宇都宮国道が121号川治調査結果 高度な技術活用で事業可能 トンネル 近接施工で対策検討

【2019/3/20 栃木版】
 国土交通省宇都宮国道事務所は、日光市川治地区の国道121号バイパスの直轄調査の概要を公表し、トンネル2カ所の新設に伴う既設トンネルの近接施工について、補助工法や施工管理において、高度な技術を活用することで事業実施が可能と結論付けた。また、湧水によるダム水位への影響では、慎重な補助工法の施工や施工管理が必要とし、施工に一定の期間が必要との試算を示している。

 川治地区のバイパスは、狭あいな現道の温泉街を回避し、山間・丘陵地帯にルートを選定。新たに2カ所のトンネルを新設する。ルート付近には、新設1号トンネルが野岩鉄道の小網トンネル。新設2号トンネルには、野岩鉄道葛老山トンネル、五十里・川治ダム(八汐湖)の水を融通する葛老山の導水トンネルが近接し、主要地方道川俣温泉川治線葛老山トンネルとは交差する計画。

 新設1号トンネルは、野岩鉄道小網トンネルと交差し、隣接する鬼怒川の観測水位に比べ、高い位置をルートとする。新設2号トンネルは、野岩鉄道葛老山トンネル、川俣温泉川治線葛老山トンネル、ダム導水トンネルの3カ所と交差。想定したルートは、導水トンネルと野岩鉄道葛老山トンネルの隔離約50mの間を通過する。地下水の状況は、川治ダムと五十里ダムの常時満水位に比べ、トンネルが低い位置としている。

 地質状況では、新設1号トンネルが流紋岩を主体とした凝灰角礫岩や安山岩の中硬岩・硬岩が主体の岩盤と考えられ、トンネル掘削時に想定外の崩落や湧水の発生が懸念される軟岩・土砂相当の破砕帯も不規則に分布。トンネル坑口部付近には、未固結層の崖錐も存在するとした。新設2号トンネルも同様に凝灰角礫岩を主体とし、花崗岩や流紋岩といった中硬岩・硬岩が主体の岩盤で、破砕帯も不規則に分布しているとした。

 既設トンネルとの影響を考慮し、掘削する新設トンネルは通常、トンネルの掘削径断面2個分を隔離する2Dが必要。新設1号トンネルと野岩鉄道トンネルとの近接性は1.5D程度、新設2号トンネルと野岩鉄道・導水トンネルとは、どちらも1D程度とし、近接施工が技術的課題とされていた。

 技術的課題のまとめでは、▽近接施工により野岩鉄道など既設トンネル周辺の応力変化が生じるため、トンネル構造に影響を及ぼすこと▽新設トンネル周辺の地山に透水係数の高い破砕帯が分布しており、施工後に地下水を集水しダム湖の水位が大幅に低下すること-などとし、これらの懸念材料を払拭するためには、補助工法や施工管理において、高度な技術を活用することで、事業実施が可能としている。

 新設2号トンネルと交差する葛老山トンネルにおいては、許容応力以上の応力変化が生じるため、葛老山トンネルに影響を及ぼさないように、より慎重な補助工法の施工と施工管理が必要とし、通常の施工期間に比べ、より長い期間を要するとした。

 事業化に向け県が示した川治地区バイパスにおけるルート・構造の検討の前提となる道路規格は、第3種第3級の設計速度が時速60km2車線。積雪地帯で除雪を考慮し路肩を広めに設定した標準部幅員を9.5m、橋梁部・トンネル部は8mとしている。

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