施設整備と養浜セット 中里・一松に離岸堤(九十九里浜の侵食対策)
[2019/3/23 千葉版]
県土整備部河川整備課が事務局を、学識経験者や海岸利用者、沿岸9市町村の首長が委員を務める第4回の「九十九里浜侵食対策検討会議」(座長・近藤健雄日本大学名誉教授)が21日、千葉市内で開かれ、2020年度から30年を期間とする侵食対策計画の案が示された。防災上必要な「砂浜幅40m」を確保するため、期間中に約240~340億円(年間約8~12億円)を投じ、離岸堤計7基の新設やヘッドランド計11基の整備(延伸・改良含む)を進める。一方で委員から養浜の重要性も指摘されるなどし、これらをセットで進めることなどが話し合われた。
最終回となる今回の検討会議で示された新たな侵食対策計画案は、九十九里町の片貝漁港を境に「北九十九里浜」「南九十九里浜」に、計画期間を1期10年×3期にそれぞれ分けた上で、これまでに示されていた侵食対策の手法について一部を見直し。漁港周辺など九十九里浜系内の堆砂量を把握し、系内の砂で養浜するとともに、離岸堤付近の堆砂を下手側で活用するため、一部の離岸堤の天端を「嵩下げ」(撤去)。片貝・太東漁港区内の砂を活用し、一宮海岸での養浜を増量させるとした。
同案に盛り込まれた整備方針では、当面は九十九里浜系内の砂で、漁港内に堆砂するなどした砂でサンドリサイクル量を拡大。汀線変化が激しく、海岸利用の多い箇所から優先して着手するとともに、サンドリサイクルと施設整備を組み合わせる。整備は離岸堤から着手するとした一方で、施設の下手側は侵食の可能性があり、施設整備とこれに伴う汀線の変化を検証していくとしている。
サンドリサイクルについては、飯岡漁港とその周辺で216万立方m、片貝漁港とその周辺で275万立方m、太東漁港で7万立方mと推定される計約500万立方mに及ぶ堆積土砂を利用することを基本とする。
汀線変化が激しく、海岸利用の多い箇所として計画案では、白子町の中里海岸と長生村の一松海岸を挙げ、20~29年度を期間とする第1期の期間中に、離岸堤1基ずつをそれぞれ整備するなどとした。
第1期では一方で、漂砂が堆積したことなどで問題が生じている旭市の飯岡漁港と飯岡海岸では、離岸堤1基の天端を試験的に嵩下げし、下手側への自然な堆砂を促すとともに、匝瑳市で既設のヘッドランド2基(9号・11号)の縦堤部分の延伸を図るとしている。
養浜については、漁港内などの堆砂を使い、匝瑳市では地元合意を得た上でヘッドランド8~9号の間に年間2万立方m、大網白里市では白里中央海水浴場に同0・25立方m、中里海水浴場に同0・75立方m、一松海水浴場に同2・5万立方m、一宮町の一宮海水浴場に同3万立方mで計画。このうち中里と一松では初期のみ2万立方mを増量して養浜し、モニタリングする。
並行してその効果を確認するため、県では九十九里浜を1km間隔に区切った上で年1回、モニタリング調査を実施。護岸・砂丘部から水深10mまでを測量し、汀線・深浅測量・底質調査、水準測量のほか、地盤沈下や底生生物の調査も実施し、その後の侵食対策に反映させる考えでいる。
県ではこれまで4回にわたって開いてきた同検討会議を5月末で解散する一方、新たにフォローアップ会議(仮称)を設置し、侵食対策事業を進めていく考えだ。