「全面建て替えが有効」 市長に答申/新病院の整備(千葉市)
[2019/8/30 千葉版]
手交を前に尾形委員長は、超少子高齢化社会が訪れようとしているとともに、患者のニースが多角化する中、他の病院とも連携し、その中で市立病院に何ができるのか、その役割を十分踏まえてほしいとした。
これを受けて熊谷市長も、専門的な知見から会議を重ねた同検討委をねぎらいながら、一定の方向性が示されたとし、老朽化が進む海浜病院への対応は待ったなしであり、新病院建設に向けた検討を深めるとともに、市立青葉病院や国立千葉医療センターなどとの役割分担を明確にし、経営の健全化についても引き続き取り組んでいく旨を示した。
1984年10月の完成で、老朽化が喫緊の課題となっている海浜病院の処遇については、市立病院が継続して提供すべき医療機能を、既設の市立青葉病院のみで提供できるかを検討。将来推計で見込んだ入院患者数に対し、青葉病院のみでは病床数が不足することや、青葉病院の現敷地では機能拡張のための制限があること、市西部の地域医療ニーズの対応が課題として浮上した。
加えて、青葉病院の周辺でも、千葉大学付属病院など、機能が競合する病院が多いなどといった立地上の課題もあり、青葉病院のみで必要な医療を提供するに当たってのリスクが挙げられたとしている。
答申書ではこのため、直ちに新病院の整備が必要だとする一方、これを前提として、推計患者数がピークを迎える2030年以降を想定。現在の海浜病院の機能を引き継いだ新病院を設置し、新病院でも救急医療体制を強化。現状維持を図る「パターンA」と、「両病院の機能を集約した新病院の設置により、救急医療体制を集約・強化するとともに、政策的医療や現状の強みを生かした医療を維持するという集約型の「パターンB」を比較した。
一方で海浜病院の老朽化対応手法を比較し、全面建て替えと大規模改修について、大規模改修では一部機能が停止するのに加え、既存面積の維持ができないこと、免震構造とするにはコスト・工期ともに膨大となること、減収のリスクがあることなどから、全面建て替えの方が有利であることなどが示されている。
現敷地内での建て替えについては、答申書でパターンが示された一方、騒音・振動などの影響や駐車場の減少、今後の拡張性などで課題があるとした一方、別の用地を速やかに確保できる場合は、比較評価をした上で建設地を選定すべきとした。
建設地の選定に当たってはまた、周辺人口や市西部地域に急性期病院がほぼないことなど、経営的な視点も考慮すべきとしている。
市では09年度から3期にわたって「市立病院改革プラン」を策定。12年度までは一旦黒字化できたものの、その後は人的・設備投資に応じた収益が確保できず、17年度の決算では両院合わせた累積欠損金が81億円に達している。
開設から35年余が経過する海浜病院については、施設が老朽化する中で、市における医療体制を確保するため、早急な検討が必要と判断、18年12月に同検討委が設置された。