建設業と協力しながら発展 (佐倉市・西田三十五市長インタビュー)

[2021/7/30 千葉坂]

佐倉市・西田 三十五市長

佐倉市・西田 三十五市長

新図書館「佐倉ならでは」の整備進む

 佐倉城址など歴史を感じさせる情緒を色濃く残す佐倉市。市長に就いてから2年が経った中、新たなアイデアを盛り込み整備を進める(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設だけでなく、台風・大雨による被害からの災害復旧や、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、多くの人々と力を合わせ『オール佐倉』で奔走する西田三十五市長に、今後の展望を尋ねた。

――最初に、市を取り巻く環境や現状から

 「本市は、京成線とJRの鉄道2路線により都心まで約60分、成田国際空港と千葉市へはそれぞれ約20分と、周辺都市へのアクセス性に優れた立地条件にあります。市内には、県で唯一『日本百名城』に選ばれた佐倉城址や、城下町の面影が残る日本遺産認定の街並み、国立歴史民俗博物館、武家屋敷、印旛沼に代表される自然景観、サクラやコスモスなど四季折々の花を楽しむイベントなど、身近な観光『マイクロツーリズム』に適した観光資源が豊富にあり、コロナ禍にあって注目を集めています」

――市が抱えている課題や問題点について

 「人口は、2011年の約17万8000人をピークに減少傾向となっており、人口減少や少子高齢化の進行による社会保障経費の増加が課題として挙げられます。また、昭和40年代以降に整備された道路・上下水道等のインフラ施設が老朽化し、今後も適切に維持管理・更新していくために、多額の費用が必要となっています。加えて、一昨年の台風・大雨による自然災害や、新型コロナウイルス感染症など、適切かつ迅速に対応していかなければならない課題があります」

――改善するための対策や、今後の施策・方針について

 「先ほど述べた課題により、財政状況はさらに厳しくなることが見込まれています。必要な行政サービスを保ちながら、市の将来都市像を実現していくためには、戦略的にまちづくりを進めていく必要があります。そこで、第5次総合計画・前期基本計画に掲げた『市民協働の加速化、持続可能なまちづくり』と『健康寿命の延伸・生涯活躍の場の創出』『子育て世代の流入・定住促進、子育て支援施策等の維持拡充』『計画的な施設・インフラ整備の推進、持続可能な財政運営』の重点目標4つに沿って、各施策に取り組んでいきます」

――その中でも、建設関連についてうかがっていきたい

 「地域の活性化・生涯活躍の場の創出として、現在、工事を進めている『(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設』は、単に図書館を建設するだけでなく、子育てに関する相談機能や、自習スペースの確保、城下町佐倉にふさわしい歴史史料を充実させるほか、佐倉の秋祭り等の文化的な行事と連携し、まちの活性化にも貢献できる施設となっています」
 「また、この施設を起点として、地元の皆さんや、佐倉を訪れる皆さんが『歩いて佐倉を楽しむ』機会になることを期待しています。佐倉は、かつて城下町だったこともあり、クランク状の道路が多いのが特徴であることから、建物にあわせて周囲の歩道なども整備しており、22年度のオープンに向けて魅力あふれる図書館にしていきたいと思います」

――どのような機能が備えられるのか

 「新たな図書館は設計上、地下1階・地上2階建ての構造となることから、暗いイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、実際を想定する姿は3階建てといって差支えない施設となる上に、北側テラスからの光を最大限取り入れることで、とても明るい建物になる見通しです」
 「また景観の面では、墨色の磁器質ボーダータイルやアルミ鋳物パネルを採用しており、手づくり感のある風合いと恒久性を大切にしています。内部の壁には、本のレビューなどを貼り付けられるようにし、床にも江戸期における佐倉新町の古地図をはめ込むなど、文献による歴史探訪や街歩きを促す建築的要素をちりばめています」
 「現在、応募いただいた愛称の中から、市内小中学校に在籍する児童生徒の皆さんに投票を行っていただき、その投票結果をもとに、愛称を決定する作業を進めています。多くの方々に親しみを持って利用していただけるよう期待しております」

――地元の建設業関連団体らとの協力関係や認識・あり方について

 「インフラ施設の維持管理・改修は本市をはじめとする多くの自治体が直面している課題です。市では公共施設等総合管理計画と国土強靭化地域計画を策定し、インフラ施設の整備と改修等に取り組んでいます。こうした事業を着実かつスピード感をもって推進していく上で、地元建設業の協力は欠かせないものと認識しています」
 「また、市内の建設業者、造園業者などで組織される『佐倉市建設業防災協会』をはじめ、市内土木事業者と災害時応援協定を締結し、台風や地震などの自然災害による道路冠水や倒木などの被害へ大変重要な役割を担っていただいています」
 「私が特に感動したのは、いまだ記憶に新しい『令和元年房総半島台風』による大雨の際に、市民の安全確保と早期の災害復旧のため、昼夜を問わず倒木処理や道路復旧作業などに尽力をいただいたことです。この場を借りて、あらためて感謝いたします。今後も、市民の生命、財産を守る上で、建設業者との連携は不可欠であり、日ごろからの関係構築を重視し、ともに発展していきたいと考えています」

――抱負・今後で取り組みを強化したいこと、展望を

 「私が市長に就任してから早2年が経過しました。この間、台風や大雨、そしてコロナと、平和な日常を脅かす未曽有の出来事に見舞われてきましたが、その中にあっても、市民の命と生活を守ることを最優先に、誠心誠意、市政運営に取り組んできました」
 「今後も、市民が1日も早く元の生活を取り戻せるように、行政・市民・事業者が『オール佐倉』で力を合わせながらこの難局を乗り越えていきます。また、アフターコロナを見据えた戦略的な施策を展開し、『住みやすい・住み続けたい』と思える、『佐倉らしさ』を発信できるよう、様々な資源を活用したまちづくりを進めていきます」

◆市長プロフィル◆
 (にした・さんご)1964年10月生まれの56歳。佐倉市臼井出身。拓殖大学の政経学部卒業後は、91年4月から2003年3月まで佐倉市議会議員、同年4月から19年まで千葉県議会議員をそれぞれ務め、同年4月の市長選で初当選し現職に就く。様々なスポーツへ果敢に挑戦する一方で、学生時代は応援団に所属し、団長として活躍。自身の原点だと語る応援では「勝敗問わず、全ての選手が力を出せるようエールを送る」ことを信条にしている。

(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設・外観パース

(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設・外観パース

「(仮称)佐倉図書館等新町活性化複合施設」は、2022年の施設完成と23年オープンを目指して整備中の新たな建物。図書館や子育て支援・展示・人権啓発コーナー・(仮称)佐倉を学ぶエリア、カフェなどの用途を備えており、構造・規模はRC一部S造地下1・地上2階建て延べ約3750平方m。市では、老朽化した佐倉図書館の建て替えを計画。「佐倉ならでは」の学習や相談、情報発信の拠点となる複合施設を整備するとし、17~18年に基本構想・計画、18~20年に基本・実施設計、20年11月上旬に着工と推進してきた経緯があり、22年8月下旬の工事完了と、同年9月~23年2月の準備期間(秋祭りに一部利用)を経た上で、23年3月の開館を予定している。

建築工事を前田建設工業(千葉営業所:千葉市中央区)、機械設備工事を大成温調・光陽特定建設工事共同企業体(JV)、電気設備工事を東照電気(佐倉市)、基本・実施設計を岡田新一設計事務所(東京都文京区)、基本構想・計画を図書館総合研究所(東京都文京区)が、それぞれ担当。「歴史のまち」を象徴する旧城下町の保全や、地域を活性化する拠点として期待されている。

建築の計画上では[1]佐倉らしさの表現を佐倉新町活性化につなげる[2]土地の高低差を活用した断面構成[3]屋内と屋外空間の一体利用の3点を特色として打ち出している。図書館の蔵書冊数は、開架9万冊・閉架7万冊の計16万冊となっている。

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