渡良瀬川森林計画の樹立へ 県森林審議会 「計画通り可」と答申
[2021/12/04 栃木版]
県森林審議会(会長・大久保達弘宇都宮大学教授)はこのほど、県公館で本年度第2回の審議会を開催した。県環境森林部が諮問した「渡良瀬川地域森林計画の樹立」と「那珂川地域森林計画および鬼怒川地域森林計画の変更」について意見を聴取し、いずれも「計画通り可」とする旨を答申した。渡良瀬川地域森林計画は、計画の方向性に主伐や搬出間伐の促進、路網整備、スマート林業の導入推進などを位置付け、那珂川・鬼怒川地域森林計画では林道等整備計画について改良・舗装を重点的に実施するよう変更している。今後は大臣協議を経て、12月にも地域森林計画の樹立・変更を行う。また2022年1月からは、市町でも森林整備計画の作成および樹立・変更を行う。
那珂川、鬼怒川は林道計画変更
国が6月に森林・林業基本計画の策定と全国森林計画の変更を行ったことから、県もこれを受けて、既存の那珂川地域森林計画と鬼怒川地域森林計画の変更、および新たに渡良瀬川地域森林計画の策定を行う。本年7月の第1回審議会では、渡良瀬川地域を取り巻く課題や6月に閣議決定された国の森林林業基本計画を踏まえて、県が目指すべき地域森林計画の方向性を議論していた。
議事に先立ち、県森林環境部の鈴木英樹部長は「前回の審議会でいただいた意見をもとに、年末の樹立を予定する渡良瀬川地域森林計画と、変更を予定する那珂川地域森林計画および鬼怒川地域森林計画の素案を作成したのでご審議賜りたい」とあいさつし、委員に意見や助言を求めた。
渡良瀬川地域森林計画は、県の分野別計画「とちぎ森林創生ビジョン」の目指す方向性や施策内容、計画区の特性などを反映させ、市町村森林整備計画の指針となる計画とする。計画期間は22~31年度で、計画区は足利市・栃木市・佐野市・鹿沼市・小山市・下野市・壬生町・野木町の6市2町となっている。
計画の方向性は、主伐や搬出間伐の促進や路網整備・搬出作業の機械化の促進、スマート林業の導入推進、森林施業の集約化と経営規模の拡大、森林の公益的機能の維持増進、適切な獣害防止対策などを位置付ける。
主な計画事項のうち、主伐や搬出間伐の促進では伐採計画に前期(22~26年度)104万立方m、後期(27~31年度)124万5000立方mの、総数228万5000立方mを計画。全国計画(全国森林計画における流域別の計画量)は191万4000立方mで、県計画は国計画を19%上回る。
県計画の内訳は、主伐が前期45万5000立方m、後期43万立方mの計88万5000立方m、間伐が前期58万5000立方m、後期81万5000立方mの計140万立方mとなっている。
また間伐面積は、県計画が1万7460ha(前期7490ha、後期9970ha)で、全国計画の1万8619haに対し6%下回る。造林計画は、県計画が2230ha(前期1130ha、後期1100ha)で、全国計画の2080haに対し7%上回る。
路網整備は、林道・林業専用道・森林作業道を効率よく組み合わせて整備する。林業機械などの作業ポイントの適切な配置や土場の確保により、林内からの木材搬出や大型車両による輸送効率を高める。
スマート林業は、森林クラウドシステムを活用した森林情報の高度利用など積極的に進めるとともに、これからの林業を担う人材の確保・育成を図る。さらに、意欲の森林所有者の共同による属地的施業や、林業事業体などによる積極的な長期受委託契約に基づく森林経営計画作成を促進する。
森林の公益的機能の維持増進では、森林の有する機能毎に整備および保全の基本方針を定めるとともに、主伐に際しては大雨や短時間豪雨の発生頻度が増加していることから、「主伐時における伐採・搬出指針」を踏まえた方法とする。獣害の多い地域では、忌避剤の散布や防鹿柵・筒、獣害防止ネットの設置などを行う。
那珂川地域森林計画(計画期間21~30年度)の変更は、個別計画のうち林道等整備計画について変更。走行車両の大型化や豪雨の増加傾向などに対応した林道整備を行うため、改良・舗装を重点的に実施する。
変更により、林道などの改良は前期(21~25年度)3万2830m、後期(26~30年度)3万6750mの総数6万9580mを、舗装は前期3万5460m、後期5万7100mの総数9万2560mを計画している。
なお、開設は前期8020m、後期1万3850mの、総数2万1870mを計画。全国計画(全国森林計画における流域別の計画量)は2万0667mで、県計画は国計画を6%上回る。
鬼怒川地域森林計画(計画期間19~29年度)の変更も同様に、個別計画のうち林道等整備計画について変更し、改良・舗装を重点的に実施する。改良は前期(21~25年度)1万6430m、後期(26~30年度)1万2130mの総数2万8560mを、舗装は前期1万3704m、後期2万0615mの総数3万4319mを想定している。
開設は前期3700m、後期6210mの総数9910mとする。全国計画は8700mで、県計画は国計画を14%上回る。
このほか両計画とも、他の地域森林計画の内容にあわせて追記する事項や、全国森林計画の変更にあわせて追記する事項を追加。治山事業で緊急かつ計画的な実施を必要とする荒廃地などを対象とした取り組み方針などについて追記している。
県は今回の森林審議会で計画案の意見を聴取した後、地域森林計画案の大臣協議を経て、12月にも地域森林計画の樹立・変更を行い公表する考え。その後、農林水産大臣への報告や関係市町村長への通知を経て、22年1月から3月にかけて市町村森林計画の作成および樹立・変更を行う予定としている。