上工下水の官民連携 経費見通し公表 導入時期は不透明に(県企業局)
[2018/7/21 宮城版]
宮城県議会の常任委員会が7月20日に開かれた。6つの委員会のうち、建設企業委員会で宮城県企業局は、上工下水道事業の官民連携に関して実施した調査結果を説明した。県が構想する「みやぎ型管理運営方式」で事業を実施した場合、20年間で335億~546億円のコスト削減が期待できると説明した。県は同方式を導入する場合の実施方針を30年度末までに策定する意向を示していたが、今国会で水道法の改正が可決しなかったため、今後のスケジュールが不透明になった。
県は広域水道と工業用水道、流域下水道の3事業を一体化し、官民連携による「みやぎ型管理運営方式」の導入を検討している。水道事業などは人口減少によって将来的に収益が下がる一方、施設の老朽化によって維持管理コストが増加していくと予測されている。この打開策として県は、公募によって選定した民間企業と連携し、施設の所有権を県が維持しながら、運営権を民間企業に与えるみやぎ型管理運営方式(コンセッション方式)の導入を検討している。
29年度は同方式を導入する場合の事業範囲やリスク分担、保有する施設の資産価値などを調査するため、「導入可能性等調査」と「デューディリジェンス調査」を実施した。その調査結果がまとまり、県議会で報告した。調査結果は企業局のホームページにも掲載し、20日から公表している。
調査結果によると、3事業を今の公共事業として継続した場合、20年間の運営経費、人件費、建設改良費などの総額を3603億円と試算した。一方、みやぎ型管理運営方式を導入して20年間、事業を行った場合の事業費は、建設改良費の削減率などの条件を変えて9つのケースで試算した。それによると、20年間の事業費を3267億円と試算した場合のコスト削減率は9.3%となり、335億円が削減できるとした。事業費を3057億円と試算した場合のコスト削減率は15.2%となり、546億円が削減できるとした。
また、同方式を導入した場合のVFMは、166億~386億円(7.4~14.4%)と試算した。
同方式を導入するための最大のハードルは、水道法の改正だ。現行の法ではコンセッション方式によって官民が連携する場合、県が主体的に事業に関われなくなる。そのため県は、水道法の改正を国に要望し続けている。今国会では水道法の改正議案が衆議院を通過したものの、参議院では審議入りせず、継続審議となった。
県は水道法が改正された場合、本年度中に運営権の設定に関する業務委託や、実施方針の策定などを進める方針だった。来年6月には参画する民間企業の募集も始める考えだったが、水道法の改正が可決成立しなかったことから、今後の先行きは見通せない状況に陥った。