グリーンインフラなど追加 渡良瀬川流域治水協議会 プロジェクト更新で協議
[2022/3/17 栃木版]
国交省渡良瀬川河川事務所と栃木・群馬の両県、沿川の10市町および関係機関で構成する渡良瀬川流域治水協議会は14日、オンラインで第3回協議会を開催した。今回は構成員のさらなる拡大(気象庁、鉄道事業者)をはじめ、足利市と共同で実施しているかわまちづくりなどグリーンインフラや、事業効果の見える化に向けた水害リスクマップの追加などについて協議。この協議を踏まえて更新したプロジェクト資料は、本年度末に公表する予定となっている。また終了後は、「水防災意識社会」に関する減災対策協議会も開催した。
冒頭、渡良瀬川河川事務所の塚本一三所長は「渡良瀬川流域治水プロジェクトの策定・公表以降、流域全体のあらゆる関係者と一体となってハード・ソフト対策に取り組んでいただいている」と感謝し、今回の協議の概要を説明して改めて流域治水対策の取り組みへの協力を求めた。
近年の水災害による甚大な被害を受けて、施設能力を超過する洪水が発生するものへと意識を改革し、氾濫に備える「水防災意識社会」の再構築を進めてきた。現在、この取り組みをさらに一歩進めて、気候変動の影響や社会状況の変化などを踏まえ、あらゆる関係機関が協働して流域全体で対応する流域治水へ転換している。
気候変動による災害の激甚化・頻発化を踏まえ、河川管理者が主体となって行う河川整備などの事前防災対策を加速化させることに加え、水害リスクの高いエリアの対応など被害対象を減少させるための対策や、中高頻度の浸水想定などの情報を提供していくとして、今回、新たに水害リスクマップを記載する。
またグリーンインフラとして、環境に配慮した多自然川づくりや、水辺空間を活用したかわまちづくり、水辺の学校や森林保全など多様な機能を活用することなども盛り込む。協議会の構成員には、気象庁の宇都宮地方気象台長と前橋気象台長、東日本旅客鉄道株式会社高崎支社安全企画室長、東武鉄道株式会社鉄道事業本部技術統括部施設部長を追加し、規約を3月14日付で変更した。
新たに位置付けたグリーンインフラの取り組みは、「地方都市のまちづくりと一体となった、賑わい、美しい景観、豊かな自然環境を備えた水辺空間の創出」を目指すもの。渡良瀬川の環境は、長い年月をかけ渓谷、湿地、礫河原、ヨシ原などの多様な環境を形成してきた。高水敷は散策やスポーツに広く利用されているが、近年、レクリエーション空間の確保、自然環境の保全など河川環境に対するニーズは高まっている。
また、新とちぎ観光立県戦略では観光客入込数が25年に現状値を上回ることを目標としており、栃木県の目標に寄与できるよう、概ね24年までに足利市のかわまちづくり(岩井地区・五十部地区)をはじめ、流域の拠点となる箇所で取り組みを進めるなど、自然環境が有する多様な機能を生かすグリーンインフラの取り組みを推進する。
大きな内容は、「治水対策における多自然川づくり」として礫河原の保全・再生、瀬淵の保全・再生、山腹工による緑の基盤整備、整備における生物の多様な生育環境、河川景観の保全・創出などがある。「魅力ある水辺空間・賑わい創出」としてはかわまちづくりの事業があり、「自然環境が有する多様な機能活用の取り組み」では水辺の楽校による環境学習、植樹による緑化、多面的機能を発揮する森林の維持・造成に取り組む。
ロードマップにもグリーンインフラの区分を追加し、短期・中期・中長期に分けて事業を進める方針で、このうち足利市のかわまちづくりについては、短期で整備が完了する予定となっている。
また今回、国の直轄区間の事業の見える化も追加。渡良瀬川の河川整備率は短期で約90%から92%になる予定としており、現況の水害リスクマップと短期の整備後の水害リスクマップを並記している。
流域治水の具体的な取り組みの状況については現在集計中としており、確定させたあと公表する。21年度の流域治水の具体的な取り組みとしては、「氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策」として秋山川の河道掘削や築堤の着実な進捗を図っており、「被害対象を減少させるための対策」では足利市で立地適正化計画を策定している。
このほか、「開発行為に対する流出抑制の指導」の取り組みを行っている市町村に新たに足利市を追加。「水源林造成事業による森林の整備・保全」は群馬県のほか、新たに栃木県が追加となっている。下水道対策の全体事業費は、約62億円に変更した。
足利市の早川尚秀市長は、市の中央部に架かる中橋について「長年水防上の危険箇所として本市の懸案事項であったが、1月に県の都市計画事業として事業認可された。市も事業の早期完了に向けて役割をしっかりと果たしていきたい」などと話し、塚本所長は「中橋の架け替えと堤防は最重要箇所で、長年の懸案だった。市や県と連携して取り組む」と応じた。