建設費は約230億円 最終処分場 基本計画策定で検討会

[2022/2/8 茨城版]
 県資源循環推進課は6日、第4回新産業廃棄物最終処分場基本計画策定委員会(委員長・大迫政浩国立環境研究所資源循環領域長)をウェブ形式で開催した。4回目となる今回は、概算建設コストや見直し箇所の確認などについて検討を行った。このうち、建設コストについては、最終処分場や浸出処理施設などを含めて合計で約230億円になると試算。年度内にも基本計画を策定し、来年度の用地取得や基本設計につなげていく。

 この事業は県関与産業廃棄物最終処分場エコフロンティアかさまの継続施設として、新たな産業廃棄物最終処分場を日立市諏訪町地内に整備するもの。本県の産業廃棄物最終処分場は04年度以降、新規の設置許可がない状況にある。さらに、エコフロンティアかさまの埋立進捗は、20年度末で約75%まで進み、近い将来にひっ迫することは必至となっている。そこで、県は新たな産業廃棄物最終処分場を整備するために、基本計画に着手。なお、同業務はパシフィックコンサルタンツ(東京都千代田)が担当している。

 これまでの検討から、埋立地の規模は約9.8ha、容量は約244万立方mとし、オープン型処理場で整備する。施設の受入計画量は年間12.9万tから15.2万tに設定し、埋立期間は20年から23年間程度を予定。敷地内には埋立地に加えて、出水処理施設や防災調整池、管理棟、計量棟、展開検査場、環境学習施設などを配置する。浸出水処理施設の処理規模は1日あたり400立方m、調整槽容量は3万0330立方mとなる。

 今回は、水文の追加調査結果や概算建設コスト、これまでの検討会での内容を踏まえた見直し箇所の確認などの検討を行った。

 このうち、概算建設コストについては、既往文献などで示される費用関数や他の事例を参考にしながら、採用した各種安全対策については個々に積み上げ積算し、さらに、安全側の数値を採用することになった。その結果、概算建設コストは約230億円に設定。整備する施設としては、▽最終処分場▽浸出水処理施設(含む浸出水調整槽)▽雨水処理施設▽管理棟、環境学習施設──となる。

 積算根拠を施設別にみると、最終処分場では、既往文献で示されている費用関数を用いて概算工事費を算出。さらに、多重遮水構造と電気式漏水検知システムの採用なども考慮した。また、基準省令上の二重の遮水シートに加え、新素材であるベントナイト砕石などの多重遮水構造、漏水検知システムによる安全対策を加算している。このように通常の最終処分場よりも安全対策を充実させたため、それに伴い事業費も当初の想定よりも大きくなったという。

 浸出水処理施設については、ほかの事例や既往文献で示された費用関数を用いて算出した。さらに、浸出水調整槽の安全側での容量確保分も加算している。防水処理施設については、費用関数を用いて算出するほか、防災調整池の安全側での容量確保分を加算。管理棟と環境学習施設は、建築構造物の延床面積1平方mあたりの単価に基づいて算出した。

 また、検討項目の見直しでは、施設計画の中で、オープン型処分場に関する説明を追加したほか、複合災害時の対応、工事期間中の交通安全対策として、埋立地造成の際の切盛りの工夫による工事車両台数の削減対策や交通安全対策などを追記した。

 委員からは、最終処分場内に設置する環境学習施設の方向性について意見が出た。それによると、単なる学習施設ではなく、日立市民らが参加し、環境学習をベースにしつつ、地域が活性化する内容を盛り込んだ、県北地域のローカルSDGsの実現に寄与するような施設になることを提案した。

 これに対して、事務局は持続可能や脱炭素化などの視点を盛り込んだ学習施設にする方向性を提示。具体的な内容については、来年度に日立市と協議して決定していくという。供用開始時期は、最終処分場の完成に合わせる見通しだ。

 大迫委員長はこれまでの検討内容を振り返り、「最終処分場は産業活動を支えるインフラとして欠かせないものだが、立地場所はもとより、県全体で理解することが必要になる。これまで検討してきた基本計画のもとで整備することで、安全・安心な施設ができると確信している」と述べた。また、基本理念に安全・安心に加え、強靭性や自然共生、施設運営、地域社会との共生なども盛り込んだことに触れ、「多様化する時代の中、県民につくってよかったと思われる施設になることを期待している」と述べた。

 県からは県民生活環境部の矢口和博部長が関係各位の尽力に感謝の意を表したうえで、「皆さまの意見を踏まえ、安全を最優先とした信頼性の高い施設の実現に向け進めていきたい。また、本計画を基本とした処分場整備により、県全体の持続可能な社会づくりの実現に取り組んでいく」と語った。

 今後のスケジュールは、2月中に意見をまとめ、計画案を取りまとめていく。3月には日立市民報告会を開催し、年度内にも基本計画を策定する見通しとなっている。

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