全体計画の見直しへ 蛇尾川砂防 本年度は観測機器設置 大田原土木

[2021/07/06 栃木版]
 那須塩原市の一級河川蛇尾川で、整備を進めている総合流域防災事業の全体計画が見直されることとなった。主要地方道西那須野那須線遅沢橋から上流12.7kmを3工区に分け、床固工や帯工による砂防事業を実施してきたもので、洪水時には生産された土砂が偏流・乱流を起こし、整備した構造物が洗掘され浸食。見直しは、土砂の再移動による氾濫被害を抑止し、事業効果の発現に向け再検討する。県大田原土木事務所によると、土砂や洪水による氾濫対策の計画を策定するため、本年度は観測機器の効果的な配置調査と設置工事を行う。

 事業実施地区は、那須野が原扇状地の扇央部分に当たり、洪水時の土砂生産が著しい箇所。最も上流側の1工区は、1988年度から下流への土砂流出を軽減させる砂溜工や河床を安定させる床固工に加え、帯工の施工を進めてきた。

 1工区は主要地方道矢板那須線の塩那橋から上流へ4kmの区間で、同県道から下流4km区間が2工区。現在は2工区から続く、下流側の3工区4.7kmの整備を進めている。

 笹沼地内の3工区は、床固工7基(L184~237m)と帯工8基(L125~213m)に加え、護岸工450mを計画している。本年度は帯工1基の工事を左・右岸に分け、一般競争入札で第2四半期に発注する見通し。詳細設計は、ピーシーレールウェイコンサルタント(宇都宮市)が担当した。

 蛇尾川の砂防事業は、2017年度に基礎地盤コンサルタンツ(東京都江東区)に委託し、全体計画を見直した。19年度には整備中の3工区について、国土防災技術(東京都港区)が担当し計画を変更している。

 今回の見直しは、これまで整備してきた既設の構造物を有効活用するとともに、土砂の生産と流出状況、既設施設に与える影響などを出水期から渇水期にわたり観測。その結果を基に、洪水時における異常洗掘、堆積した土砂による護岸欠損と氾濫現象などのメカニズムを解析する。砂溜工や床固などの既設構造物の補修の必要性とともに、効果的な再配置などを検討していく。

 今後は7~8月を目途に、全体計画策定と合わせ、観測機器設置検討業務を委託する。年内にも設置工事を発注し、22年度には流砂状況の把握に努め、土砂・洪水氾濫対策の全体計画を策定していく見通し。

 砂防事業を実施している下流には、人家805戸に加え、指定避難場所になっている横林と槻沢の各小学校、狩野公民館が立地する。また、緊急輸送道路の東北道が80mに国道4号が1200m、県道矢板那須線と西那須野那須線が各800mと、鉄道はJR東北本線が通っており、これらの施設を保全対象として事業を進めている。

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