メリットの明確化課題 CCUS導入へ意見交換(官民連絡協が初会合)

[2022/3/16 宮城版]

官民がCCUSの課題を共有し意見を交わした

官民がCCUSの課題を共有し意見を交わした

 県建設キャリアアップシステム官民連絡協議会が14日、仙台市内で初めて開催され、国土交通省や県、仙台市と、県建設業協会などの業界団体が同システム(CCUS)の導入促進に向けて意見交換した。専門工事業団体からは導入にメリットが感じられないという意見が多く出た。国交省は処遇改善というメリットにつなげるため、CCUSの取り組みや評価と、公共工事の設計労務単価を関連付けて考える局面に来ているとの認識を示した。

 初会合は県建設産業会館で対面とウェブを併用して開かれた。国交省や県土木部、仙台市都市整備局、宮建協、県建設専門工事業団体連合会(県建団連)、県管工業協同組合(宮管組合)、県空調衛生工事業協会、県建設職組合連合会、県造園建設業協会、県電気工事工業組合、建設業振興基金などから26人が参加した。

千葉会長

千葉会長

 あいさつで宮建協と県建設産業団体連合会(県建産連)の会長を務める千葉会長は、CCUSについて、「技能労働者一人一人への浸透にはメリットの共有を含め、まだまだ時間を要しているのが実態」と述べ、今回の協議会を立ち上げることで「関係者の課題や情報を共有しながらよりよい仕組みとなること」に期待した。

 意見交換では、県建設職組合連合会の鎌内誠次会長が、当初は事業者や技能者の能力を公表することで処遇の改善が図られると思っていたが、CCUSの活用が進んでいないため、会員への働きかけができにくいという問題を提起した。

 これに対し国交省不動産・建設経済局建設市場整備課の沖本俊太朗建設キャリアアップシステム推進室長は、本年度に専門工事業の施工能力等の見える化評価制度を設け、4段階で評価を見える化して元請企業に選んでもらえやすいようにしていくことを伝えた。

 県建団連の伊藤俊一会長は、大手ゼネコンの下請企業はCCUS登録が進んでいるが、民間工事の下請企業などは導入が進んでいないと指摘。導入しようとすれば費用がかかり仕事から外されてしまうと危惧した。

 同じく県建団連の稲村忠夫理事は「処遇改善といっても最終的には事業主が賃金を支払うことになる。支払いの原資は請負金額」と話し、十分な請負金額の確保には設計労務単価の引き上げが必要とした。ただし、建築が主となる事業者の場合、公共事業では土木工事よりも建築工事が少ないため、民間工事ともリンクさせることを要望した。

 宮管組合の井上環理事長も「レベル4の技能者がいくら多くいても民間工事では安い金額でしか受注できない。それでは処遇改善は無理」と述べた。

 国交省の沖本室長は、民間工事でのメリット享受が不足している点を認めつつ、CCUS処遇改善推進協議会に不動産協会や全国住宅産業協会など民間の発注者団体16団体にも加わってもらっていることや、経営事項審査(経審)の加点見直しで、民間工事も含めてCCUSに取り組んでいる場合に加点する方向で審議されていることなどを伝えた。

 意見交換ではこのほか、県建団連の松川多喜夫理事がCCUSで使用するカードについて、さまざまな技能講習の資格者証と一本化することを要望するとともに、さらに一歩進んでカードではなく携帯電話やスマートフォンに登録情報を入れる仕組みを求めた。

 沖本室長は技能講習の資格者証について、厚生労働省と協議しながら一本化に向けて取り組んでいることを明かし、カードなしで携帯端末に取り込むことも含めて「次の会議(までに話をまとめること)で、よい報告ができるようにがんばりたい」と応じた。

 意見交換の総括で国交省不動産・建設経済局建設市場整備課の西山茂樹課長は「どうやって現場の技能者の方々や下請で(CCUSを)使っていただいている事業者の方々にメリットを実感してもらえるシステムにするかが待ったなしの課題」と語り、建設業で働く全ての人が使わないと進まないシステムのため、処遇改善に結び付けるよう全力で当たっていく考えを示した。

 その上で西山課長は「私どもが正面からぶつかっていかなければならいのは労務単価とCCUSとの関連」と述べ、CCUSを活用している人々の労務費調査を続けながら「CCUSの利用やレベル、評価と労務単価をどのような形で関連付けていくのかを考えていく局面に来ている」と話した。

経審でCCUS評価へ各団体の取り組み状況

 14日の県建設キャリアアップシステム官民連絡協議会では、各団体がCCUSの取り組み状況を報告した。国交省は経審でCCUSの現場導入元請企業に加点評価するための審議が行われていることを紹介した。

 国交省はCCUSの利用状況に関し、2月末時点で技能者登録が83万4150人、事業者登録が16万1989社に達していることを報告。一方で、登録率は完工高が10億~300億円未満の元請企業で64%、10億円未満で36%、10億~300億円未満の設備・ハウスメーカー等で43%、10億円未満で24%に留まっている。

 CCUS導入に対するインセンティブに関しては、工事成績や総合評価の加点対象とする発注機関が増えていることや、退職金制度(建退共)との連携に加え、経審での評価が検討されていることを紹介。技能者の処遇改善に向けては、技能・経験に応じた労務費の見積もり尊重などにより、賃金上昇につなげたいとしている。

 経審での評価に関しては、中央建設業審議会において、直近の事業年度で施工した全ての建設工事でCCUS上の現場登録やカードリーダー設置を行っている企業に15点(公共工事のみは10点)を加点する形で議論されていることを伝えた。

 県は本県のCCUS登録状況に関し、1月末時点で事業者登録が3681者、技能者登録が2万6333人となり、前年同月比で約1・6倍となったことを紹介。実際に現場で活用されることが重要なため、新年度は総合評価での加点に一本化し、これまでの企業評価での加点に加え、処遇改善の項目で当該発注工事におけるCCUSの活用提案にも加点する方針を示した。

 活用提案は工事着手前に事業者が行うため、工事竣工時に履行確認し、達成できなかった場合は工事成績評定で減点する。評価基準は30日以上のICカード読み取りとなる。

 仙台市は、21年度の発注工事から企業の評価項目に建設キャリアアップの活用状況を追加。評価基準は元請業者の事業者登録の有無。評価点は建築工事が1点で、土木・電気・機械工事が0・5点。建築工事は他の工種に比べ下請契約の業者数が増えるなど事業効果が高いと判断し、配点を引き上げている。

 本年度はこの評価項目(5000万円以上の工事)で150件程度発注し、落札業者の8割弱がCCUSを活用していることを紹介。今後は必要に応じて現場での利用促進の観点から段階的に評価基準を改正するとした。

 県建産連の取り組みでは、CCUSに関する説明会の開催や普及啓発ポスターの配布、事業者の登録支援などに努めていることを報告。宮建協では会員企業の7割弱が事業者登録しているものの、協力会社や専門工事業会社、技能者にはまだまだ浸透を図る必要があるため、今後そういった方面への浸透に力を注ぐ考え。

 勤労者退職金共済機構は、建退共の電子申請方式が始まったことを報告。これは証紙に代わる「退職金ポイント」という電子ポイントを事前に購入し、被共済者である労働者の就労日数を登録した「就労実績ファイル」で個々の被共済者の掛金として充当する仕組み。

 CCUSとの連携では、カードタッチで蓄積された就労履歴のデータをダウロードすると自動的に就労実績ツールで情報を読み込むようにする。CCUSのデータを通じて元請や一次下請以下の就労実績情報を一括してまとめ建退共の方へ送ることができるようになる。今夏ごろに供用開始できるよう準備を進めている。

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