全建ブロック会議 地方の実情、国に訴え ICT施工対応や強靭化予算確保など

[2021/10/08 栃木版]
 全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)と、国土交通省や各自治体担当者による2021年度の地方別ブロック会議が5日、関東甲信越地区を皮切りに始まった。1都9県の建設業協会で構成する関東甲信越地方建設業協会長会(会長・浅野正一山梨県協会長)は、会場となった都内の経団連会館で、本県協会からの要望であるICT施工の対応をはじめ、国土強靭化加速化対策に伴う予算や地域建設業の受注機会の確保などを切に訴えた。

 議事に先立ち、来賓として佐藤信秋、足立敏之両参議院議員があいさつ。岸田文雄新総理による内閣が4日に発足したことや、全国で相次ぐ自然災害の対応にも触れながら、地域建設業が継続・発展していけるための施策を政府に訴えていくとエールを贈った。

 議事冒頭に浅野会長は、コロナ禍で開催が危ぶまれたものの、対面形式で意見交換ができる同会議の開催にこぎつけられたことについて関係者に謝意を示して、その成果に期待を込めた。

 特に、担い手確保については「一刻の猶予もない」と喫緊の対策を訴え、課題は多いものの、若者が将来に不安のない産業となるよう、国交省などに対し「地方の意見をぜひ受け止めて所見を伺いたい」と直接呼びかけるなどした。

 これを受けて、国交省から長橋和久不動産・建設経済局長と廣瀬昌由大臣官房技術審議官、関東地方整備局の若林伸幸局長がそれぞれあいさつ。このうち若林局長は、地域建設業者の受注機会確保について、毎年積極的に取り組み方を検討していることを強調。国として地域建設業の発展と、質の高いインフラ整備を進めていることに理解を求めるなどした。

 全建の奥村会長は、官民が集う同会議の開催意義を強調。建設業が地域の守り手としての使命とともに、コロナ後の「地域の作り手」としても継続できる産業として発展していけるような施策を要望するなどした。

 議事では、各協会が持ち寄った要望事項について各協会が説明すると、国交省側がその場でそれぞれ回答する以外に、その場での質問にも回答するなど、実の入ったやりとりが展開された。

 以下、各協会の要望事項は次の通り。
▽強靭化5か年加速化対策予算の当初予算特別枠での増額確保と地域建設業の受注機会確保について(千葉県)
▽直轄工事への新規参入の促進について(茨城県)
▽地域版の公共事業中長期計画の策定について(新潟県)
▽地方建設会社の収益向上のための配慮について(山梨県)
▽建設工事標準請負契約約款第30条(不可抗力による損害)の改善について(長野県)
▽建設業従事者のエッセンシャルワーカーの認定について(群馬県)
▽市町村の制度・運用改善の促進(神奈川県)
▽「働き方改革」の推進について(埼玉県)
▽小規模工事におけるICT施工の対応について(栃木県)
▽安定的・持続的な道路除雪体制の確保について(新潟県)
▽災害時における応急活動に対する安全確保の強化(神奈川県)
【栃木県建設業協会の要望事項要旨】

 地域建設業が「地域の守り手・創り手」として社会的使命を果たしていくため、i-Constructionなどの生産性向上による経営基盤の強化は避けて通れず、当協会におきましても、ICT施工の取り組みや技術者の育成を積極的に推進しているところであります。

 この結果、より多くの企業が施工実績を有するようになってきたところですが、一方でICT施工を実施した社からは▽事業規模の割には、施工するまでのデータ作成にかなりの時間と費用を要する▽設備投資(外注、レンタルリースを含む)に多額の費用を要する▽機械器具等のリース手配では、都合つかない場合や料金が割高になる場合がある▽ICT施工の範囲が限られており多工種工事には不向きである-などといった理由で、地方の小規模工事ではかえって非効率的との意見も寄せられており、ICT施工のさらなる拡大を阻む要因の一つとなっております。

 つきましては、これまでの施工実績などを検証し、小規模工事のICT施工における課題の改善や工事規模に見合ったICTの採用などについて、ご検討下さるよう要望いたします。

 また、建設工事の生産性向上を図るためには、ICT施工の活用を図る一方で、着工から竣工まで円滑に施工できる環境を整えることが重要でありますので、発注者におかれましても、現場に即した具体的な設計積算、関係者との十分な調整、迅速な変更対応など工事工程に影響を及ぼさないような取り組みをお願いいたします。

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