110億円で排砂トンネル計画 貯砂ダム嵩上や掘削 川治ダム 上期にプロポで堆砂検討業務 鬼怒川ダム
[2021/06/03 栃木版]
計画量を上回る土砂等が流入する川治ダム(日光市)の堆砂対策として、排砂バイパストンネルの整備を検討していることが分かった。国交省鬼怒川ダム統合管理事務所によると、土砂掘削等による堆砂除去を継続するとともに、既設貯砂ダムの嵩上げに加え、排砂バイパストンネルの新設等効果的で複合的な対策を検討しているとし、上半期にも堆砂の利用の可能性を含め、検討業務を公募型プロポーザル方式で発注する見通しを示した。排砂バイパストンネルの概算延長は5km、全体事業費には110億円を試算している。
川治ダムの総貯水量は8300万立方mで、このうち100年間で試算した死水容量及び堆砂容量700万立方mが確保されている。同ダムは1984年度から管理が開始されているものの、35年後の2019年度には堆砂率が107%に達するなど、すでに容量をオーバーしている。
原因は、ダム貯水湖や流入する一級河川鬼怒川沿川の荒廃した山岳等急斜面から多量の土砂供給が挙げられ、特に平成27年関東・東北豪雨や令和元年東日本台風に代表される、豪雨があった年の堆砂量は飛躍的に多いとした。堆砂は、湖面に近い洪水調節容量内を優先して除去している。
同事務所では、土砂掘削による堆砂対策を継続的に行っているほか、03~10年度にかけては湯西川ダム建設事業に掘削土砂約62万立方mを提供した。湯西川ダム骨材への流用の実績を踏まえ、今年度委託する堆砂検討業務では、現在は埋立処分している掘削土を、コンクリートなどへ再利用する可能性にも言及するという。
川治ダムの貯砂ダムは、ダムに流入する鬼怒川本川に98年度に整備。上流からの土砂をせき止め、溜まった土砂は定期的に除去している。堤高は5mで、対策では土砂を受け止める容量を拡大するため、嵩上げを計画しているもの。
排砂バイパストンネルは、貯砂ダム付近に呑み口を確保し、ダム堤体下流に吐き口を設置する。洪水時には本川の土砂の混入した水をトンネルに誘導し、ダム貯水池を経由しないで堤体下流に流す。呑み口には分派堰を併設し、ゲートを操作することで洪水時の水を誘導するもの。
同事務所では今年度、複合的対策手法の方向付けを行いたい意向で、これら想定される堆砂対策は、19年度から建設技術研究所(東京都中央区)に委託し、整備手法等を検討してきた。