遠隔臨場の導入推進 東北整備局は標準化 復興係数が21年度も継続(国交省ら)
[2020/12/22 宮城版]
国土交通省や東北の被災3県、仙台市らは20日、東北地方整備局で第11回復興加速化会議を開催した。赤羽一嘉国交相は、間接費の割り増しを行う復興係数について、2021年度も継続措置することを表明。今後の取り組みでは、東北地方整備局や東北6県、仙台市が遠隔臨場の導入を推進する。同局は積算基準を整備した上で21年度から調査業務や工事において遠隔臨場の標準化を進める。
会議には国交省や復興庁など国の機関と、宮城、岩手、福島の被災3県や仙台市、東北建設業協会連合会など業関団体の4団体が参加。各県や仙台市が復旧・復興状況を説明した後、国交省が今後の取り組みについて紹介した。
村井嘉浩知事は「復旧・復興の総仕上げに総力を結集していくが、東日本台風の災害復旧工事の本格化も重なり入札不調の増加等が懸念されることから、引き続き残る震災復興関連の工事完遂のため、復興係数などの施工確保対策を継続してほしい」と求めた。
赤羽国交相は、他の知事や郡和子仙台市長からも復興係数の継続を求める声が上がったことを受け、「来年度も復興係数についてはしっかり継続する」と表明。復興歩掛については土工が継続、コンクリート工が0%への変更となったものの、赤羽国交相は「見直し後も受注者が不利益を被ることがないようにフォローする」と約束した。
さらに、赤羽国交相は地元の建設業に対し、「地域の守り手として尽力してもらっている」と感謝を伝え、今後の人材確保・育成が共通テーマであるとし、国交省として「東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト」の推進にしっかり取り組むと意欲を示した。
同プロジェクトの今後の取り組みでは▽施工時期の平準化推進▽統一土曜一斉現場閉所の2021年度の継続実施と、月1定着を目指した取り組み推進▽デジタル化・リモート化の推進▽ウェアラブルカメラ等を活用した遠隔臨場の標準化▽ICT・UAV講習受講者の拡大と学生向け新技術体験学習会の創設──などが打ち出された。
このうち、平準化の推進は、特に市町村の取り組みを強化する必要があるため、優良事例集の周知や、発注者協議会を通じた取り組み内容の説明など、市町村への支援を実施することにした。
今月の発注者協議会では、東北ブロックと県域ごとに平準化率の目標値(5年後)を設定。2024年度の目標値は、東北ブロック、宮城県域とも0.75とした。
ちなみに、平準化率は「4~6月期の平均稼働件数」を「年度の平均稼働件数」で割って求める。数字が1に近いほど平準化が図られているとされる。
デジタル化・リモート化の推進では、2021年度から東北地方整備局の全業務を対象に、ウェブ会議とウェブ検査を標準化する。主な目的は、業務時間の有効活用や、受注者の移動時間・コスト削減、コロナ禍における接触の低減を図ること。
遠隔臨場は、同局や東北6県、仙台市とともに導入を促進することとし、今後、同局は積算基準を作成し、仕様書関係を整備した上で、21年度より遠隔臨場の標準化を進める。同局では20年度に、ウェアラブルカメラ等を活用した遠隔臨場検査を工事78件で試行している。
ICT・UAV講習会は、官民連携による東北土木技術人材育成協議会を設置して開催しており、引き続き市町村の受講者拡大を図る。21年度からは高校生や大学生を対象に「i-Construction新技術体験学習会」(仮称)を創設し、次世代を担う若手技術者の育成を目指す。
20日の会議ではこのほか、東北建設業協会連合会の向井田岳副会長が、復興係数の継続に感謝しつつも、復興予算を計上している関係で東北整備局の当初予算(通常予算)が2012年度より「半減して推移している」と告げ、復興予算が終わる21年度以降の同局の当初予算について「4000億円程度を確保してほしい」と求めた。
会議の総括で赤羽国交相は、復興事業の加速化と、災害を風化させないための伝承活動などに改めて意欲を示すとともに、昨年起きた東日本台風や、防災・減災、国土強靭化のための5カ年加速化対策も踏まえ「必要な予算を講じながら全力で取り組んでいきたい」と述べた。