地域の未来を支える建設業 通学路の安全対策や歩道整備を推進

[2022/01/01 栃木版]

 千葉県八街市で昨年6月、下校途中の小学校児童の列にトラックが衝突し、男女5人が死傷する痛ましい事故が発生した。事故の直接の原因は運転手の男性の飲酒運転によるものだが、事故現場となった市道は小学生が利用する通学路であるにもかかわらず、歩道が無くガードレールや路側帯も未整備だった。

 このため過去には、PTAから市に現場の道路へガードレールを設置するよう要望されていたが、市は当時、幅員の確保のために道路の拡張が必要となり、用地買収や建物移転などに多額の費用を要することから、その対応を先送りしていた。

 この事故を受け、政府は交通安全対策に関する関係閣僚会議を開き、交通安全対策を強化・検証するよう指示。八街市も急ぎ安全対策工事を実施するとともに、歩道の設置も検討している。国交省は防災・減災対策等強化事業推進費の公共交通安全対策事業を活用して、この事故と類似した事故の発生が想定される箇所で事故の再発防止対策を図るため、防護柵設置などの整備に事業費を配分している。

 本県ではこれまでも、通学路や小学校から1km圏内で沿道に人家が多く存在する道路など、約1400kmを優先区間として歩道整備を重点的に進めてきており、これまでに87%の区間の歩道整備を完了させている。しかしながら、県内で児童・生徒が関係した交通事故が2019年度には293件発生し349人が被害に遭うなど、依然として歩道整備の必要がある箇所が数多く残っている。

 道路整備促進期成同盟会栃木県協議会が主催し、各市町で行政と住民、関係者が道路整備の必要性について共通認識を図る「とちぎの道現場検証」で、21年度に検証した箇所は34カ所。このうち交通安全対策は25カ所と、依然としてその多くを占めている。また、県議会県土整備委員会が25市町から受けた重点要望箇所全25カ所のうち、4割にあたる10カ所が通学路の歩道整備の要望だった。

 県は昨年度末に策定した県土づくりプラン2021において、優先区間のうち歩道が未整備で、生活道路または未就学児の移動経路と重複する箇所を重点的に整備していくこととした。それによると、25年度の目標値として通学路などの歩道整備延長は75km、交通安全対策を実施する生活道路対策エリア数は181カ所などと定めている。

 県土整備部は本年度、「誰もが安心して利用できる道づくり」を重点施策に位置付け、益子町の県道黒田市塙真岡線や那須烏山市の県道宇都宮那須烏山線などで通学路の歩道整備を推進している。また、八街市の事故の後に編成した9月補正予算では、県単公共事業費のうち2億円を通学路の交通安全対策に配分し、通学路で防護柵や区画線の設置など即効性のある交通安全対策を実施している。

 国ではこのほど成立した本年度の補正予算のうち、国交省関係で「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」に関連し、通学路の交通安全対策に500億円を予算化。子どもたちの安全な通行の確保に向けて道路交通環境の整備を推進するため、ソフト対策の強化と一体となった通学路の交通安全対策を推進する。さらに新年度予算案には、自治体のハード対策を加速化させるため、通学路の安全確保に限定した新たな補助制度を創設して500億円を計上することが決まった。

 このように、国をはじめ県、市町が事故の再発防止に向けて通学路の安全確保に鋭意取り組んでいる中で、実際にそのハード対策を担う建設業者や建設コンサルタント業者への期待はより一層高まっている。地域の未来を担っていく子どもたちの健やかな成長はもとより、高齢者や障害者なども含めて誰もが安心して活動の場を広げていけるよう、建設関連業者がその足元から下支えしていく。

(上段) 上三川町町道1-12号線で実施した「とちぎの道現場検証」で、小学生の通学の状況を検証している様子。この路線は23~24年度で拡幅改良を計画するなど、県や市町は通学路の安全確保に向けて鋭意取り組んでいるが、危険な状況で毎日通学している児童・生徒も依然として数多く存在している。市町の県に対する重点要望の多くを歩道整備が占めるなど、地域の通学路整備を求める声は多い。
(下段) 益子町七井地内の県道黒田市塙真岡線で実施している道路改良工事の様子。県土整備部は「誰もが安心して利用できる道づくり」を重点施策に位置付け、通学路の歩道整備を推進している。

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