28年度に全面開園 長寿命化対策で45億円増額(常陸海浜公園)
[2022/3/10 茨城版]
国土交通省国営常陸海浜公園事務所が進める公園事業は、昨年10月に開かれた第3回関東地方整備局事業評価監視委員会において、継続とする対応方針が了承された。事業費では、多客・バリアフリーやインバウンド対応、未開園区域(樹林エリア等)の整備、長寿命化対策などで総額45億円を追加して約488億円とするほか、事業期間も5年延長し、28年度の全面開園を目指すとした。
ひたち海浜公園は、ひたちなか地区にあった米軍の水戸対地射爆撃場跡が1973年に日本に返還されたことなど受け、79年から事業に着手した。81年に国営公園用地として350haの処理が決定されたあと、83年に基本計画を定め、翌84年から都市公園として着工した。91年に70haを第1期分として開園したあとは順次拡張を続け、これまでに計215.2haが開園している。
現在では、ネモフィラやコキアなどの魅力あるコンテンツや、インバウンドの増加などによる入園者拡大も続き、10年度の約146万人から、19年度は約229万人と約1.5倍に増加。その後は、新型コロナウイルスの影響から一時的に入園者数が減少している。
敷地の南側にあるプレジャーガーデンエリアには18年度からPFI事業が導入され、民間活力を活用した運営が行われている。PFIについては、東部海岸側に位置し、貴重な砂丘地形やそこに生育する植物等を有する砂丘エリアについても今後導入予定があり、昨年から行われている対話型市場調査の結果が近く公表されるほか、同事務所では、PFIの公募指針などの策定に向けたプロポーザルの手続きを進めている。
このような社会情勢などの変化を受けて今回、事業費の増額や事業期間の延長を行った。約45億円を増額する事業費のうち、多客・バリアフリーやインバウンド対応には24億円を投じる。この多客・バリアフリー対応では、地元からの要望などを受け、トイレ・給水管の整備(6億円)や園路増設(6億円)、受変電設備の更新(4億円)、防災・防犯・迷子対策の設備整備(7億円)などを行う。また、インバウンドの急増を受け、案内標識などを多言語化(5言語)に1億円を投じる。
樹林エリアなどの未開園区域の整備には6億円を投じる。マツノザイセンチュウによる松枯れで松林の衰退が進行し、アカマツと共生する絶滅危惧種のオオウメガサソウの群生衰退も進行していることから、松枯れ対策や基盤整備に5億円を見込むほか、海浜部では希少な海浜生物の保護や安全管理のため管理用園路、柵の設置などに1億円を投じる。
このほか、プレジャーガーデンのPFI事業導入にあたり、安全規準に不適合となった国設置の遊具の撤去・跡地の整地やトイレ改修に6億円、長寿命化計画に基づく再整備に9億円を投じる。
事業期間は5年間延長して28年度までとし、北側にある樹林エリアを中心に整備を進める。この樹林エリアでは、希少種保護活動や樹林地散策に併用する園路、休憩施設の整備により新たな魅力を創出する計画で、トイレや休憩所、園路広場や植栽、ライフライン、松枯れ対策を進めながら24年度末には南側を先行開園したあと、28年度の全面開園を目指すとした。
今回の事業評価監視委員会では、委員から「常陸海浜公園のような非常に大規模な公園で大規模公園費用対効果分析手法マニュアルを適用する場合には、マニュアルで示す競合公園の設定方法などが妥当であるか検証すべき」などの意見や、「公園内の一部でPFI事業を行う場合、民間投資とその効果をどうB/Cに組み込むか検討すべき」などの意見が出された。