労務費見積尊重に加点 圏央道利根川橋の下部工(関東地整)

[2020/01/09 千葉版]
 国土交通省関東地方整備局は、8日に公告した「R2圏央道利根川橋下部その1工事」と「R2圏央道利根川橋下部その2工事」の2件を「労務費見積り尊重宣言」促進モデル工事として試行する。全国で初めての試みとなり、建設業の労務費の改善に当たっての取り組みを加速させる考えだ。総合評価落札方式の案件や、完成後の工事成績評定で、インセンティブを付け加えるモデルとなる工事として注目される。

 「労務費見積り尊重宣言」は、2018年9月18日に日本建設業連合会(日建連)が、建設業の技能者の賃金を全ての産業の労働者における平均レベルに近づけるために表明したもので、元請企業が賃金の改善に向けた取り組みを進めている。

 試行内容についてみると、まず、工事を発注する際の総合評価落札方式での技術評価に当たり、入札・契約手続きの審査基準日までに、入札に参加する企業が「労務費見積り尊重宣言」を決定、公表した事実を発注者が確認する。

 加えて、提出された見積書に、労務費(労務賃金)の内訳を明らかにする旨を示した誓約書が確認できた場合に加点するとしている。

 一方で、工事の完成検査から成績評定に至る過程で、元請企業と下請企業で交わされた見積書をあらためて確認。下請金額が3,500万円以上の数社を抜き取りした上で実施し、見積書に労務費(労務賃金)の内訳が明示されていない場合は、先の技術評価で加点があった場合は減点する。

 ただし、見積書のほか注文書にも労務費の内訳が記載されていた場合は、加点の対象とする方針で、技術評価の際に加点されていなくても「労務費見積り尊重宣言」を決定・公表していたことが確認できれば、工事完成後にも加点される。

 「労務費見積り尊重宣言」は、技能者の処遇改善を最大の課題とする建設業界で年間約552万円という全産業労働者平均という目標にはまだ2割以上の引き上げが必要だとし、賃金の持続的引き上げのため、専門工事会社による技能に見合った給与の引き上げに必要な労務費を確実に支払うことで、元請として共同で好循環を促進するべきとして唱えられたもの。

 具体的には、一次下請企業への見積依頼に当たり、内訳の明示が進む法定福利費に加え、改善の趣旨に沿った適切な労務費の内訳を明示した見積書の提出要請を徹底し、当該見積を確認した上で尊重するとした。

 利根川橋下部その1工事とその2工事は、北首都国道事務所が所管。茨城県の五霞町と境町間の架橋を図るもので、それぞれRC橋脚7基やその基礎工を施工するもので、工期は22年6月末まで。総合評価方式は労務費見積り尊重宣言モデルとしてのほか、技術提案評価型S型、新技術導入促進(I)型を採用。開札日は5月14日を予定している。同整備局では当面、同モデル工事をWTO対象の一般土木工事の段階式選抜方式の案件で採用するとしている。

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