失格基準額を引上げ 低入対策/県が来年度から適用(建設関連3団体と意見交換)
[2019/11/14 宮城版]
県測量設計業協会(宮測協、遠藤敏雄会長)ら建設関連業3団体と県土木部との意見交換が12日、仙台市内で開かれた。3団体は低入札での落札が依然として多いことから、調査基準価格や失格判断基準額の引き上げなどを要望。県は失格判断基準額に関し、来年4月から引き上げる方向で作業していることを伝えた。 意見交換会には、宮測協から遠藤会長ら14人、建設コンサルタンツ協会東北支部から菅原稔郎支部長ら12人、東北地質調査業協会から奥山清春理事長ら16人が出席。県土木部からは金子潤技監兼次長ら8人が参加した。
意見交換のテーマは[1]担い手確保・育成のための環境整備[2]技術力重視による選定と入札契約制度に関する要望・提案[3]品質の確保・向上──の3項目。中でも特に入札契約制度に関する要望・提案が多岐にわたった。
3団体は▽総合評価での評価ウェイトの改善による技術力を重視した制度への転換▽調査基準価格と失格判断基準額の引き上げ▽低入札業務の履行に関わる制約強化▽全業務への履行能力確認調査の適用拡大▽設計JV制度の運用拡大──などを求めた。
技術力重視への制度改善について県は「引き続き評価項目や配点バランスなどを検証しながら、技術力に優れた企業が受注できるよう必要な改定を行いたい」と回答した。
建設関連業務の調査基準価格の引き上げは、4月に国土交通省が引き上げたのに合わせ、県でも10月に上限設定に関して国と同様の引き上げを行ったことを報告。
失格判断基準額は、県が「東北6県と比較してもかなり低い。10ポイントほど低いと思っている」との認識を示し、「来年4月の改正に向けて作業を進めている」と明かした。
さらに県は、3団体が調査基準価格を下回る入札を減点評価する計算式(曲線式)の導入を提案したことに対し、「失格判断基準の見直しと併せて、曲線式なども考慮しながら改正を検討したい」と前向きに答えた。
低入札業務の履行に関わる制約強化については、3団体が具体例として、管理技術者の専任義務化や入札参加制限措置などを挙げた。これに対して県は「失格判断基準の制度改正を見極めた上で導入の是非を考えたい」と回答した。
履行能力確認調査の適用拡大については、県が地質調査、補償コンサルタント、建築設計の各業務で失格判断基準を設けておらず、「そのためかなり低い落札率になっていることは認識している」とし、「一般競争入札は全て調査基準価格が適用となるので、一般競争入札の全面導入に向けてやっていきたい」と話した。
設計JV制度の運用拡大は、県が大規模で高度な技術力を要する業務や、発注者支援業務などで活用していることを伝え、「今後は他の業務にも拡大して適用したい」と語った。
県はこのほか、2021年度から一般競争入札による総合評価落札方式の全面導入を目指しており、総合評価の適用範囲を本年度から測量業務は500万円以上に拡大し、建設コンサルタント業務は現行の2000万円以上から1000万円以上に拡大する方向で検討していることを伝えた。
宮測協の遠藤会長は、総合評価の全面導入までに残り1年程度しかないため、やみくもな導入とならないよう、履行確認調査の適用拡大などを先に着手し、課題を洗い出して順次改善していく必要があると訴えた。
査定設計の簡素化要望
この日の意見交換では、台風19号の災害対応についても協議した。3団体は、被災箇所の調査設計を進めているものの、査定スケジュールに間に合わないため、測量設計などの簡素化を求めた。
県は査定スケジュールが原則として来年2月までの完了になることを伝えた上で、土木事務所ごとに簡素化への対応がバラバラにならないよう指導徹底することを伝えた。
なお、県は総合評価で管理技術者の手持ち業務数に関し、5件未満であれば最大4点を配点しているが、今回の災害対応に基づく随意契約の分は、この5件縛りから外す意向を示した。