県民会館 あり方検討 移転改築が有力 委員ら「現地改修は困難」(宮城県)
[2019/2/15 宮城版]
老朽化している宮城県民会館(仙台市青葉区)に関し、今後の整備方針などを検討する1回目の有識者会議が2月14日、宮城県庁内で開かれた。イベント開催に詳しい専門家7人が委員に就き、求められるホールの規模や機能などに関する意見を述べた。村井嘉浩知事は移転改築を視野に入れて、今後のあり方を検討していく考えを表明している。初回の会合で委員らは、現在地での改修は難しいとの見方を示した。
2月14日に開かれたのは「第1回宮城県民会館の整備のあり方に関する有識者会議」(座長・志賀野桂一東北文化学園大学特任教授)。委員にはコンサートなどの興行主や演劇、舞台活動、文化ホールなどに詳しい専門家7人が委嘱された。
会議の冒頭にあいさつした宮城県環境生活部の後藤康宏部長は「県民会館は開館以来、本県の文化芸術の拠点施設として親しまれてきた。しかし、老朽化が進み、さまざまな課題を抱えるようになった。復興の次の時代を見据え、新たな県民会館の検討に着手することにした」と会議の趣旨を述べた。
会議ではまず、宮城県民会館の現状として、老朽化の程度などを宮城県の担当者が説明した。1964年9月にオープンした宮城県民会館は、今秋で55年が経過する。規模はSRC造地下1階地上6階建て延べ1万2470㎡。77年と90年に大規模な改修を行ったほか、東日本大震災後は災害復旧工事も行った。しかし、建物の劣化は否めず、近年は躯体以上に電気設備や舞台装置などの劣化が進んでいる。バリアフリーにも対応していないなど、時代のニーズにそぐわなくなっている。
宮城県は県民会館の整備方針の検討に先がけ、昨年、需要調査を行った。過去3年の利用回数は2015年が203回、16年が149回、17年が163回だった。稼働率は8~9割と高く、利用回数の6割以上が1300人以上の興行だった。調査結果から、潜在的な需要があることが分かった。
コンサートホールの建設では、仙台市が2000席規模の音楽ホールを建設する方針を示している。これを踏まえたとしても、需要調査では「宮城県が同規模の施設を建設しても、宮城県内で開催される興行数が一定程度あり、供給過剰になることは想定されにくい」との予測が出た。
調査結果を受けた村井知事は2018年12月の県議会で、「2000席規模のホールを移転改築することを視野に、県民会館のあり方を検討していく」と述べている。
会議の中で委員からは、各地の既存ホールでは近年、照明設備のLED化や音響設備のデジタル化への対応が求められていることや、アーティストのライブでは開催地以外からの集客が増え、60歳以上の来場者も増えていることなどが伝えられた。
また、2000席規模のホールに改修する場合、現在地では周辺道路の混雑や狭あい、一方通行などの問題があり、委員らは現在地での改修は難しいとの見解を示した。その上で、移転改築することを考える場合、他の機能を付加して複合型の施設にするという意見も出された。
有識者会議は8月ごろまでに残り3回開かれる予定。次回は3月25日に行われ、移転改築を前提にした議論が交わされる見通し。
県は2019年度予算案に、県有施設再編等調査費として3700万円を計上している。県民会館をはじめ、老朽化が進んでいる県有施設の今後のあり方について調査・検討を進めていく方針だ。