防災重点農業用ため池 91カ所の調査を予定 矢板市7池で長寿命化計画も 宇都宮市が茗荷沢ダム下廃止工

[2021/06/15 栃木版]
 県はこのほど、防災重点農業用ため池に係る防災工事等推進計画を策定した。役割分担は、劣化状況評価と地震豪雨耐性評価の調査を市町が行い、防災工事は補助事業要綱で事業主体を県としたものを除き、市町や土地改良区などの管理者が行う。廃止工事も市町や土地改良区等が担当する。2021年度は、県が江戸川温水ため池、宇都宮市が茗荷沢ダム(下)の廃止工事を実施。本年度のため池調査は現在のところ91カ所で予定し、このうち矢板市は7カ所で調査とともに工事に向けた長寿命化計画を策定する。22年度以降も順次、各市町で調査を進めていく。
=9日付3~4面に対象ため池一覧

 国は市町村に対し、20年度補正予算からため池の劣化状況や地震・豪雨耐性評価の調査費を配分。推進計画は劣化状況評価を実施した結果、地震・豪雨耐性評価が未了のため池28カ所と、劣化・地震・豪雨耐性評価のいずれも未了のため池が186カ所となっており、農業用水として利用していないため池を除き、これら214カ所について22年度まで2カ年で調査を実施していく。

 本県の農業用ため池は520カ所あり、このうち、決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設などが存在する218カ所を防災重点農業用ため池に指定している。防災重点ため池の多くは明治時代以前に造成され、近代的な技術基準を満たさないことや、老朽化が進んでいることから推進計画を策定。決壊による水害から県民の生命・財産を守ることを目的に、防災工事の集中的で計画的な推進を図る。地震・豪雨耐性評価は214カ所が調査対象となる。

 宇都宮市では▽初網溜(上下)▽唐沢溜▽大石神溜▽寺内溜▽山口溜(上下)▽打越溜▽雨沼溜-の9カ所について、7月にも調査業務を発注する。21年度当初予算では、ため池調査に6550万円を配分し、22年度も4カ所の調査を予定している。茗荷沢ダム(下)については、第3四半期にも廃止工事を発注するとしている。

 足利市では14カ所の調査を予定しているが、対象箇所は検討中としている。21年度当初予算では1億4000万円を配分しており、調査は9月ごろにも発注する見通し。

 佐野市は7カ所の調査を予定しているが、対象箇所は検討中。21年度当初予算では7000万円を配分し、7~8月ごろに調査業務を発注する予定だ。残り5カ所は、ため池の利用状況や管理状況を見ながら決定する。

 栃木市では▽弁天上溜▽弁天下溜▽鷲巣溜(下)▽星の宮溜(下)▽岩の入溜(下)▽足洗溜▽大柿西溜-の7カ所の調査を8~9月ごろにも発注する予定。調査費は20年度2月補正で4000万円、21年度当初予算で3000万円を配分した。残り18カ所について市は、国からの補助の採択状況や7カ所の調査結果を参考にして調査の実施方法を検討する。

 小山市は対象となっている大沼について、22年度の調査を予定する。大田原市は対象の▽羽田沼▽大谷溜▽桧木沢溜▽台ノ沢溜-の調査を、22年度に行う見通し。

 那須塩原市は、熊久保望田水利組合ため池の調査を近日中にも発注するとしており、21年度当初予算で1000万円を配分した。湯宮溜池は、水が全くない状態のため調査は行わない。

 戸田調整池と赤田調整池は、関東農政局利根川水系土地改良調査管理事務所が管理する施設であり、これら2池の調査については未定となっている。なお、那須塩原市内にある板室ダムについて、利根川水系土地改良調査管理事務所は20年度に耐震性調査を行っており、22年度にも同ダムのゲートの耐震化を行う計画としている。

 真岡市は、南高岡下池と南高岡上池の2カ所の調査を本年度中に行う。21年度当初予算では2000万円を配分した。

 矢板市は▽上堂溜▽町戸溜▽笹戸溜▽新溜▽ネッコ溜▽中沼溜▽弁天溜-の7カ所について本年度中に調査を行い、長寿命化計画を策定する。22年度は、計画を基に補修・修繕などの工事を行う見込みだ。夏にも随意契約で、これら2業務を県土地改良事業団体連合会(宇都宮市)に委託する予定。22年度は残る抜け土溜についても、調査と長寿命化計画の策定を行う見通し。

 さくら市は20年度2月補正で3300万円、21年度当初予算で2000万円を計上し、▽笹山溜池▽向溜▽薮内溜▽鹿子畑池(下)▽鹿子畑池(上)▽新溜-の6カ所について、上半期中に調査業務を発注する。湯前山溜は22年度以降に調査を予定し、沼畑溜は現在のところ未定としている。

 那須烏山市は24カ所が対象で、このうち本年度分の10カ所程度の調査のため、20年度2月補正で9509万円を確保した。残る箇所の調査について市は、補正予算で事業費を計上し本年度中に行いたいとしている。

 茂木町は、ため池1カ所の調査を22年度に予定しているが、対象箇所の詳細は未定としている。

 芳賀町では、唐桶の溜の調査を早ければ7月にも発注する予定で、21年度当初予算には1000万円を配分している。22年度以降は、宮ノ前溜と篠ノ入溜の調査を予定している。

 市貝町は、21年度当初予算で2560万円を計上し、多田羅溜(下)・多田羅溜(上)・坂善溜の3カ所を本年度中に調査する。残る弁天溜と横沢溜は今後検討するという。

 益子町は27カ所が対象となっているが、ハザードマップ作成時に浸水想定区域を見直し、ため池の危険性について県と調整を進めている。本年度に調査は行うが、対象箇所や実施時期などの詳細は未定。事業費は20年度2月補正で1億円、21年度当初予算で1億5100万円を配分している。

 高根沢町は、対象となっている新溜の調査業務を7~8月にも発注する予定で、21年度当初予算には1000万円を配分している。

 那須町の江戸川温水ため池(りんどう湖)は、20年度から県が改修工事を実施している。町は21年度に左内溜の調査を行うとしており、当初予算で650万円の委託料を配分。残る飛倉溜については今後検討する。

 塩谷町は寺小路ため池が対象で、21年度当初予算に650万円を配分し、本年度中に調査を実施する。

 那珂川町は▽大溜▽荷田入溜▽惣内沢水資源治山ダム▽入郷溜▽新溜▽池の入溜-の6カ所を予定するが、調査時期は未定。20年度3月補正では3300万円、21年度6月補正では2800万円を配分している。

 日光市は、大室ダムが防災重点ため池や防災重点農業用ため池に指定されているものの、現在のところ調査の予定はないとしている。

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