倒木利用を県と推進 生産者・利用者で事業展開(JIA千葉副代表・森田敬介氏インタビュー)

[2020/2/22 千葉版]
 公益社団法人日本建築家協会千葉地域会(JIA千葉、榎本雅夫代表)は2020年、「木」の活用を設計・施工に取り入れる事業を本格化させる。県の依頼も受け、19年秋に本県を襲った台風15号をはじめとする暴風で倒れた木を、建築材として使用できるかの検証に着手するだけでなく、今夏以降にはセミナーの開催や木材の流通会、「千葉の木づかい」をテーマとしたシンポジウムに加え、木材の活用をテーマとしたコンペやコンクールも新たに企画している。その意図などについて、これらの事業を先導する森田敬介副代表に話を伺った。

 ──あえて今、「木」を活用することになったきっかけは

 「毎年開催している百科講習会を、昨年は8月に開き『県産材まるごと建築百科』と題して、県森林課や県森林組合、木産材を扱うJIAの協力会社に講演してもらいました。これらが縁で同課から『台風による倒木を有効活用してほしい』という協力依頼を受けました。台風被害支援活動の一環として、倒木の利用に向けた企画を一緒に進めていくこととなりました」

 ──具体的には

 「JIAと県森林課のほか、県森林組合連合会、日本建築構造技術者協会JSCA千葉のほか、予定では日本建築学会千葉支所も加わって計5団体で共催します。JIA本部から助成金も配分されるなど、全国的にも注目の高い事業だと思っています」

 ──「千葉の森林再生プロジェクト」について

 「本県は木材の消費県であり、木材を搬出するための路網の整備や、林業機械の導入が遅れており、放っておけば衰退するばかりの林業を、利用する側だけでなく生産する側も巻き込んで、未注目の木材も掘り起こし、オール千葉で進められるようなムーブメントを起こしたい。先の百科講習会が好評だったこともあり、本県の木材利用を促し、建築設計業界だけでなく、木材に関係する業界を含めて、来年にかけて事業を進めることにしました。

 これまでの倒木、すなわち撤去↓廃棄、ではなく、倒木を木材として利用する、新たな概念による災害対応策の提案という、JIAにとっての『試金石』になると思います。倒木を利用する実証を広めることで、結果、本県の山林で木材の生産が活性化されることを目指します」

コンペ・コンクールも企画

 ──今後展開を予定する関連事業は

 「手始めとして今月20日には君津市内で、共催団体の有志らにより倒木被害の見学会を開きました。その後は、木材・倒木の流通会が今夏~秋をめどに開かれる見通しです。

 また6~7月ごろにはJSCAとともに、木構造設計技術者の養成セミナーを開く予定で、秋には「千葉の木づかい」をテーマとしたシンポジウムを開く予定です。

 これにとどまらず、県産材を利用したアイデアを、設計業界や林業者ら関係者だけでなく、広く一般や子どもからも募集して、それぞれ部門ごとにコンペやコンクールを開くことも秋ごろに企画しています。これには他の設計関連団体にも後援をお願いしようと思っています。

 20年度から21年度にかけて、これら『台風被害支援活動倒木処理推進事業』、『木構造設計技術者養成事業』、『県産材利用促進事業』の3つの事業を並行させていく方針です」

君津市内で倒木見学会
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 JIA千葉は20日、昨秋に相次いだ台風などに伴う倒木被害の現場見学会を君津市鬼泪地区、法木地区で開いた。当日は有志約30人が参加するなどし、今後倒木を活用するに当たっての現状把握に努めた。

 当日現地入りした一行は、県森林組合南部支所からの説明も受けながら、幹の真ん中で無残に折れるなどした倒木被害の状況を見て回るとともに、参加者で意見交換もするなどし、今後の事業展開に当たっての方針を話し合うなどした。

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