河道拡幅や堤防強化 吉田川の新プロジェクト案(東北整備局や県ら)
[2020/1/22 宮城版]
東北地方整備局や県、大崎市らは21日、吉田川の新たな「水害に強いまちづくりプロジェクト」(案)について話し合った。台風19号での氾濫被害を踏まえ、今後の取り組みのメニューに河川整備計画の変更や河道拡幅(引堤)、堤防強化、側帯増設、水防災拠点の拡張、排水施設の増設などを盛り込んだ。新年度から同プロジェクト推進協議会(仮称)を立ち上げ、できるものから順次実行に移す。
同プロジェクト案は、事務局の国土交通省北上川下流河川事務所が作成し、21日に大崎市内で開かれた台風第19号による大規模浸水被害対策分科会(座長・梅田信東北大学大学院工学研究科准教授)の第3回会合に、中間とりまとめとして示した。
会合には東北地方整備局や北上川下流河川事務所、県の職員が出席。吉田川沿川の地元関係者として、自治体から大崎市の伊藤康志市長、大郷町の武藤浩道副町長、松島町の蜂谷丈也危機管理監、鶴田川沿岸土地改良区から千葉榮理事長が駆け付けた。
同プロジェクト案では、事業メニューとして[1]治水安全度の向上[2]氾濫拡大の防止[3]避難地警報システム[4]氾濫水排水の迅速化[5]適正な土地利用の規制誘導[6]新たな減災・ソフト対策──の6項目を定めた。
治水安全度の向上では、第2回分科会の意見を踏まえ、新たに「河川整備計画の変更」、「河道拡幅」(引堤)、「堤防強化」、「側帯増設」を追加。もともとメニューに盛り込まれていた洪水調節施設整備に関しては、「新たなダム・遊水地」などの記載を加えた。
これ以外の追加項目は、氾濫拡大の防止に「氾濫流制御を目的とした路線の抽出・道路かさ上げ」(二線堤)、避難地警報システムに「水防災拠点の拡張」や「避難建物の整備」(基準規制の緩和含む)、氾濫水排水の迅速化に「排水施設の増設・排水能力強化検討」を盛り込むなどした。
主な取り組みの実施時期を見ると、新たな洪水調節施設(ダム・遊水池)の検討や堤防天端・法尻の保護は国が1年以内、河川整備計画の変更や河道拡幅、側帯増設、水防災拠点の拡張、避難建物の整備は国や県、市町らがおおむね5年以内に着手することになっている。
これらのメニューに関して伊藤市長は「確実に早期に実行していくことが重要」と強調。東日本大震災からの復旧・復興事業と同様、特別枠で財源を確保し、復興庁のようなワンストップ機関を設けて対応に当たる必要性を説いた。
さらに伊藤市長は、水防災拠点に一時避難施設や災害公営住宅などが建てられるように「規制を柔軟に運用する必要がある」と指摘。大崎市は新年度からさっそく防災行政無線の「屋外子局を設置する」と明かし、関係機関にも早期の取り組みを求めた。
水防災拠点に関しては、北上川下流河川事務所の佐藤伸吾所長が「あの地域で一番安全なのは水防災拠点だと思うので、地域が一時避難場所として雨風がしのげる建物をほしいというのは当然のこと」と理解を示し、河川法の規制とは切り離した対応を国の上部機関に相談する意向を伝えた。
千葉理事長は「住宅には絶対水を上げないようにするため、水田をうまく活用した田んぼダムを遊水地と合せて検討してほしい」と要請。排水ポンプ場に関しては、農地を対象に計算すると排水容量が小さくなるため、「国交省と農水サイドが一体となって事業を進めてほしい」と要望した。
今後、具体的な事業の実施に当たっては、同プロジェクト推進協議会を立ち上げることになるが、そのメンバーには国交省だけでなく、排水機場を扱う農林水産省の職員なども柔軟に入れるようにすることを確認した。