICT施工で本県独自の発注方式であるチャレンジいばらき簡単活用型をこの4月に新設した。この簡単活用型は、比較的コストを抑えた技術を部分的に活用するもの。まずは受注者の皆さまに簡単活用型を体験してもらい、ICT活用の実感を持ってもらいたい。

 21年8月から試行している遠隔臨場については、さらなる拡大を図るとともに、効果や課題の検証を進めていく。昨年度から導入を開始した電子契約についても、さらなる利用促進を図る。また、情報共有システムについては、本年度から営繕工事を除くすべての工事に原則適用する。デジタル技術をフル活用して、受発注者の業務の効率化に取り組む。

 「若年層の入職促進」では、県建設業協会と連携しながら、若年層へのPRとして、建設フェスタやインターンシップ、現場見学会などを通じて、建設業の魅力を伝える取り組みを実施していく。

―時間外労働の上限規制の猶予期間が残り2年を切ったが

 課題解決には、何かひとつの取り組みを行えば達成できるものではない。完全週休2日制促進工事に加え、ICT施工や遠隔臨場、情報共有システムなどのデジタル技術を活用し、待ち時間や移動時間の縮小を行い、効率性を高めて就業時間内に業務が終わるよう努力したい。その際には、建設業者らと意見交換を行い、あらゆる業務プロセスのなかで何ができるかを検討していく。

―資材の高騰について

 県では例年、市場の取引価格を定期的に調査し、その結果を的確に反映するよう取り組んできた。しかし、近年の資材単価の急激な上昇を受け、必要に応じて臨時の市況調査を実施し、その結果を県単価に反映させることが必要だと考えている。直近では、セメントの価格上昇を受けて、生コンやコンクリート二次製品について、4月に臨時の市況調査を実施し、5月に単価の改定を行った。今後も、市場の動向を十分に注視しながら、乖離が生じないよう適正な予定価格を設定していきたい。

 昨今の社会情勢の変化を受けて、今後も資材単価が高騰する可能性はある。スライド条項で対応することも可能だが、早めに資材単価を改定すれば、余計な手間を省くことができる。発注者として、早期に対応できるよう努力をしていきたい。

―地元建設業へのメッセージ

 建設業者の皆さまには日頃から地域の守り手として、災害時の対応やインフラの整備・管理に尽力いただくとともに、豚熱での防疫作業などに協力していただき、非常に感謝している。

 県土づくりを進めていくうえで、インフラの適正な維持管理や、災害の対応など、多くの課題を抱えている。課題解決には地域に精通する地元建設業、さらには測量設計コンサルタントをはじめとする建設関連業の皆さまの技術力が必要不可欠。これから、担い手の確保育成がさらに重要となるため、県としては適正な予定価格の設定や完全週休2日制の導入促進、施工時期の平準化、ICT施工の普及拡大、就労環境の改善、生産性向上に向けた取り組みを通じて、業界の働き方改革の支援へ積極的に取り組んでいきたい。

 ◇プロフィール

 田村央(たむら ひさし)=1971年生まれの50歳。東京大学大学院修士課程修了。1996年に建設省に入省し、国土交通省関東地方整備局相武国道事務所長、国土交通省関東地方整備局企画部企画調整官、国土交通省官房技術調査課建設技術調整室長、国土交通省道路局企画課道路経済調査室長、茨城県土木部都市局長を経て、22年4月に茨城県土木部長に就任。趣味はテニスやジョギング、街歩き。好きな言葉は「チームワークでインフラの整備・管理を」。多様な職員がいきいきと仕事ができる環境づくりを心がけている。

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