土堤で必要断面を確保 吉田川決壊部/本復旧の方法議論(東北整備局)
[2019/12/4 宮城版]
東北地方整備局は3日、第3回目の鳴瀬川堤防調査委員会(委員長・田中仁東北大学大学院教授)を開催し、台風19号で決壊した吉田川(大郷町)の堤防について、本復旧方法を議論した。本復旧に当たっては、決壊区間が擁壁による特殊堤だったものの、背後の土地利用計画に配慮した上で、可能な限り土堤を築いて必要断面を確保することにした。
第3回会合には田中教授や、梅田信東北大学大学院准教授など5人の委員が出席。同局河川部の長田仁河川調査官らと本復旧の基本方針や方法について話し合った。
本復旧の基本方針には、今後の河川整備や背後地の復興計画と調整を図ることと、今回の出水による越水対策は河川整備による水位低下を基本とすることの2点を設定した。
本復旧方法については▽決壊箇所の上下流との連続性やバランスを考慮する▽背後地の状況を鑑みながら、可能な限り土堤で必要な断面を確保するよう努める▽堤体部は浸透抑制対策として表法面被覆工を行う▽越水した場合に決壊までの時間を引き延ばす危機管理型ハード対策を必要に応じて実施する▽不等沈下が予想される場合は基礎地盤処理を行う──こととした。
このうち、危機管理型ハード対策は、天端舗装工や裏法尻補強工などを想定。浸透への対策は、決壊要因として特定されなかったものの、復旧位置での調査結果や浸透流解析を踏まえ、必要に応じて強化工法を実施する。
なお、決壊する前の堤防は、背後に墓地などがあって上下流と同じような堤防断面を十分にとれなかったため、特殊堤構造で整備されており、パラペットを設けて計画高を確保していた。
田中委員長は「一般的に構造物は不連続な所が弱体化する」と語り、「堤防の構造を上下流と一体的なものとして整備することが望ましい」との見解を示した。
今後は、地元の了解を得た上で新たな堤防の位置などを定め、現地調査や詳細設計のとりまとめを行い、本復旧工事に着手する。具体的な着工時期は未定だ。
同委員会は前回の第2回会合で破堤メカニズムを検討し、堤防高を超えた水が長時間にわたって川裏部に落ち込み、洗掘されたことの影響が大きいと判断。決壊要因の可能性は「越水による洗掘」が妥当としていた。
決壊箇所の堤防は、県建設業協会の会員企業5社が応急復旧工事を実施し、鋼矢板による二重締め切りまで完了している。長田河川調査官は「堤防の機能は回復しているが、あくまで緊急的な対処として仮締め切りをしている状況。委員からの指摘をしっかり踏まえながら着実に本復旧を進めたい」と語った。