最優秀賞に勝部さん(日本大学) 本紙も後援 6校21作品を審査(第31回千葉県建築学生賞)
[2019/3/12 千葉版]
日本建築家協会(JIA)千葉地域会と県建築士事務所協会、県建築士会、日本建築学会関東支部千葉支所の4団体が主催し、本紙らも後援する県内大学の卒業設計コンクール「第31回千葉県建築学生賞」が9・10日の2日間、千葉市美浜区のイオンモール幕張新都心グランドモール内イオンホールで開かれた。県内にキャンパスを持つ大学・職業訓練校6校から計21作品のエントリーがあり、初日の9日に開かれた公開審査では、最優秀賞に輝いた勝部秋高さん(日本大学)に表彰状が贈られるなどした。
9日に開かれた審査は、出展者がプレゼンテーションで作品のコンセプトなどを説明。さらに田端友康委員長(県建築士事務所協会・田端建築デザイン事務所代表)をはじめとする審査委員7人とコーディネーター1人が、それぞれの作品の前であらためて出展者にその思いを問うなどした。
選考を終えた田端委員長は総評で「社会問題を捉えた作品が多かった」とし、作品の多くが一度完成しても、今後も工事が続いていくという拡張性があるとするとともに、入賞を逃した出展者らにもエールを贈っていた。最優秀賞に輝いた勝部さんの作品「水都の樹冠」は、東京都江東区大島地区周辺のいわゆる「ゼロm地帯」をモチーフに、住民全員が避難できるポケットパークを積層状に積み重ね、土木的でなく、建築的に樹木なや文化などと共生し、解決を図る建築物をテーマとしたもの。勝部さんは卒業制作に携わってもらった関係者らにも感謝の言葉を述べながら、厳しいプレゼンを制した経験を生かしていきたいと抱負を述べた。卒業後は同大学で大学院に進み、研究を続けるという。同作品は当日会場を訪れた一般市民の投票でも1位に輝き「市民賞」も獲得した。
今回出展された作品はいずれも、少子高齢化や既存の老朽化施設の活用、地域社会の活性化など現代社会が抱える課題の、建築物を通じた解決の一助となるようなテーマを選択したものが揃い、出展者らの思いがうかがえるものとなった。
最優秀賞の作品は、優秀賞に輝いた勝浦市の漁村をモチーフとした高梨淳さん(東京理科大学)と、ある島のハンセン病療養施設に着目し、出展者のOB・OGで組織する「なの花会」の会員が選ぶ「なの花賞」にも選ばれた西條杏美さん(千葉大学)の作品とともに、JIA主催の全国学生卒業設計コンクールの本県代表として出展される。当日はまた、建設関連の学科を持つ県内の工業高校3校から出展のあった高校の部の作品計6点のパネルも会場入口に展示された。
表彰式ではJIA千葉の榎本雅夫代表や、県建築士会の竹江文章会長、日本建築学会千葉支所の寺川典秀支所長らも駆け付け、それぞれの立場で祝辞。自身も出展者OBだという同協議会の中野正也会長(日本建築学会・neuf works代表)も「審査委員でない今年は気楽」と笑わせながら、同賞が今後も継続していくことに期待を込めていた。表彰式後はスタッフと出展者を交えた懇親会も開かれるなど、同賞は終始盛り上がっていた。