基幹管路耐震化が36.4% 災害契機に国が後押し 鬼怒川6事業者で50.5% 県と水道協会
[2020/6/11 栃木版]
県と県水道協会は、2018年度末における主要水道管(基幹管路)の耐震適合化率をまとめ、本県は前年度に比べ3.1ポイント上昇の36.4%、県企業局が所管する北那須と鬼怒水道の用水供給事業を加えた合計は36.9%(同3.1ポイント上昇)となった。耐震化率は各事業者間で大きな開きがあり、芳賀中部上水道企業団(芳賀.益子.市貝の3町)が98.8%と進んでいる一方で、地盤の安定性なども起因し、那須烏山市12.3%と壬生町19.7%が10%台となっている。水系別では、鬼怒川が50.5%と最も耐震化率が高く、渡良瀬川32.2%、那珂川28.9%となった。
基幹管路の耐震化適合率は、直下地震に対して継ぎ手が外れない構造を前提に、良地盤に布設され、一般的には震度6強程度の揺れに耐えられる主要水道管について、総延長に占める耐震適合管の割合を示したもの。水道の配水管は、配水ネットワークの基幹となり、給水管を分岐しない配水本管、事業所や各家庭に給水する配水支管で構成する。基幹管路は配水本管に水源と浄水場を結ぶ導水管、浄水場から配水池に移送する送水管を加えたもの。
厚労省は、水道のシステムの中で耐震化を図る重要な水道施設を、上流に位置する取水、貯水、導水、浄水、送水の各施設と、配水ネットワークの基幹となる配水本管に加え、これらに直接的に接続する配水施設を挙げている。
県内の水道事業者は、耐震性が低いとされる石綿セメント管の布設替えをはじめ、布設後40年以上が経過した鋳鉄管やコンクリート管など老朽管の更新を継続的に進め、耐震化率の向上に努めている。
近年全国で頻発する地震被害などを教訓に、水道施設の耐震化に対する備えが重要視されるようになった。一方で国は、安全性の高い水道水の供給を理由に、長らく各自治体の全域を水道で賄う全国水道化計画の実行を呼びかけてきた実情もあり、耐震化対策よりも水道の未普及地域の解消を目的とした拡張事業を優先してきた経緯がある。
11年3月11日に発生した東日本大震災は、本県でも矢板、さくら、那須などの各市町で水道施設が被災。災害復旧費などを充当し、浄水場や配水池の整備を進めてきた。
本県をはじめ、全国で頻発する大地震災害により、ライフラインの水道施設が被災し、多くの世帯で断水が発生。国は阪神・淡路大震災などを教訓に04年、10年後をめどに主要水道管の耐震化率の向上を呼びかけてきた。08年度には水道管耐震化の判定基準を設け、全国水道事業者の耐震適合化率を調査。同時に、水道ビジョン策定を促し、水道施設の耐震化の重要性を位置づけた。
15年度には耐震化計画等策定指針を改定する一方、県を通じて各市町等に配分する国庫交付金については耐震化対策に重点化。簡易水道の統合とともに国庫補助を縮小し、同交付金に一本化しつつある。また、人口減少や国土強靭化を背景に水道ビジョンを見直し、全国の水道事業者に対して新水道ビジョンの策定の必要性を訴求。防災拠点を中心とした配水ネットワークの構築などとともに、さらなる耐震化の取組みを推進している。