100年標準で道路橋改定 道路橋示方書 設計見直し橋梁架設へ 新設計手法や長寿命化対策
[2018/6/19 栃木版]
「橋、高架の道路等の技術基準」(道路橋示方書)の改定内容が固まり、県内で架け替えや新設するため設計中だった橋梁の整備が動き出す。29年改定は昭和47年制定以来の大幅な改定を実施したもので、[1]橋の安全性や性能に対しきめ細かな設計手法の導入(部分係数設計法や限界状態設計法)[2]設計供用期間100年を標準とした長寿命化を合理的に実現する規定の充実[3]熊本地震を踏まえた対応等-が柱。県道路整備課によると、29年11月に示方書に伴う改訂版が公表されており、設計の見直しを行い今年度の渇水期には新基準による架設工事が見られそうだ。
部分係数設計法は、外力や抵抗力に対し安全率を要因ごとに細分化して設定。従来の許容応用力度設計に比べ、安全性が向上しきめ細かな設計が可能となり構造の合理化によるコスト縮減が期待されるとしている。外力は通行車両・温度・風・地震などの要因、抵抗力には材料ばらつき・解析誤差・部材挙動特性などとしている。
限界状態設計法は、大地震や様々な荷重に対して橋の限界状態(1~3)を定義。複数の限界状態に対して安全性や機能を確保することで、橋に求める共通的な性能が明確となり、多様な構造や新材料の導入が可能としている。
示方書の改定に当たり国土交通省では、平成28年を「生産性革命元年」と位置付けており、建設や維持管理コストを削減する多様な構造や新材料の開発を期待。必要な橋の性能を確保しつつ、多様な構造や新材料の導入促進を図るため、諸外国で運用実績を積んでいる設計手法を導入する。
長寿命化に対しては、平成26年に5年に一度の定期点検が法定化され、長寿命化の取り組みが本格化。橋が良好な状態を維持する期間として、100年を標準とするとともに、耐久性設計の具体の方法を規定したもの。
耐久性設計の具体の方法は、▽劣化の影響を考慮した部材寸法や構造とすること▽部材寸法や構造とは別途の対策を行うこと▽設計供用期間内において劣化の影響がないとみなせる構造とすること-など。
劣化の影響への考慮では、塩害対策として影響の度合いに応じたコンクリート表面から鉄筋までの「かぶり」を規定。部材の交換や点検が容易な構造とし、ジャッキアップによる支承交換や点検等が容易に行えるよう配慮するとした。
別途の対策は、施工・維持管理の容易さや耐久性・部材などの重要度を考慮、適切な防食方法を選定するもの。港湾などの長大橋には重防食塗装、高速道路等の高架橋には耐候性鋼材の採用、また鉄筋防食とコンクリート表面塗装を組み合わせた防食の多重化を実施。環境条件などに応じた防食種別の差別化が図られるとしている。劣化の影響がない構造では、ステンレス鉄筋やFRP緊張材といった海沿いなどの腐食環境の激しい環境下で耐食性に優れた材料を用いるとしている。
熊本地震における被災を踏まえた対応では、ロッキング橋脚を有する橋梁の落橋を踏まえ、不安定になりやすい下部構造としないことを要求。大規模な斜面崩壊などによる被災を踏まえ、斜面変状等を地震の影響として設計で考慮することを明確化する。制震ダンパー取り付け部の損傷事例を踏まえ、部材接合部や連結の各部材に求められる条件を明らかにし、満足させるとした。
施工に関する規定の改善では、落橋防止装置等の溶接不良事案を踏まえ、溶接検査の規定を明確化。引張りを受ける完全溶け込み溶接は、主要部材に関わらず内部キズ検査を継手全数・全長にわたって行うことを明確化している。
点検結果を踏まえた改善では、特殊な形状のPCポステン桁の一部でひび割れが発生していることを踏まえ、ひび割れ防止対策の規定を充実。PC鋼材の配置や橋軸直角方向の鉄筋引張力の照査に新たな規定を設けた。
道路橋示方書は、昭和47年の制定以降、技術的な知見や社会的な情勢の変化を踏まえ平成24年までに6回改定した。平成の頻発した大地震などを背景に、同2年に耐震設計法の充実、同6年改定では車両の大型化に対応した荷重への対応、同13年改定の疲労・塩害に対する耐久性能の考え方、同24年改定では長寿命化を見据え構造設計上の維持管理への配慮事項などを規定してきた。