教育センター跡地活用 私立の高等学園も視野に 最終報告まとめる(宮城県教育庁)
[2019/1/19 宮城版]
3回目となる旧宮城県教育研修センター跡地等利活用検討委員会(委員長・川島隆太東北大学加齢医学研究所長)が1月18日に宮城県庁内で開かれた。これまでの議論の結果、同委員会は高等学園など軽度知的障がいのある生徒のための教育施設として利活用することが最適と結論づけ、宮城県に対して報告することにした。宮城県は私立学校としての整備を含め、2019年度からさらに具体的な利活用方法を検討していく。
宮城教育大学の敷地に隣接する旧宮城県教育研修センターは、代替施設のまなウェルみやぎが名取市内に整備されたため、2013年3月に閉所した。土地の売却について宮城県は民間などと交渉を行ったが、土地利用が教育施設に限定されるため、交渉はまとまっていない。
利活用について宮城県教育庁は「本県の教育現場で抱える諸課題を解決するための施設を同地に整備したい」との意向を示し、昨年11月から同委員会で検討を続けてきた。
2回目までの会合で、同委員会は軽い知的障がいがある生徒の後期中等教育を行う施設に注目し、議論を深めてきた。背景には、仙台圏域で軽い知的障がいがある児童・生徒が増加していることと、特別支援学校の狭あい問題が挙げられる。
最終回となる今回の会合では、宮城県に提出する報告書をまとめた。これまでの議論で▽軽い知的障がいがある生徒が義務教育を終えた後、高等学園など後期中等教育を受けられる施設が少ない▽高等学園への進学を希望しても不合格となり、遠方の特別支援学校に通学したり、在宅のままとなっているケースが増えている▽24年度に仙台南部地区特別支援学校が開校しても、後期中等教育を行う施設が不足する──などの問題が挙げられた。
このことを踏まえ同委員会は、「今後ニーズが高まる軽度知的障がいのある生徒のための教育施設として利活用することが最適であると考える」との方向性を示した。
高等学園を整備する場合の手法として、私立の場合は整備の迅速性や財政的な優位性が認められるとし、時代のニーズに応じた特色ある教育を行う上で、民間の活力やノウハウを活用した整備手法も検討していくよう、宮城県に提言する。
宮城県は会合の中で、2016年4月に開校した女川高等学園の建設費などを例に、経費の試算を説明した。定員72人の同校を整備した時は、校舎や実習棟、寄宿舎など延べ6630平方mの建物を建設し、約41億円の工事費がかかった。旧宮城県教育研修センター跡地に新施設を建設する場合、既存建物の解体費として約2億円も必要になる。年間の運営費は維持管理や人件費を含め、約5億7000万円が必要になる。
県立学校として整備する場合は国庫補助などを受けたとしても、宮城県の財政的な負担は大きい。一方、私立の場合は整備費や運営費に関する宮城県の負担は小さいものの、学費の面などで利用者の負担が大きくなることが予想される。
同委員会から報告書を受ける宮城県教育庁は今後、後期中等教育を行う高等学園の整備を視野に、2019年度からさらに具体的な利活用方法、整備手法などを検討していく。