ため池選定し推進計画 サポートセンター設置へ 県農地整備課
[2020/11/26 栃木版]
県は、防災重点農業用ため池を指定し、早ければ今年度末にも防災工事等推進計画を策定する。防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法が施行されたためで、農水省は防災工事等基本指針を策定し、都道府県に同ため池の指定と推進計画の策定を促した。県農地整備課によると、工事を実施するのは所有者で、市町や土地改良区などと役割分担を調整し、計画の策定と工事における技術的な支援、県土地改良事業団体連合会には必要な協力を求める「ため池サポートセンター」の設置の検討を進めたいとした。
特措法は、防災重点農業用ため池の決壊による水害等から国民の生命と財産を保護することが目的。国は指針の策定とともに、都道府県にはため池の指定と推進計画の策定を義務付け、防災工事に当たっては財政措置を講じるとした。 基本指針では、防災工事を決壊防止が目的とし、廃止工事も含むとした。工事の必要なため池を抽出するため、劣化状況と地震・豪雨耐性の2つの評価について、指定した各ため池を調査しリスト化。防災工事等の優先順位を推進計画に位置付ける予定。劣化状況評価は、防災工事の必要性を判断するため行う劣化による、ため池の決壊の危険性の評価とし、地震・豪雨耐性評価は地震発生や集中豪雨による、ため池の決壊の危険性の評価としている。
県は昨年6月、国の新基準に則して防災重点ため池225カ所(農業用ダム7カ所を含む)を選定し公表。市町が取り組む▽ため池マップの作成と公表▽緊急連絡体制の整備▽浸水想定区域図の公表▽ハザードマップの作成と公表-などを支援してきた。
今回の指定は、農業用に特化したため池が対象。県は7月に法制化した「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」で、保全の必要性の高い118カ所のため池を指定している。
特措法では、推進計画の内容として▽防災工事等の推進に関する基本的方針▽劣化状況評価の実施に関する事項▽地震・豪雨耐性評価の実施に関する事項▽防災工事の実施に関する事項▽市町村との役割分担及び連携に関する事項-を盛り込むとしている。
国は、推進計画の実施に当たり財政上の措置とともに、地方債で特別に配慮するとした。特措法の失効は2030年度末。推進計画は21~30年度まで10年間の対策工事等を盛り込み、半期の5年を目途に見直す予定。
なお、防災重点ため池の再選定は、西日本を襲った平成30年7月豪雨で多くのため池が決壊、被害を深刻化させた教訓を踏まえ、同省が基準を見直したもの。旧基準は、「決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設等が存在し、人的被害を与えるおそれのあるため池」としていたが、新基準では具体的な数値等を明記。[1]ため池から100m未満の浸水区域内に家屋・公共施設等があるもの[2]ため池から100~500mの浸水区域内に家屋・公共施設等があり、かつ貯水量1000立方m以上のもの[3]ため池から500m以上の浸水区域内に家屋・公共施設等があり、かつ貯水量5000立方m以上のもの[4]地形条件や家屋等との位置関係、維持管理の状況から都道府県及び市町村が必要と認めるもの-としている。
本県の農業用ため池数は527カ所。このうち約43%の225カ所が防災重点ため池に再選定された。足利市の55カ所が最も多く、益子町27カ所、栃木市25カ所、那須烏山市24カ所などとなっている。