吉田川に267億円 阿武隈川は河道掘削など 緊急治水対策プロジェクト(国)
[2020/2/1 宮城版]
国土交通省は2019年10月に発生した台風19号の豪雨災害で甚大な被害を受けた阿武隈川や吉田川など全国7水系で「緊急治水対策プロジェクト」に着手する。プロジェクトは遊水地、堤防整備、河道掘削などハード面のほか、国・県・市町村が連携し、浸水リスクを考慮した立地適正化計画の作成などソフト面の対策を組み合わせた総合的な治水対策として進める。国直轄の総事業費は阿武隈川が1354億円、吉田川が267億円を見込んでいる。
阿武隈川の事業費の内訳は改良復旧などを行う河川大規模災害関連事業は福島県内が999億円、県内が86億円。現状復旧を行う河川等災害復旧事業は福島県内が121億円、県内が12億円。おおむね10年間で計画されている。
阿武隈川緊急治水対策プロジェクトでは▼河川における治水対策の推進▼減災型都市計画の展開▼地区単位、町内会単位での防災体制の構築▼バックウォーターも考慮した危機管理対策の推進▼市町村の実情に応じた減災の取り組み──を柱に展開する。
具体的には福島県側の上流部で新たな遊水地の整備、河道掘削や樹木伐採などを推進し、本川の水位を低下させるほか、背水影響がおよぶ堤防強化、準用河川の整備促進、内水が顕著な河川の排水機能の強化および耐水化、既存ダムの洪水調整機能の強化などを実施。県内では高倉川の堤防強化や岩沼市の押分排水機場周辺で排水機能の強化を予定している。ソフト面では複合的なハザードマップの作成、危機管理型水位計やカメラの設置などハードとソフト相互に連携した総合的な防災減災対策を実施する。
吉田川の国直轄分の総事業費は267億円。大規模災害関連事業が241億円で災害復旧事業が26億円と試算している。吉田川の治水対策はおおむね5年で完了を見込んでいる。
吉田川では1986年に発生した大洪水を受けて「水害に強いまちづくりモデル事業」を推進しており、それを強化する形で台風19号と同レベルの災害防止に向けて強化対策を行う。
同モデル事業では▼治水安全度の向上▼氾濫拡大の防止▼避難地警報システム▼氾濫水排除の迅速化▼適正な土地利用の規制誘導──を柱として展開してきた。今回はここに新たな減災・ソフト対策として地域別情報発信手法の構築や災害時情報担当者の確保・連絡体制の構築などソフト面を強化する取り組みを付け加え、大規模氾濫時の被害最小化を目指していく。