久米設計JVが最優秀 新庁舎建設の設計プロポ(宮城県 気仙沼市)

[2022/3/29 宮城版]
 気仙沼市は、新庁舎建設基本・実施設計業務の公募型プロポーザルで、久米設計(東京都江東区)・国際航業(東京都新宿区)設計JVを最優秀者に特定した。見積もり合わせの協議中で、30日に委託契約を結ぶ予定。委託限度額は税込3億2564万7000円。プロポでは5社から参加表明書の提出があった。次点は安井建築事務所・オオバ・気仙沼建築設計事務所JVだった。

 久米設計JVの提案では、地上4階建ての低層型庁舎とし、東側住宅地への日影影響を最小にする。1階は窓口フロアやホール、市民食堂、2階に執務フロア、3階に執務フロア(災害対策本部)、4階に議場を設ける。

 庁舎の南側には広場と大階段を配置し、道路・駐車場レベル共に主出入口を南向きとした。南東口は既存スロープを利用することで、現況レベルを生かしたレベル設定としている。

 主な特徴を見ると、南東に緑化斜面を利用した市民の憩いの場として「まちかどテラス」を配置。その南側には「まちかどひろば」を置き、さらに西側へ向かって庁舎の南面に市民ホールや「市民ひろば」を並べた。庁舎の北西側は南向き駐車場や直進スロープを配置している。

 庁舎の構造は、免震構造ではなく、制振構造を採用する考え。柱や梁はロングスパン架構が容易なS造を採用し、機能的に支障がない大きな執務空間を確保。ブレースの座屈補剛材として木部材を採用する。

 このほか、設備システムの効率化と適切な設備容量設計の実施を組み合わせてゼブ・レディ(ZEB-Ready)庁舎を実現することや、制振装置、高断熱Low-eガラス、太陽光発電パネル(20kW)、積極的な木材利用、地下オイルタンクなどを提案している。

 プロポは1~2次の2段階で審査した。審査委員会は石井敏東北工業大学副学長・建築学部長が委員長、赤川郁夫気仙沼市副市長が副委員長を務めた。

 久米設計JVの提案は、「まちかど庁舎」「コミュニティ庁舎」「アメニティ庁舎」「防災拠点庁舎」とコンセプト付けし、提案をまとめている。大きな特徴は、南東角に「まちかどひろば」を道路と同レベルで設け、そのレベルから直接市庁舎にアクセスできる構成とした点。

 同レベルは浸水の可能性があり、それをどのように考えるかが審査で議論となった。庁舎の一部が浸水しても設備の工夫等で庁舎機能への影響が抑えられることや、より高いレベルに導く複数のルートがあること、日常的に庁舎と市民がつながっていることなどがメリットとして評価された。

 一方で、災害時の災害対策本部の具体的な運用状況はイメージが乏しく、改善の余地があるとした。ツツジの植栽の是非、構造計画や食堂といった地域利用空間のあり方、西側道路の災害時の活用方法とそれに合わせた整備のあり方などは、今後に市側と議論して詳細を詰める必要性を確認した。

 基本・実施設計業務の履行期間は2024年6月28日までだが、場合によっては延長する可能性がある。

 新庁舎は田中184の旧市立病院を解体撤去し、跡地に建設する。事業区域面積は約2.2ha。基本計画の段階で、庁舎は延べ床面積に9000~1万平方m程度を想定し、新築工事費に約49億5000万円、外構工事費に約3億8100万円を試算。ここに解体費や造成費は含まれていない。

 新年度から既存病院の解体工事を進め、その後に造成工事や新築工事に着手して26年度後半から27年度前半にかけての供用開始を目指す。

 新庁舎建設の基本計画策定支援業務は梓設計(東北事務所・仙台市宮城野区)が担当した。

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