「有事の際に駆け付けたい」(デベロップ(市川市)菅原淳取締役副社長インタビュー)

[2021/7/9 千葉版]

菅原淳取締役副社長

菅原淳取締役副社長

 海上輸送用コンテナに似せたコンテナ型モジュールなどにより公に資する事業を推進するデベロップ(市川市、岡村健史代表取締役社長)は、四街道市らとの「災害時における移動式宿泊施設等の提供に関する協定」を締結した。有事の際に被災地等へ駆け付けるコンテナ型モジュールを活用したレスキューホテル事業「HOTEL R9 The Yard」(R9ホテル)などに積極的に取り組む菅原淳取締役副社長に、その沿革や展望について聞いた。

レスキューホテルで地域貢献

──貴社の沿革などから、うかがう

 「海上輸送用コンテナを転用し違法性を帯びたトランクルームが全国で展開されていることに疑問を覚え、コンテナ型モジュールによる『建築ユニット』を活用した、コンプライアンス、並びに、新規性ないし進歩性を意識した建築商材や動く建築物等を独自に開発するとともに、その販売と運用業を確立するため創業、会社設立に至った」

──設立当初はどのような事業展開を

 「主要事業は建設業と不動産業を含むコンテナ型モジュール建築事業とするが、2011年7月ごろに欧州で広がっていた再生可能エネルギー活用の動きを受け、国内での事業展開への可能性と必要性を感じ、太陽光発電によるエネルギー事業へ参入」

 「これと同時に、その親和性が高いコンテナ型モジュール建築事業と組み合わせる形で展開し、拡大されて来た翌年の7月ごろ、国による固定価格買取制度(FIT)がスタートするなどタイミングが合致し、本事業に選択と集中をすることとなり、その結果として、エネルギー事業は当社の主要事業の1つとなっている」

──エネルギー事業については

 「エネルギー事業は、一時期、規制強化の動きがあり、業界の成長性は鈍化したものと思われていたが、昨今では『カーボンニュートラルやカーボンオフセットに代表される考え方』が、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(社会的責任)投資などの動きと相まって台頭して来たことにより、同業界が再注目され活性化されつつある」

──社会貢献などについては

 「社員の過半数、特にPA(パートアルバイト)の方に至ってはその大多数が、本社のある市川市在住の女性社員らであったことと相まって、働き方改革などの動きに共感しつつ、待機児童問題を抱えていた同市に少しでも貢献したいとの想いからも、子育て支援事業へ参入する運びとなった」

 「さらには、コンテナ型モジュール建築事業は、その後、11年の東日本大震災の教訓が着想となり、もはや『公共事業』と言っても過言ではない『R9ホテル=レスキューホテル事業』へと進化を遂げ、現在に至る」

動くホテル「HOTEL R9 The Yard」シリーズ

動くホテル「HOTEL R9 The Yard」シリーズ

──そんな中、貴社を含めた業界を取り巻く環境について

 「当社のコア事業としては、コンテナ型モジュールに関する建築・不動産事業と、ソーラー発電事業によるエネルギー事業、ホテル事業があるが、エネルギー事業については前述のとおりであるとして、ホテル事業ついては、まず一般的には、新型コロナウイルス感染症の影響により、業界全体として依然苦しい状態だと思われるものの、当社の『レスキューホテル』は、独自の戦略を取っており、それが奏功して、このコロナ禍でも、全体の稼働率が5割を割らないなど奮闘している」

 「最近では、ワクチン接種も進み、ホテル業界全体にも光が見えつつあるので、当社のレスキューホテル事業も、当然その恩恵を受けることとなろうかと思う。また、当社のレスキューホテル事業については、これまで、それを規制する法令の運用が各自治体で統一されていない状況であったものの、そのルール化が進みつつある様に感じる。さらには、この度、当社の同事業がSDGsの事業認定認がされたこともあり、当事業はますます活況になるものと思料する」

──今後目指す目標や、展望について

 「まずは、『レスキューホテル』を、積雪地域を除く、全国の都府県へ展開し、有事の際には、24時間以内に全国に駆け付けられることを目指す」

──あらためて、災害時における移動式宿泊施設等の提供に関する協定締結に関するコメントと、今後の意気込みを

 「この数年で頻発する大雨、台風、地震等の自然災害やウイルスパンデミックなどは、同時多発的に生じ得る問題であるので、『レスキューホテル』を、より多くの都府県の各地方自治体や、中央省庁らと防災協定を締結し、『レスキューホテル』が速やかに被災地等へ駆け付けられるよう、体制を整えたい。また、それらの動きを通して、コロナ収束後の地域創生にも寄与していきたい」

<プロフィル>
(すがわら・あつし)1973年11月生まれの47歳。デベロップ創業時の2007年2月より営業畑の社長を事務面より補佐し、翌年4月には取締役に就任。現在は取締役副社長を務める。企業法務を柱に、不動産、金融、経理・財務経験がバックボーン。宅地建物取引士、特定行政書士、認定IPOプロフェッショナル、及び2級鉄骨製作管理技術者など。趣味は、ダイエットと健康維持の為に20数年ぶりに再開した長距離走。

 

◆「HOTEL R9 The Yard」(ホテル アール ナイン ザ ヤード)シリーズをはじめとしたレスキューホテルは、平時には宿泊施設として利用されるコンテナ客室を、災害時にトラックで被災地へすみやかに移設することにより、地域の暮らしを守る、新たな仕組み。

県内では4月16日に四街道市、同月19日に横芝光町、5月28日に匝瑳市と、それぞれ「災害時における移動式宿泊施設等の提供に関する協定」を締結。また県内外含めた計57の自治体等がレスキューホテル出動要請のための協定を締結しており、6月時点で35拠点・1170室が配備されている。

「レスキューホテル The Yard」や「災害支援型レスキューホテル」「医療従事者支援型レスキューホテル」などは、同社の登録商標としている。

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