インフラ整備で要望書 新たな県総合計画 コンパクトシティなど聴取 9月定例会に提言の中間報告(県議会特別委員会)

[2018/7/31 茨城版]
 県議会の新しい茨城づくり調査特別委員会(西條昌良委員長)は30日、県議会特別委員会室で第3回の委員会を開催し、新たな県総合計画策定の進捗状況などについて執行部から説明を受けるとともに、国土交通省国土政策局広域地方政策課の中川雅章課長や県市長会会長の中川清土浦市長を参考人に招いて意見を聴取した。また当日は、国土形成計画における本県の役割を果たすために必要な関連インフラの整備に十分な支援を求める要望書を取りまとめ、西條委員長から中川課長に手渡した。

 少子高齢化や人口減少などさまざまな課題に直面する中、県は新知事のもと昨年12月に「新しい茨城づくり政策ビジョン」を策定し、これを踏まえて本年10月をめどに新たな「県総合計画」を策定している。県議会は、この計画に県民の声や地域の実情などを的確に反映した提言を行うため、特別委員会を設置してそのあり方について調査・検討を行っている。

 第3回の議事ではまず、国土交通省宛の「新しい茨城づくりにあたっての要望書」の取りまとめを行った。要望書では、未来に希望の持てる県を築くとともに、国土形成計画の基本的な考え方である「対流促進型国土」の形成を図るため、茨城港や鹿島港などの港湾施設や茨城空港、それらを結ぶ圏央道や北関道、東関道、つくばエクスプレスなど交通ネットワークを最大限活用し、本県のポテンシャルを十分に発揮しながら「東京一極集中から対流型首都圏に転換」していく必要があると指摘した。

 そのうえで、首都圏広域地方計画の首都中枢機能の継続性確保・バックアップ機能強化プロジェクト、災害対応力強化プロジェクト、スーパー・メガリージョンの形成プロジェクト、北関東新産業東西軸の創出プロジェクト、首都圏ゴールデンリング、FIT広域対流圏の強化プロジェクトの推進などに係る関連インフラの整備にあたり、財政措置をはじめとする十分な支援の実施に特段の配慮を求める内容とした。

 参考人からの意見聴取は、まず国交省広域地方政策課の中川課長を招いて「これからの国土と茨城県の可能性」をテーマに意見を聴取した。中川課長はこの中で、▽我が国をとりまく現状▽人口減少社会における国土のあり方▽国土形成計画から見た茨城県の可能性──の3点を詳しく説明した。

 我が国は急激な人口減少に伴い、首都圏でも一層の東京一極集中が進むと見られている。このような中、本年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針2018)では、地方創生の項目に東京一極集中の是正に向けて中枢中核都市の機能強化を図る方策を検討し、年内に案をまとめることが盛り込まれた。

 中川課長は人口減少社会において、国土のあり方は重層かつ強靭な「コンパクト+ネットワーク」が重要と指摘。また、リニア新幹線によるスーパー・メガリージョンの形成にも触れた。さらに、各地の集積を一箇所に集めるのは効率的ではあるが、個性がなくなることから「分散と高速ネットワーク型の集積のほうが、イノベーションを生む力は強いと考えられる」と話した。

 国土形成計画から見た本県の可能性は、圏央道沿線で企業立地が促進されるとともに、リニア整備の効果を活用したつくばを中心としたスーパー・ナレッジリンクの形成、FIT構想、新たな働き方・暮らし方を実現する首都圏3リングの形成プロジェクトについて説明して、本県の果たす役割に期待した。

 県市長会の中川会長は、県の「新しい茨城づくり政策ビジョン」に位置付けた「新しい豊かさ」「新しい安全安心」「新しい人財育成」「新しい夢・希望」の4つのチャレンジごとに、市町村が求める県の取り組むべき事業などについて説明。さらに全体的事項として、財政支援を拡充することや市町村の特性を新たな総合計画に反映させるよう要求した。

 執行部からは、県総合計画審議会(会長・吉田勉常磐大学総合政策学部准教授)における審議の進捗状況をはじめ、現段階での計画の構成や計画策定スケジュール、将来構想、計画推進の基本姿勢、基本計画、数値目標の設定、地域づくりの基本方向、挑戦する県庁への変革それぞれの案が説明された。

 このうち策定スケジュール案は、県議会調査特別委員会の日程を踏まえて見直し、8月に総合計画審議会から原案の答申を受けて9月にパブリックコメントを実施。県民の意見を踏まえて10月に改めて答申を受け、その後の庁議で決定すると報告を受けた。

 一方、調査特別委員会では今回の委員会で論点を整理したうえで審議事項を取りまとめ、8月の第4回委員会で提言「新たな県総合計画の在り方」の中間報告案を検討する考え。9月の本会議で中間報告を行うとともに10月には最終報告案を検討し、11月の本会議で最終報告を行う予定となっている。

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