[2022/4/9　栃木版]

　国交省下館河川事務所の2022年度の事業概要によると、本年度は「流域治水」を推進するため、鬼怒川の田川合流点の水門整備のほか、鬼怒川・小貝川の維持管理をはじめ樋管改築・堤防整備、河岸侵食・洗掘対策などを実施する。このうち県内区間では、鬼怒川の真岡市下籠谷地区で侵食対策(低水護岸)を計画。事業費は鬼怒川が26億3100万円、小貝川が25億2600万円の計51億5700万円で、前年度(47億7800万円)から7.9％増加している。

　同事務所では、「平成27年9月関東・東北豪雨」で特に大きな被害を受けた鬼怒川下流域でこれまでハード・ソフト対策が一体となった緊急的・集中的な治水対策「鬼怒川緊急対策プロジェクト」を推進し、21年9月にハード対策が完了した。

　22年度は引き続き、気候変動で頻発・激甚化する水害・土砂災害に対する安全度の向上を図るため、これまでの河川管理者による対策だけでなく、流域のあらゆる関係者の協働によるハード・ソフト一体の水災害対策「流域治水」を推進する。

　この流域治水のため、鬼怒川・小貝川で▽洪水氾濫を未然に防ぐための取り組み▽持続的な安全性の確保のための取り組み▽地域に元気を届けるための取り組み-をそれぞれ実施していく。

　具体的に見ると、「洪水氾濫を未然に防ぐための取り組み」は鬼怒川で田川合流点の水門整備や樋管改築、上流部における河岸の侵食・洗掘対策を引き続き行う。また小貝川では、樋管改築のほか、高さや幅が足りない堤防の整備を行う。

　鬼怒川の支川田川合流点の水門整備は、田川の沿川で浸水被害が過去に何度も発生し、関東・東北豪雨では床上・床下あわせて213戸の家屋が浸水する被害が発生したことを踏まえ、茨城県による田川の堤防整備とあわせて田川合流点に水門を整備し、鬼怒川の水位上昇時における洪水安全度の向上を図るもの。本年度は引き続き、茨城県結城市久保田地区で水門整備を行う。

　本県での治水対策は、鬼怒川上流部の河岸侵食・洗掘対策として、真岡市下籠谷地区において侵食対策(低水護岸)を実施する。鬼怒川上流部は関東屈指の急流河川で、東日本台風では河岸洗掘や護岸崩壊など8カ所で被災しており、洪水時の河岸の侵食・洗掘の防止を目的として低水護岸を整備して、堤防が決壊するリスクの軽減を図る。

　鬼怒川ではこのほか、16年度に策定した「鬼怒川河川整備計画」に基づき、堤防の高さや幅が不足している区間の整備と老朽化した樋管の改築を行う。22年度は茨城県下妻市二本紀地区で、引き続き二本紀揚水樋管改築を実施する。

　小貝川は、下流部の古八間排水樋管の老朽化が進んでおり、樋管部の堤防も必要な高さと幅を要していないことから、樋管の改築と併せて樋管部の堤防の嵩上げと拡幅も実施し、治水安全度の向上を図る。

　また、20年3月に策定した「小貝川河川整備計画」に基づき、堤防の高さや幅が不足している区間の整備と老朽化した樋管の撤去を行う。22年度は、茨城県つくばみらい市鬼長地区で道畑樋管撤去と堤防の嵩上げを計画する。

　このほか、茨城県取手市中内地区、常総市水海道川又町地区、東町地区、本豊田地区では堤防の整備を、茨城県つくばみらい市上平柳地区、長渡呂地区、つくば市吉沼地区では堤防の整備に伴う低水護岸を行う。

　「持続的な安全性の確保のための取り組み」では、維持管理として堤防の変状を早期に見つけるため年3回の堤防除草を実施するとともに、洪水時に河川管理施設(水門等ゲート設備・ポンプ設備等)が確実に稼動できるよう、定期的な点検・整備を実施する。

　堤防除草のコスト縮減に向けては、除草機械の遠隔化、大型化、河川協力団体との連携を図っており、DX推進の取り組みとして3次元管内図構築を行うほか、3D工事完成データを活用した除草工事出来形管理の省力化などの検討を進める。

　「地域に元気を届けるための取り組み」では、鬼怒川・小貝川の水辺整備を実施する。同事務所では、鬼怒川・小貝川の良好な景観や安全な水辺へのアクセスなどを有する拠点を「リバースポット」として位置づけ、河川の管理用通路や鬼怒川の改修と併せて整備する工事用道路等をサイクリングロードとして活用する「かわまちづくり計画」を進めている。

　22年度の予定は、鬼怒川が茨城県結城市、下妻市、常総市、守谷市、筑西市、つくばみらい市、八千代町の7市町で、管理用通路整備およびリバースポットの基盤整備として側帯等整備を行う。また小貝川では、リバースポットの基盤整備として側帯等整備を行う。

　事務所の本年度の事業費は、河川改修費に鬼怒川17億3600万円、小貝川15億6500万円の計33億0100万円(対前年度比20.3％増)、河川維持修繕費に鬼怒川8億4500万円、小貝川9億1900万円の計17億6400万円(同5.5％増)を計上する。

　このほか、河川工作物関連応急対策事業費は鬼怒川4000万円、小貝川3000万円の計7000万円、総合水系環境整備事業費は鬼怒川1000万円、小貝川1200万円の計2200万円となっている。