公共事業費が上昇基調 18年度は契約額、請負額とも増加
[2019/5/23 栃木版]
本県の2018年度公共事業執行状況や発注者別請負金額などが出揃い、契約額は県が前年度比10.4%増の1313億円(予算額1558億円)、市町も9.1%増の1453億円(同1510億円)に上った。東日本建設業保証栃木支店がまとめた請負金額も15.1%増となり、過去10年間では09年度に匹敵する1644億9200万円。19年度は県土整備部の1000億円超の予算額をはじめ、防災・減災、国土強靭化対策の本格的な実施により、公共事業費が上昇基調で推移している。
同栃木支店の資料によると、平成30年間の請負金額のピークは1998年度の3495億5500万円で、20年後の17年度には約40.9%の1492億0100万円まで下がった。98年度は那須水害による災害復旧事業が本格化した年で、平成に入り本県の公共事業費がピークを迎えた。
請負金額は98年度から03年度まで5年連続して減少。小泉政権下で聖域なき構造改革や三位一体改革が進み、公共事業費の仕組みも国庫補助から交付金へと移行してきた時期。世間では公共事業不要論が席巻し、赤字経営からの脱却を目指すため、道路公団民営化の論議が活発化、05年10月には地域を4分割し高速道路会社が設置された。
03年度以降の請負金額は、1300~1800億円台で推移している。最も減少したのは民主党政権終期となった12年度で、請負金額は1317億1700万円。前年の予算額に反映された11年3月の東日本大震災は、本県にも大きな被害をもたらした。住宅団地が被災した矢板市、庁舎が被災し新庁舎建設が動き出した佐野市など、東日本大震災以降は過去最大規模の予算を編成した市町もあったが、全体的な伸びにはつながらなかった。
前年度からの好調さを持続し、請負金額が3308億3100万円を記録した99年度。しかし、折からの景況感は下降傾向に転じ、厳しい経済情勢を回復軌道に乗せるべく政府は「緊急経済対策」を推進。当時の建設省・自治省は数次にわたり「建設業の経営改善に対する対策」「建設産業の健全な発展のための措置について(協力依頼)」「地方自治法施行令の一部を改正する政令の施行について(通知)」等の施策が講じられ、公共工事の前払い金制度も「支出割合の引上げ・早期支払い」等の対策が示された。2000年に入ると、建設業全体の経営危機が騒がれ始め、資金繰りの安定化を目指し、現在に続く公共工事代金の前払い金制度が整備された時期でもあった。
請負金額も1682億円と、5年連続で前年度を下回った03年度。次年度からの市町村合併を控え、発注機関49市町村が揃う最終年度だった。国土交通省は03年4月21日から、農林水産省も04年4月1日から、すべての直轄工事とコンサルタント業務で電子入札を開始。県も04年度から電子入札の導入を表明した。
03年度から16年度までの14年間は、公共事業費の大きな伸びは無く、国は湯西川ダム着工、県と市町は豪雨被害等災害復旧事業による一過性で数字を押し上げた。建設企業の倒産も増え始め、08年度が件数のピーク。本県は33社、東日本管内では886社が倒産した。
過去30年間で最も請負金額が低かった12年度を、ピークだった98年度に比べ発注者別でみていくと、市町の請負金額は50%を超えたものの、県は29.6%の415億3700万円に止まっている。
自民・公明連立政権に代わり、最初の13年度からは徐々に回復。14年度からの3年間の請負金額は1500億円台で安定している。16年度は関東・東北豪雨の災害復旧費が押し上げたものの、終息した17年度は1500億円を割り込んだ。
全国で頻発する自然災害を背景に、河川・砂防・治山をはじめとした緊急対策プログラムの発動。そして緊急インフラ点検に伴う防災・減災、国土強靭化を目的に18年度補正から3カ年の対策が始まった。芳賀・宇都宮のLRT事業補助を加え、県土整備部予算は18年度1000億円を超え、19年度も流域下水道事業を合わせ同規模の予算計上となっている。
強靭化対策と合わせ、県は22年国体開催を視野に総合スポーツゾーンの追い込み、市町は新庁舎建設や長寿命化対策など、建設企業の倒産も抑制傾向で推移する19年度に期待が膨らむ。