来年度に基本設計 足利学校第2次保存整備計画 屋根改修や設備更新(足利市)

[2022/4/26 栃木版]

 足利市は、計画期間を2023~32年度とする史跡足利学校跡第2次保存整備基本計画を策定した。それによると、参道区域、孔子廟区域、学問所区域、周辺区域に分けて整備事業を実施する。今後は、23年度に保存整備基本設計を策定して、樹木整備、茅葺や板葺の屋根改修、消火設備の更新、トイレの改修・更新、灯具のLED化、ユニバーサルデザイン化などを進めていく。

 市は史跡足利学校(昌平町2338)について、第1次保存整備事業が実施されてから30年以上が経過したことから、経年劣化した復元建物や防災設備、繁茂する樹木等の課題に対する総合的かつ抜本的な再整備を行うための方向性や具体的手法、工程などを盛り込んだ第2次保存整備基本計画を、景観プランニング(宇都宮市)に委託して策定した。

 整備について、参道区域の入徳門は、状況に応じた適切な補修を行う。正一位霊験稲荷神社は、社殿の大規模な修理や南堀の復元整備を行う場合に、移築保存を検討する。

 石畳の参道は、一部に沈みがあるため将来的な補修を検討するほか、ユニバーサルデザイン化を意識して適切に維持する。植栽は、植樹間隔が密や傾きが大きい10本を伐採。参道東側のイヌツゲ生垣は、現状から2分の1の高さへ刈り込み、または竹垣に転換する。入徳門西側の案内板は早期に改修する。

 孔子廟区域については、学校門、杏壇門および築地塀の防災設備を早期に補修する。遺蹟図書館は、破損箇所の調査を行った上で適切な補修を実施。玄関ポーチの銅板破風や面戸漆喰は、優先して改修する。電気設備は調査を行った上で早急な更新・改修を実施し、所蔵品保護のための設備更新、防災設備の新技術導入も含めた更新も必要とした。遺蹟図書館は歴史的建造物としての価値を調査研究し、県指定や重要文化財など上級指定への格上げを目指すための方策を検討していく。

 石造文庫(新文庫)と文庫は、破損箇所の調査を行った上で適切に補修する。電気設備は調査を行った上で早急な更新・改修を実施し、所蔵品保護のための設備更新、防災設備の新技術導入も含めた更新も必要とした。

 収蔵庫(新々文庫)は、電気設備の調査を行った上で早急な更新・改修を実施し、所蔵品保護のための設備更新、防災設備の新技術導入も含めた更新も必要とした。大成殿は20年度に保存修理工事を完了しており、現存する国内最古の孔子廟としての価値を明らかにし、文化財指定を目指す。

 校門西側の土塁は、江戸時代の旧状を唯一留めることから、維持や保護のための対策が必要とした。杏壇門の暫定スロープ処理は、ユニバーサルデザイン化を含めた改修を検討。学校門北のイチョウ、遺蹟図書館南東のスダジイ、遺蹟図書館北東のナンバンハゼは整備し、ナンバンハゼはクローン苗木の育成も検討する。他の高木類なども、伐採、剪定、間伐などの整備を進めていく。

 消火設備は、新技術導入も含めた更新が必要とした。外トイレは現在の位置・規模・設備を踏襲し、景観に配慮した外装や、多目的トイレなどユニバーサルデザイン化の改修を検討すべきとしている。

 学問所区域の方丈は、屋根で茅葺屋根の全面葺き替えや板葺屋根の早急な葺き替えを行い、腐朽しやすい箇所の景観を配慮した長寿命化も検討する。消化・防災設備は、放水銃への転換など新技術導入も含めた効果的な設備へ早期に更新。車いす動線の確保など、ユニバーサルデザイン化も検討する。

 庫裡は、屋根で茅葺屋根や板葺屋根の早急な葺き替えを行い、小者部屋の屋根は優先して、腐朽しやすい箇所の景観を配慮した長寿命化も検討する。消化・防災設備は、放水銃への転換など新技術導入も含めた効果的な設備へ早期に更新。車いす動線の確保など、ユニバーサルデザイン化も検討していく。

 書院は、板葺屋根の早急な葺き替えを行い、腐朽しやすい箇所の景観を配慮した長寿命化も検討する。防災設備は、新技術導入も含めた効果的な設備へ早期に更新する。

 衆寮は、板葺屋根の早急な葺き替えを行い、屋根の葺き替えに合わせて天井の状態を確認して改修を検討。再整備に合わせて畳の更新や建具の改修、備品等の保管施設となっている部屋の新たな公開・活用方法を検討する。木小屋は、板葺屋根を早急に葺き替える。引戸や三和土等の破損は早期に改修し、防災設備は新技術導入も含めた更新を実施する。

 土蔵は、板葺屋根の早急な葺き替えを行い、葺き替えに合わせて戸口庇や窓庇も改修。所蔵品を安全に保護するための設備更新も実施する。裏門は、茅葺屋根の早急な葺き替えを行い、引戸・控柱・腰板の腐朽、三和土の破損も早期に改修・更新を実施。防災設備は、新技術導入も含めた更新を実施する。

 陰寮跡は、解説板の設置を検討するほか、南北の庭園や南北のサエンバなどで植栽整備を実施。庫裡東側の屋外消火栓および放水銃は、景観配慮や新技術導入も含めた早急な更新が必要とした。

 周辺区域の管理事務所は▽トイレの洋式化▽地下室のドレンチャーポンプや電気設備の早急な更新や地上への施設▽キャッシュレス決済や非接触対応型入退場管理システムの導入の検討▽情報発信のためのデジタルサイネージ活用の検討▽防災設備は新技術導入も含めた更新-などを行う。多目的駐車場は、地下室のドレンチャーポンプや電気設備の移設候補地として検討する。

 各施設にある灯具、街灯、庭園灯などは、LED化を実施する。標識類や案内板などは、デザインの統一化や多言語化、ユニバーサルデザイン化を進めていく。

 今後のスケジュールについて、建物は方丈と庫裡屋根葺き替えの実施設計を24年度、工事を24~25年度に実施する。木小屋の茅葺屋根葺き替え工事は26年度、裏門の同工事は27年度に実施し、板葺屋根改修工事は庫裡と書院を26~27年度、衆寮を28~29年度、新土蔵を29~30年度に実施する。また、復元建物の建具等の改修・更新工事は26~30年度に実施する。

 消火設備(ドレンチャー、放水銃など)は、24年度に実施設計、24~25年度に改修工事を実施し、受変電設備更新工事は24~25年度に実施する。非常放送設備や自火報設備の更新工事は、22~25年度に実施する。

 トイレは、25年度に実施設計、26~28年度に更新・改修工事を実施し、多言語案内システムは23~24年度に導入する。避雷針設備改修工事は27~28年度に実施し、このほか樹木整備、案内表示や説明板の改修工事、映像案内の整備、ユニバーサルデザイン対応整備を、計画期間内に行う。

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