［2019/8/3　栃木版］
　県は、鹿沼市の一級河川武子川延長4320mの改修のうち、ボトルネックとなっているJR日光線橋梁の架け替えについて、河川法線(バイパス)を南側に振って線形改良し現河川は廃川にする手法に決めた。同橋は27年9月関東・東北豪雨で橋台が洗掘されており、列車運行の安全性を確保するため架け替えを決めたもの。県鹿沼土木事務所によると、新橋は橋長が35.4mのポストテンション方式単純下路桁で、今後はJR東日本へ委託し概略設計に移行、諸元などを固めていくとしている。

　沿川の農地は小区画水田で、関係農地の地権者らは2018年夏にJR線交差部付近から上流の国道293号付近まで圃場整備の計画を市に申請。県農政部が国庫補助採択に向け調査に着手しており、河川改修と整合を図った計画が今後、立案されていく見通し。

　武子川は15年度補正で災害推進費の採択を受け、宇都宮市境から上流側700mの拡幅に伴う護岸工事を発注し、工事に着手した。700mについては橋梁や取水堰などの構造物は無い。事業区間は、下流端を宇都宮市境の市道若林橋(鹿沼市深津)から上流端は主要地方道宇都宮鹿沼線バイパスの飯岡橋新橋(同千渡)まで4320mが対象。

　県は同区間のJR日光線交差部について当初、約100m西側に河道を付替え、ミニバイパスを整備、新橋を架設する計画でJR東日本に打診。JR側は後年度の橋梁管理を行う立場から、なるべくコストのかからない方向で県側に整備を求めた経緯があり、再検討も含め協議・調整の中で、▽現河川の拡幅▽法線のバイパスを振って線形改良し現河川は廃川▽現河川を残して付替え-3案を提示。今回当初の計画に修正を加え、氾濫を助長する蛇行区間をショートカットし、下部工が洗掘され危険性の高い現橋を撤去、新橋を架設する手法に固めたもの。交差部の工法の検討は、建設技術研究所(東京都中央区)が担当した。

　改修に伴い架替え対象の道路橋は、大日橋(鹿沼市道7034号線)、関口橋(同0354号線)、松の木橋(同0300号線)、無名橋(私道)に加え、主要地方道宇都宮鹿沼線のバイパス整備に伴い飯岡橋新橋を整備、今年度は宇都宮側の橋台1基の発注が見込まれている。

　同新橋はこれまでの検討で、橋長が43m。上下線分離のセパレート型(W11.75m×2)とし、2橋とも上部形式が鋼単純非合成I桁に決めた。下部工は2橋とも直接基礎逆T式橋台2基で、斜角65度の斜橋。同地の改修断面32.1mを見据え、諸元を固めた。

　取水堰と樋門樋管は、市や利水関係者らと協議調整を行い、改善や必要に応じて統合などを検討していく見通し。現在のところ、下流側から萱野堰、栗木内堰、田中堰、白桑田堰の4カ所の整備が想定されている。

　整備区間の計画流量は毎秒150立方ｍとし、概ね5年に一度の割合で発生する洪水流量に対応するため河川断面の拡大を行う。河川幅は現状の10～15m程度から約30mに拡大。沿川の土地利用計画と整合を図り、既設護岸を活用。主に東側に拡幅する形で、現況の瀬と淵などを可能な限り保全、生物の生息と生育環境を確保するとともに、植生を保全するとした。計画河床勾配は200分の1。

　事前評価資料によると、河川の工事は築堤が約2万6000立方ｍ、掘削が約18万3000立方ｍ、護岸は約1万3000平方ｍ。付帯工事では道路橋5橋を架け替え、JR日光線の新橋の整備を位置付けた。樋門樋管は24カ所、取水堰4カ所を改善する計画とし、路線測量や河道・構造物の詳細設計で具体化していく。

　同地の武子川はこれまで局部的な改修を行ってきたものの、抜本的な改修は行われていないことから、現況の流下能力が不足。市は武子川を放流先に千渡雨水第一幹線や千渡東雨水幹線の整備を進め、豪雨時の流量が増加している。事業区間南端の若林橋から下流の宇都宮市での改修については14年度に整備が完了しており、上流側の鹿沼市での改善の必要性が高まっていた。事業費には約46億円を試算している。