立木伐採や堆積土除去 5カ年強靭化 土砂、洪水氾濫抑止へ 日光砂防

[2021/05/22 栃木版]
 国交省日光砂防事務所は、2020年度補正予算で、5カ年強靭化プロジェクト事業費6億5000万円を配分し、土砂・洪水氾濫リスクの高い地域の軽減・抑止対策を実施する。現在、関東地方整備局主導で、土砂・氾濫要因となる渓流等調査や解析を進めており、優先順位を決め集中的な砂防堰堤等の整備に着手していく見通し。同事務所の村松悦由所長が本紙のインタビューに答えたもので、当面は河床掘削や立木除去による河積断面の確保に加え、既設砂防施設の修繕を行い、機能向上を図っていくとした。 =3面に村松所長インタビュー

 砂防事業はこれまで、土砂流出の激しい渓流など、単一の沢ごとに砂防堰堤を整備する土石流対策を実施してきた。

 しかし、平成29年7月九州北部豪雨や30年7月西日本豪雨では、上流域で斜面崩壊や土石流等により、土砂が多量に生産。複数の渓流から溢れた土石流が下流の河道で河床上昇や河道埋塞を起こし、洪水となって氾濫した土砂が海岸まで押し寄せた。30年7月豪雨の広島県呉市西条地区の大屋大川では、広域に土砂と泥水が氾濫して、厚いところでは2m以上堆積したという。

 単独の渓流から発生する土石流は、急な勾配から緩い勾配に変化する谷出口において、土砂が氾濫・堆積し、概ね土砂災害危険区域内に収まるため、下流域の一定エリアを保全対象として堰堤整備等を実施してきた。

 九州北部や広島の災害では、複数の渓流等から発生した土石流群により谷出口に比べ、下流の勾配の緩い区間の広範なエリアで、土砂と泥水が氾濫した。土砂とともに上流域から流れ出した流木が氾濫する場合もあり、河積算段面を確保する河床掘削や立木除去が被害を軽減する当面の対策に有効とし、河積断面の確保として同プロジェクトに位置付けたもの。

 鬼怒川上流域は、国際観光地「日光」をはじめ、多くの観光客が訪れる一方、近年は平成27年関東・東北豪雨に代表されるよう、過去から災害の多い地域としている。

 鬼怒川上流域緊急5カ年強靭化プロジェクトは、近年の地球温暖化に伴い、激甚化する自然災害に対しては、流域全体を見据えた対策が急務としたもの。同プロジェクトでは、土砂・洪水氾濫開始点や直上流部において、河積断面の確保や既設砂防施設の機能向上による緊急対策に加え、緊急対策完了後は集中的な砂防堰堤等を整備する抜本対策を促進していくことで、地域の安全度を向上させていくとしている。

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