県下水道室 耐水化計画21年度に策定 検討会が提言、10年程度で
[2020/9/10 栃木版]
近年の豪雨災害を受けて国交省は、下水道施設の浸水対策を含むBCPの見直しと、リスクの高い下水道施設の耐水化について、対策浸水深や対策箇所の優先順位などを明らかにした耐水化計画の策定を、全国の地方公共団体である下水道事業者に要請した。BCPの見直しは今年度、耐水化計画は2021年度までに策定するとし、同省は同年度に前倒しで計画策定を含む設計や工事費の予算化を通知した。県下水道室によると、流域と公共下水道に参画する県と市町に対し、21年度にも計画を策定するよう呼び掛けたとしている。=2~3面に下水道の日特集
下水道BCPの浸水対策を踏まえた見直しと耐水化計画の策定は今年6月、同省が設置した気候変動を踏まえた都市浸水対策に関する検討会が提言をまとめたことによるもの。提言内容によると、被災時のリスクの大きさや設備の重要度に応じて、段階的に耐水化を推進し、災害時における必要な下水道機能を早急に確保すべきとし、今年度から10年程度の中期見通しによる具体的な対策を明示した。
当面は今年度にBCPを見直し、事前対策の実施と応急復旧体制の構築を進め、状況の変化に応じた継続的な見直しと訓練を実施するほか、21年度までに耐水化計画を策定。5年程度の短期的には、高リスクの下水道施設における受変電設備とポンプ設備を耐水化し揚水機能を確保。10年程度の中期的には、余剰汚泥ポンプなどの耐水化を完了し、沈殿機能を確保するとした。
下水道施設の耐水化の早期実施は、本県でも深刻な被害となった東日本台風で、浸水により機能停止となる被害が生じた事態を受けたもの。同省は21年度執行予算調書に耐水化にかかる施設整備費や測量・設計費の計上を要請するとともに、浸水対策に必要な水防資機材等の配備を、社会資本整備総合交付金や防災・安全交付金の効果促進事業で実施可能と地方公共団体に通知している。
県は今年度、流域下水道大岩藤処理区浄化センター(栃木市藤岡町藤岡4018)の耐水化の検討に乗り出した。年内を目途に基本設計をまとめ、耐水化対象施設の優先順位や整備手法など方針を決定。今年度末までに詳細設計を発注する見通しを示している。浄化センター周辺は栃木市のハザードマップで施設全体が最大水深3m程度浸水する恐れがあり、被害を未然に防止する必要性が高いという。下水道処理場の耐水化は、県の施設では初めてで、市町のハザードマップの見直しに応じて、浸水が想定される他の浄化センターも検討していく見通し。
基本設計では、集中豪雨や河川等からの溢水により、同浄化センターで想定される最大規模の浸水被害を予測し、実効性のある対策を立案していく。一般的には、設備等を格納する建物の入口の扉を水密ゴムで密閉する防水扉。水位上昇に伴う浸水を防ぐため施設等にコンクリートの壁を設置する止水壁。開口部や貫通孔の閉塞に加え、建物自体を嵩上げしたり、施設の周囲を盛土して囲い込み、浸水を防ぐ方法などが挙げられるとした。