川西水防拠点で盛土工 新年度の事業概要 補正とあわせ事業費126億円(利根川上流河川)
[2022/4/12 栃木版]
国交省利根川上流河川事務所は、2022年度の事業概要を明らかにした。主な事業は、首都圏氾濫区域堤防強化対策や利根川左岸築堤、稲戸井調節池整備、河川防災ステーション整備などのほか、本県では水防拠点整備を実施する。事業費は、河川改修費66億7000万円や河川維持修繕費25億5600万円、堰堤維持費10億3500万円など全体で102億9100万円となり、前年度の111億5000万円から7.7%の減。これに、21年度補正予算の23億7800万円をあわせ、事業を執行していく。
本県で整備している川西水防拠点は、野木町川西地区の一級河川思川右岸に設置するもので、本年度は盛土などを実施する。水防拠点は、洪水時に水防活動の拠点となる場所で、水防活動に必要な資材を備蓄するほか、河川防災ステーションと連携して被災時には災害復旧の拠点となる。
野木町川西地区は、堤防決壊などで河川が氾濫した場合、浸水深が大きく、また周辺に避難場所も無いことから、人命に関わる被害が生じる恐れがあるため、水防活動や近隣住民の一時避難場所として活用可能な水防拠点を整備している。
また、茨城県境町では境町利根川左岸河川防災ステーションの用地取得を境町と連携し進める予定。河川防災ステーションは、様々な災害に備え、被災時にすみやかに堤防の復旧などを行うための拠点となる。
コンクリートブロックや割栗石など復旧に必要な資機材を備蓄するほか、資材の搬出入や建設機械の活動、水防活動に必要なスペース、ヘリポートなどを備え、近隣住民の非常時の緊急避難場所としての活用も期待される。境町利根川左岸河川防災ステーションは、令和3年3月18日に整備計画が登録された。
首都圏氾濫区域堤防強化対策は、1947年のカスリーン台風で堤防が決壊し、広大な範囲に甚大な被害をもたらした教訓を踏まえ、埼玉や東京などへの氾濫被害の拡大が想定される右岸側堤防の断面を拡幅し、洪水時の水の浸透に対する安全性を向上させる事業。整備範囲は、埼玉県深谷市から茨城県五霞町までの約49.5kmで、埼玉県羽生市を境に上流(II期)区間(約26km)と下流(I期)区間(約23.5km)に分けて整備している。
進捗率は、I期の用地取得が契約面積比で約98%、堤防強化延長が川裏盛土延長比で約87%(約20.4km)、II期は用地が約47%、堤防強化延長が約5%(約1.3km)となっている。本年度は、五霞町から羽生市までの用地取得が完了した箇所で堤防の盛土工事や水路・道路の付け替え工事を実施するとともに、用地取得を継続する。
また利根川上流部の左岸堤防も、決壊が発生した場合、区間によっては湛水深が深く多数の人命が危険にさらされるなど地域への甚大な影響が想定されるため、利根川と渡良瀬川が合流する埼玉県加須市北川辺地区や茨城県古河市、群馬県板倉町の堤防の拡幅を行って治水安全度の向上を図る。本年度は、古河市中田新田地先、加須市麦倉地先、飯積地先、板倉町飯野地先などの堤防整備を行う。
稲戸井調節池は、茨城県取手市と守谷市に位置しており、田中調節池および菅生調節池と一体となって洪水を調節池内に取り込み利根川の水位を下げることで、下流域の治水安全度を高めている。東日本台風の際には、3つの調節池の合計で過去最大となる約9000万立方mの洪水を貯留し、その洪水貯留効果を発揮した。
現在実施中の整備事業では、池内掘削と用地・補償を進めており、池内掘削は全体計画800万立方mのうち22年3月末時点で約255万立方mが進捗。用地・補償は、同様に330万平方mのうち約314万平方mが完了している。22年度は引き続き、周辺環境に配慮しつつ、洪水調節容量を増やすための掘削を実施する。
河川管理施設の維持管理では、堤防除草と維持補修を行うほか、河川巡視および情況把握、機械設備・通信設備の点検・整備を実施する。渡良瀬遊水地の中に設置された渡良瀬貯水池(谷中湖)は効率的できめ細かな水運用を実施し、冬期には「干し上げ」を例年に引き続き実施する予定。干し上げ、ヨシ原浄化施設や谷田川分離施設などで、貯水池の水質保全対策を実施する。
事業費は、河川改修費が前年度当初から13.3%減の6670万円。内訳は、一般改修(利根川上流)が62億2500万円、一般改修(大規模)が1億1400万円、一般改修(都市基盤)が3億3100万円となる。
また、河川維持修繕費が前年度当初から3.9%増の25億5600万円、河川工作物関連応急対策事業費が3000万円、堰堤維持費が3.8%増の10億3500万円。このほか、21年度補正予算では河川改修費21億6400万円、河川維持修繕費1億6400万円、堰堤維持費5000万円の計23億7800万円も計上している。